平成の農地改革

   

あしがら農の会の全ての農地が借りている農地だ。農業をやりたいから、農地を借りられる。こんな時代が来た事は日本で始めての事だ。ありがたいことだ。この状態が続いてくれる事を願っている。農家が農地を出し合って共同で耕作する「集落営農組織」の結成が各地で進んでいる。農業基本法などの改正で、4ヘクタール未満の小規模農家は、麦や大豆など5品目への補助金を07年産以降、受けられなくなるためだ。

この集落営農をどう見るか。これは意見の分かれるところだ。先ずは4ヘクタール以下を小規模農家と言えるのか。1町分1ヘクタールの農家でも私には大きく感じるぐらいだから、もう感覚的に違う世界の話だ。この考えが出てきた基本は日本の農産物に国際競争力を付けろという。多分経済界からの圧力で出てきた議論に基づいているのだろう。輸出や海外生産で経営を可能にしている大半の企業にしてみたら、小さな生産力しかない農業など、早く止めてくれればと言う気持ちがある、と想像する。しかし、止めろという訳にもいかないので、外国並の生産性を上げろ、と言う一見筋が通るような話で、段々に辞めてもらおうと言う事だ。

日本の農業に国際競争力を付ける。こんな事ができるわけがないのは、生産を海外に移している企業なら、熟知している。安い労働力、為替レートの条件の差。その他日本独自の、大規模大量生産化出来ない、それは多様な条件がある。中でも大きいのは農地所有者の意識だ。ここで、出てくるのが平成の農地改革だ。補助金を受けられるのは、4ヘクタール以上の農地を耕作する「認定農業者」。小規模農家は、耕作面積20ヘクタール以上の集落営農組織などの団体を設立し、「特定農業団体」と認定されれば、同様の補助を受けられる。

このやり方の眼目は、小規模農家の経営をやめてもらえないかと言う事が、主目的だ。しかし、端から、補助金など貰わないでも、止めない農家が大半だ。耕作放棄して、荒地にしてしまっても貸そうとしない人だって相当数居る。今更どんな条件を出されても、そうたやすく農地を手放す事はしない。そこで、今出てきているのが、企業の農地購入の自由化。先日松岡農水大臣が、そんな事をしゃべっていた。いよいよ農地改革の主眼が出てきた気がする。

林業もそうだ。山に手を入れることが出来なくて、手に余る。結果山の価格は二束三文になる。企業が山を買い始めたという話を聞いた。農地も同様に企業の物になってしまえば、簡単だ。トヨタやソニーが所有してしまい、いわば住民対策にしてしまえば、一件落着と踏んでいまいか。企業が労働者を雇用して国際競争力のある、農業を出来るなどと考えているわけがない。それぐらいなら、ベトナム辺りで生産する。何故、企業が農地を購入しようと言うのか。大量に購入した暁には、転用を考えようじゃないか。こんな相談がされていないか。

20年前始めたころを思うと、農地を取り巻く状況は変わった。今はよほど良い農地が借りられる。やはり売りたくないからだ。新規就農者が借りる事で、何とか売ってしまおうと言う意識にならないように願っている。わずかな事しか出来ないわけだが、こんな状況でも、新しく農地も資金もない人間でも、農業が可能だと言う事を、地域の農家の方に知ってもらい、農業を継続する気持ちに、思いに、共鳴して行きたい。

 - あしがら農の会