石垣島では一期米の出荷が始まった。

   


  トックリヤシの実です。いつも絵を描かせて貰っている崎枝にあります。ヤシは葉は屋根材、幹は建材、実は油や砂糖など、様々に利用されている植物ですが、トックリヤシの実は特に使われてはいないようだ。面白い姿だと思うのだが、この後色づいて行くのだろうか。

 石垣島では一期米の出荷が始まった。田んぼ面積は石垣市の少し古いデーターで474ヘクタールある。年間で1300トンの収穫量があるとされている。これは農協集荷分だけのことかもしれない。5万人の人口であるから、島内自給が可能と言うことになる。東京まで直接出荷している人も知っている。

 反収が300キロというところが、最大の課題と見える。農の会では反収がその倍の600キロが目標である。つまり、2600トンの生産は可能だ。加えて2期作をもう少し広げれば、3000トンの生産は可能な島だとみているが。台風の被害もあるから、そうも行かないのかもしれない。

 ここ3,4年の見た目での田んぼの状態は、耕作放棄地は広がっていっていない。これは何よりも嬉しいことだ。農業法人で田んぼを借りたいと新聞広告を出しているところもあるぐらいだから、大丈夫なのかもしれない。33歳の青年が農業法人を継いで頑張っているところもある。彼は1000万円の稲作農家の若者が2,3人出てくると石垣の農業も変わると言っている。石垣の農業意気高し。

 石垣市には農林高校がある。そして、今も大いに頑張っている。島の数カ所に農場もある。すばらしいことだと思っている。いつも絵を描かせていただいている、小嶺牧場の方は、農林高校の畜産の先生をされていた方である。

 稲作の収量の少ない原因は「あきたこまち」が奨励品種という所にあるだろう。それでも今年はできがよく98%が1等米になったそうだ。収量よりも品質を追求しているのかもしれない。西表ではすべて1等米と言うことである。これは小田原の状況から考えてもすごいことである。

 泡盛のための酒米を作るという試みも始まっている。石垣島には本気で農業をしている人がいる。石垣牛の生産が軌道に乗って来たので、若い人が農業に本気になったと思われる。石垣島の特長を生かし、地場消費を掘り起こせば、石垣の農業は大いに期待ができる。だから、観光は不可欠なことなのだ。石垣に来たら、石垣の産物で歓待できると言うことはとても魅力的なことなのだ。

 先日時間雨量120ミリ。12時間雨量が353ミリという過去最大雨量を記録する豪雨があった。農地の水没もあり心配されたが、幸い被害はほとんど無かったようだ。田んぼは一時的に水没しても、1日2日で水が引けば、収穫に問題が無いことが多い。

 普段ほとんど水のない川が、たちまちに激流に変わる。木や草の生い茂った河岸を巻き込んで、大河のような川幅になる。しかし、それは1日と続かず、あっと言うほど早く水は減衰する。ただ、あの青い海が茶色く濁るのは1週間は続く。これでは珊瑚が枯れてしまう。名蔵湾などは赤土の海岸になっている。

 6月の田んぼは、色づいてくる田んぼあり、田植えをする田んぼありと、真夏の石垣島では色とりどりの田んぼ風景が広がっている。面白い田んぼは刈り取った株から、田植えをしたように再生させる田んぼである。本気でこれを栽培したらどうなるのかには興味がある。

 是非石垣島に観光に来た方々は、この日本では石垣島にしか残っていない農村風景を見て行って貰いたいものだ。石垣島の美しさは海と空だけでない。日本一美しい田んぼがある。このことを忘れないでほしいものだ。機械を使わないで田んぼを作り上げた時代の痕跡が残っている。

 石垣島では、牧場とサトウキビと田んぼの風景が生活の風景である。今は日本では生活の風景のある場所は滅多にない。日本の原風景はすでに崩壊してしまっている。崩壊したことすら意識されないまま消えてしまった。これは日本人が日本人であると言う大事なことを失い始めていると言うことでもある。

 自給自足の石垣島には未来の日本の姿がある。日本を取り戻すというか、人間が生きる場所があると思っている。それは自然と人間が関わり、生きているという姿である。この生きている風景を描きたくて石垣島に来た。この石垣の風景がいつまでも続くことを願っている。

 石垣島の人には余りにも当たり前の風景のことで、日本の原風景が残っている。等と言っても余り、意識されてはいないと思う。日本全体で失われている。都市化と過疎で日本の風景はズタズタになっている。ますます石垣の田んぼのある風景が貴重だと伝えたいと思っている。

 こうした生活のある風景は西表島でも、小浜島でも、与那国島でもあったようだ。ところが風前の灯火である。高校がないから、若い人が島を出てしまうのだ。一度島を出ると、大学に行く人や就職で都会に出る人が多くなる。ここを解決しないとならないのだろう。みなさんそれぞれの島の良さは肌身に浸みている。

 石垣島のサンサンラジオでは石垣島のお米のおいしさを放送していた。ゆらてーく市場では、お米の試食が出来るそうだ。自給が一番なので、あんまり観光客の人に買って貰いたくはないが、物は試しなので一度お土産にふるさとに送ったら楽しいのでは無いかと思う。南の島のお土産はパインやマンゴーだけではないのだ。

 実はそう言いながら私は石垣のお米を食べたことがない。小田原の自分の田んぼのお米があるからだ。このお米のおいしさに比べたら、どこのお米も劣ると思っている。自分で作ればなんと言っても美味しいのだ。石垣島のお米がまずいとは思っていないのだが。

 石垣の美しい風景の中のお米は別格かもしれない。石垣島は確かに水が良い。山の湧水で作っている田んぼがいくらでもある。山の絞り水だけで作られるお米は美味しいだろうと思う。この土地にあったお米を満作で作る。そういう意味では、熱帯研と共同開発で石垣米の開発をすべきではなかろうか。

 熱帯研にはすばらしいお米の研究者がいる。石垣らしい南国の美味しいお米を作出して貰いたい物だ。石垣ブランドである。それは将来の石垣の田んぼの継続に繋がる快挙になるはずだ。サトウキビ栽培には限界が見えてきている。もう一度田んぼを見直す必要が出てくるはずだ。

 世界は食糧危機が近づいている。今回のコロナで国の安全保障の最も基本となる物は食糧自給だと言うことがはっきりとした。田んぼに戻せるところは戻さなければならない。石垣島は自給の島を目指して、主食の生産をしっかりと確保する必要がある。

 

 - 石垣島