1円の着物を買う

   

時々着物を購入する。生前整理をしているのにもかかわらずである。病気の自覚症状がある。時に1円で購入できることもある。先日の購入は送料を入れても1枚300円平均であった。買う時にはある程度まとめ買いする。10枚まで送料が同じとかになっているからだ。スワトウの刺繍があって、263円であった。手織りの結城紬が543円だった。こんなに安いのだから、よほど傷んでいるものと思いきや、充分着れる状態のものである。新古品というか、使われてはいないものもある。後で染色を考えているので絹の品物ばかりを選ぶ。紬の布は染色に向いている。紬と言っても本来の手紬の糸の取り方のものではないのだと思う。たまには、手紬で糸を取ったというような貴重なものまである。全て手仕事の作品だ。染色に使えば絹の布であるかどうかはわかる。今まで1枚だけ化学繊維だったという事があった。それでも300円の着物で苦情を言うほどのことではない。ある程度間違いがあるのは承知で購入している。

ヤフーのネットオークションには毎日5000点くらいの着物が出ていると思う。一年で考えると何万点というような数になるのだろう。中には何百万円というようなものもある。結構高いものは高いのだが、1円からのセリとか、1000円からのセリとかいう形もある。私はそこから探している。毎日何千枚もの着物を販売するストアーがあることが不思議だ。着物をどうやって仕入れているのかと思う。そうした大きな着物中心のストアーが4,5店舗ある。例えば、宮古上布、結城紬、色無地とかいう形で、ヤフーオークションの検索をすれば、必ず着物を売っている日本各地にある大ストアーが出てくる。どこだからどうだという事まではよく分からないが、傾向があるような気もするが、あまり気にするほどのものでもない。何処の商品は偽りがないというようなこともよく分からない。着物の世界に何が起きているのかはわからないが、廃棄処分される着物が、こういう形で生かされるのであれば、まだいいのかもしれない。

表示が出るとすぐに1円で入札される傾向がある。そういう専門の人が居るような感じもする。落穂ひろいをして、それを再販している商売もあるかもしれない。古書ではそんな宝探しをして暮らしている人がいるとテレビでやっていた。私も1円で2、3度買っている。競ることは基本しない。この着物ならこのくらいまでなら買っても良いという価格を入れる。500円か1000円くらいかなと思い入札しておく。たまたま他に誰もいないので1円で落札になるという事が起る。着物の布が材料として生かせると思うからだ。絵の具を買うような気持に近い。日本の織物が素晴らしい。1円で購入した着物が見ているだけでもため息が出るような作品という事がある。これを何とか生かして使いたいと思っている。写真は袋物である。先日は筆入れを作ってみた。画材やさんへ行けば、3000円くらいで、帆布で簡単に作られたものが売られていることがある。私が作るものは二重の袋作りの絹布になる。作品と言ってもいいようなものだ。使い勝手も良いし、丈夫でもある。

手仕事というのは素晴らしいものだ。作ることが楽しい。絵を描くことが面白いのと同じだろう。出来たものを使う事も楽しい。なんとか暮らせるのであれば、思いつくものを、あれこれ作っていたい。楽しそうな暮らしである。若かったらそいう暮らしが収入に繋がるよう努力したことだろう。一つの袋を作るのは一時間ぐらいのものだ。週一日は袋作りに使い7枚作る。あとの時間は絵を描いて居てもいいではないか。畑をやったり、田んぼをやったり様々なことがやれそうだ。それで人間は生きて行ける。どんなことをしても生きることに心配はいらない。競争をしないでも生きられる道はある。私は自分が楽しいと思う方へ、思う方に進んできただけだが、何とかここまで生きてこれた。欲少なければ、心乱れず、幸多し。 

 

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