ホウトウの作り方
久しぶりに「おホウトウ」を作った。山梨県生まれなので、子供のころからホウトウを食べている。ほぼ毎日食べていたと思う。「ホウトウ」ではなく「おホウトウ」であった。ホウトウは打ち込みうどんのことだ。生の面を汁に入れて煮込む。今山梨の飲食店で出されている現代のホウトウはみそ味である。しかし、60年前の境川村は醤油味であった。といってもよその家のホウトウを食べる機会はなかったので、話だけである。甲州でも地域によって味噌味と醤油味があると大人が話していた記憶がある。ホウトウの為に、甲州赤小麦という麦を栽培していたのだと思う。あの麦秋という色である。今の小麦はあんなに大きく赤く見事な色にはならない。それも、子供のころの記憶だから、大きく赤いだけなのかもしれない。そもそも、甲州赤小麦という名前だって、赤かったのであれがそうであろうと思うようになっただけのあやふやなものだ。ただ麦の背丈が随分と高かった。背の高いのは屋根をふくためだ。しかし、これも子供のころの記憶で何でも大きく思い出すのかもしれない。
―――おホウトウ作り方
朝ごはんが終わると、片付けものをしながら小麦粉を練っておく。小麦粉一合が一食分。おばあさんは人数分お椀ですくっていた。ぬるま湯が50㏄弱くらい。塩わずか。今回の小麦粉はパン小麦のハルユタカ。うどん用の小麦がいいのだが、パン小麦でもできないことはない。まず、こねバチに小麦粉の富士山を作る。中央に噴火口を作り、ぬるま湯を灌ぐ。そのまま、水が浸透するのをしばらく待つ。周りから中央に粉をかけながら、練ってゆく。練は強く、30分ぐらいは練り続ける。今は厚めのビニール袋に入れて、足で踏む。踏む数は1000回。一塊になりにくいぐらいがちょうどよい水加減。少なくても練っているうちに粘りが出てくる。水が少ないと腰が出る。塊は濡れ布巾をかけて夕方まで置いておく。ビニール袋でもよい。時間を置くとしっとり、ねっとりなっている。それを再度こねる。これもビニール袋の中でこねると楽である。そして一塊にして、今度は足で押し広げながら、四角にして行く。厚さ7,8ミリほどの座布の形に広げる。形がおかしくなったら、まとめてまた挑戦すればいい。座布団になったら、裏表に小麦粉をまぶす。そして麺棒に巻きつけて、薄く伸ばしてゆく。時々小麦粉をまぶしてゆく。1ミリぐらいの厚さで完成。薄ければ薄いほど良い。
薄くのばされた麺は良く小麦粉をまぶして、折りたたむ。このとき4角に延ばしてあれば、切りやすい訳だ。切るのはできるだけ細く切る。少し切ったら、また小麦粉をまぶしながら、麺を広げて切り口がくっつかないようにしておく。切り終わったときには汁の方が完成していないとならない。広げながら麺をお汁の中に入れてしまうからだ。小麦粉を多くまぶせながらの作業は楽になるが、ホウトウの汁がドロドロになる。私はどろどろのホウトウが好きだから、小麦粉を多くまぶす。しかし、上手は打ち粉の使い方が少ないといわれていた。くっつかない範囲で小麦粉は少なめに。
汁はカボチャのホウトウが代表的だ。カボチャを10分は煮てとろけるところが良い。インゲン、ニンジン、タマネギ、長ネギ、キノコの類、鶏肉、豚肉。あるいは貝類。何でもよいのだが、色々入れた方が、よい味になる。だしは煮干しが合う。丁寧にやるなら昆布もいい。全体にお汁はそもままでも食べれるところまで煮込んでおく。ここに面をほぐしながら落としてゆく。面が水分を吸うので、お汁は大目に作らなければならない。煮すぎると麺が柔らかくなるので、3,4分で固めのうちに終わる。食べている間にも麺は汁をすってゆく。どんぶりによそってから、生卵を入れる。生卵を入れると汁の味が絶妙になる。長ネギのみじん切りを多めに乗せる。そして七色唐辛子をかけて完成。
アアうまかった。