水彩画の筆はどれが良いか。
車の中の筆立てである。各社各様のコリンスキーの筆が10本挿してある。一番太いもので12ミリの太さのもの。一番細いもので、5ミリの筆である。メーカーは様々である。水彩用とされるものは軸が短いことが多く使いづらい。出来れば長いものが欲しいのだが、油彩用は長くて良いのだが、太い筆がない。どの筆もラウンドと呼ばれる丸筆である。
書を描く人が平筆を使わないのと同じで、水彩画は普通は丸筆で描く。平筆は塗るものであって、丸筆は描くものだ。丸筆の中でも毛の種類はコリンスキーとか、セーブルと呼ばれるミンクの毛が一番良い。
以前は不朽堂の隈取り筆ばかり使っていたのだが、今はほとんど使っていない。羊毛筆である。短峰の白という極太の筆である。これは石垣島に来るようになってから、変わってきたものだ。いままでの絵を捨てようと考えて、見て写し取ろうとするようになったためだと考えている。細かい作業がしやすいのがコリンスキーの特徴である。
細かいことが出来る上に大ぶりの仕事も対応してくれる。幅があると言うことではコリンスキーの丸筆が一番である。太さは太い方が良い。使いやすいものをその都度使っている内に、使う筆が変わったのだ。
筆は高いという人もいるかもしれないが、筆以外はいわゆる道具はないのだから、文筆三宝というぐらいなのだから、筆をそろえるくらいのことくらいに罪悪感を覚えることはない。
筆は正直馬鹿げたほど持っている。数は分からないが、ミカンコンテナに1杯という量だ。ほとんどがインターネットで買ってしまったものだ。中国の筆で良いものがあるので、ついつい買っている内に増えてしまった。これはどちらかというと書の筆である。これだけの量あってもそれほど高い買い物をした訳では無い。
最近買った筆が写真の左端のもので、ダヴィンチ コリンスキー 水彩筆 ラウンド コリンスキー 14号。定価で言えば、36500円もする。それを6250円で買った。筆はヤフーオークションに出てくるものが一番安い。何故そうなるのかは分からないが、時々見て安ければ買う。
Raphael(ラファエル) 筆 はフランス。ISABEY筆もフランス。ダ ヴィンチ筆はドイツ。Winsor&Newton筆はイギリス。Picabia筆はフランスではないと思われるが、どこの国かは調べても分からない。Rembrandt筆はオランダ。どの筆も使っている。どれが使いやすいと言うことはない。それぞれにすばらしく使いやすい。
忘れていたので、描き足して奥のだが、右奥の筆はホルベインの筆だがコリンスキーと思われる。とても描きやすい。日本の筆では名村の筆をよく使っていて、やはりとても描きやすい。それなのに、なんとなく海外の筆を多く使うようになっている。
ピカビアは定価で言えば他の筆に比べて格安の半値以下である。安いから描きにくいと言うことはない。本物である。しかし、ネットで探していると、さらに安い価格で買える場合がままあるから、筆を定価で買うと言うことはまず無い。
中国筆だとコリンスキーと言っても偽物がままある。純狼筆という名前がコリンスキーと言うことらしい。随分と騙された。別にコリンスキーと表記されていないところが味噌だ。安くて良さそうに見えるから、ついつい買うが、使ってみて描きづらいから偽物らしいなと思うだけである。純狼筆は書の筆である。
書の世界でもコリンスキーが良いというので、日本でもふつうに作られるようになった。細かな文字を書くには向いているらしい。含みが良いから大文字も書ける。書では使ったことがないので分からないが、面相筆などでは特に良いらしい。そのほかネールアートや、化粧刷毛もコリンスキーが良いとされている。
本来ウスリー地方の野生のミンクの毛と言うことだったらしいが、今は養殖されたミンクの毛であろかと思う。動物虐待だから使うべきではないという考えがあるのは分かっているが、残念なことに他の人工毛では今のところ代用できない。
いつか、ナイロンで同じような筆が出来れば良いと思うが、現状ではどうにもならないほど違う。偽物が得意の中国の純狼筆は見た目は違いが分からない。しかし使うと、腰がない。水の含みが悪い。結果的に使えない。話では専門の筆作りの職人が騙されるほど見た目は同じものがあると、書かれている。中国からコリンスキーの筆の材料として輸入して、騙されるとある。
どうも色は染めていて完全に同じになるらしい。毛の太さも作れるらしい。しかし、水の含みと腰の強さはどうにも違う。それなら、短峰にしてくれれば良いのだが、偽物の方が妙に長いものに作る。長いコリンスキー筆はさらに貴重と言うことなので、筆の長さを強調するのだろう。
しかし、腰がないのに不必要に長いから、クニュクニョして自由がきかない。それが面白いと言うことはあるのだが、それならば、それ用の長い穂の面白い山羊筆が別にある。たぶん特殊な山羊の毛なのだと思うが、7センチはあるのに、自由のきく筆である。自由とは筆の調子が手に反応してくれると言うことだ。
このところコリンスキー筆がなじんでいる。それで買い足している。思うときにそれにしっくりくる筆がいつでも無ければ、絵は描きづらいことになる。コリンスキーの筆は無くさない限りまず10年は使える。もちろんだんだんすり減るが、それはそれで良い描き味になる。
この大事な筆は無くしたことがある。それ以来、このような箱に10本きちっと挿してある。描き終わって10本洗って挿す。その時もしなければとことん当たりを探す。よく落とすのである。絵を描いているとすべてにうっかりになる。何をしでかしているか分からない。
石垣島でも、実は一本、長山先生御用達の筆は落としてしまった。どう探しても分からなくなってしまった。筆に申し訳のないことをした。それなりに書きやすい筆ではあったのだが、もう一本持っているのだが、あれ以来使ってみたことはない。あの筆は何故書道筆の軸にしたのだろうか。どうせ書道筆の軸にするなら、もう少し長くしてくれたら良い。穂が短かめの所は描きやすかった。
コリンスキーが良いと言っていても、いつ又、羊毛の筆に戻るかは分からない。羊毛も山羊も狸や馬の筆も沢山ある。隈取り筆もかなりあるので、これは安心材料である。筆は短峰が好きで集めている。短峰は隈取り筆のように穂先の短い筆のことだ。長峰なら当然長い。これも何センチ表記の方が私にはありがたい。短峰は中国の言い方で、日本では短穂ということになる。穂の直径に比した穂の長さが3倍程度までを超短鋒という。写経筆がこれにあたるが、この筆は先だけ細いので使えない。
筆の太さは14号と言っても各社違う。世界基準がある訳ではないのだろう。当然である。中国の筆の太さはそれこそ表記が様々である。買ってみればいろいろあって、買う前に太さを確認出来ないので時に間違う。日本の太さとなる基準があると言うが、これも良く私には分かっていない。ネットの時代では世界基準がないと困る。
その時々描きやすいものがある。その昔1本ですべてを描いていた事もあるが、今は5.6本を並べておいて、その都度筆を変えて描いている。もちろんどちらが良いと言うことはない。その時の気持ちにしたがうしかない。考えて複数使っていると言うことでもない。
色が混ざるのが嫌だから、筆ごとに色を変えて使っていることが多い。同じ筆で描き続けるには洗い水がバケツほどいる。しかも絵の具を水に流すことになる。それよりは色事に筆を変えた方が合理的と考えるようになった。筆を変えても調子が変わらないことが大切になるが。
水彩筆にはリス毛というものがある。それなりの数持っているが、これは今のところ私には合わない。水彩筆とあるので、大分試したのだが使えなかった。ぐじゃっとして筆触が出ないのだ。筆触が気持ちよく出ない筆では描けない。今コリンスキーになったのは、自分というものを抑えたいと言うことのような気がしている。余り味がないからだ。
油彩で使う豚毛の筆も使う。これはISABEYが良い。何故か具合が良い。こちらは平筆の方が多く使う。ただし、これを使う場面は限られている。そういう強い渇筆のような調子が必要と思えるときだ。一応絵の具箱に入れてはある。