年金運用の赤字

   

年金運用の赤字が膨大な額にのぼる。政府は2015年度の運用概況書の公表日を7月29日にした。理由は参議院選挙前に公表できなくなったからである。巨額の赤字を公表することが選挙に不利になる。2007年4月にGPIFが創設されて以来、6月下旬か7月上旬に公表されてきた。にもかかわらず、姑息に今年は公表を遅らせようというのだ。予測では少なくとも4兆円の赤字を超えるだろうとされている。従来の年金の運用のままであれば、赤字は出なかったとされる。株式投資に比重を増やしたために、5兆円近い損失を生じた可能性がある。年金積立金を株式に回すなどとんでもない投資法である。株は必ずリスクが伴う。自分の資金をリスク覚悟で行うのでなければ、上手く行くはずもない。公務員が責任なしに行う体制では無理だ。専門家であっても、運用して成功する事は至難の業である。まして年金の運用を行っている組織は、天下りの素人集団らしい。

2014年11月以降は国内債券35%(±10%)、国内株式25%(±9%)、外国債券15%(±4%)、外国株式25%(±8%)に変更している。このために赤字が膨らんだ。なぜ、こんなリスクのあることを政府が行ったかと言えば、株式相場を上げたかったからだ。大企業の要望にアベ総理が答えたのである。アベノミックスである。黒田異次元の金融政策の影響である。株価は確かに上がった。莫大なお金が投入された。株価を高値で維持するために、年金資金を使ったのだ。それを見越して、様々な資金も海外から持ち込まれ、株価は戻したかに見えた。しかし、世界経済のこのところの失速である。株価が投機で動くのは短期のことである。結局は世界経済の衰退で下げる要素が増え始めた。原油価格の低迷により、オイルマネーが投資に回らなくなる。全世界で470兆円というオイルマネーの引き揚げが始まる。もう、年金資金を引き揚げることすらできなくなっている。もし、引き上げるという事が出たとたんに株価は暴落であろう。

アベ政権が、株価を高値誘導した原因は2つある。大企業の圧力と、憲法改定である。大企業はこの間莫大な利益を上げ、内部留保を増やしている。その結果、国民の格差が増大した。 誤解があるので書いておけば、アベ政治というとき、安倍晋三氏を総理大臣として軽んじている訳ではない。アベノミクスと同じで、アベ政治は憲法改定を目論む集団の意思である。個人の意思というより、最後の保守派のあがきのような集団の意思である。あと10年すればその集団は間違いなくいなくなる人たちの、傀儡政権として、アベ政権はあると考えている。だから安倍晋三氏個人をうんぬんしている訳ではない。右翼集団の総意としての、アベ政治と呼んでいる。今後は橋下元大阪市長のような、新たな右翼集団も現れるだろう。そして、新たな左翼集団も現れるだろう。しかし、アベ政治は古い右翼集団の断末魔の叫びのようなものとみている。

次に現れる政権がもし、経済の苦境を乗り切った時に、国民の絶賛を浴びる可能性がある。それが、次のヒットラーになる可能性がある。要注意。民主主義が能力主義を重視してゆけばそうなる可能性が高い。経済は数理的なものであり、的確に対応するものが経済をよくする確率は高い。しかし、そのことと、日本の方角とは別である。極左の政権が経済を良くすれば、極左政権ができるだろうし、極右組織でも同じである。経済が重要であることは確かだが、国民はもっと人間の平和な暮らしを見て判断する必要があるのだろう。アメリカのトランプ人気を見ると、民主主義の危うさを痛感する。民主主義は努力しなければ良いものになることはない。日本の民主主義が時間とともに成熟すると考えられていたが、むしろ、利己主義の方がそれを上回る価値観として蔓延してしまった。利己主義と経済が結びつき政治を方向づけている。

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