絵画とヤフーオークション
水彩画の画材を購入するのに、ヤフーオークションを利用することが多い。筆は気になる方なので、これはという筆があればあれこれ買う。画材屋さんで買えば2万円はする筆を200円とかで買った事もある。5000円で買った筆が実は使い物にならない筆だったという事もある。覚悟して購入している。良い筆の方が思う線が引けるからだ。絵の具もよい絵の具は高いが、色もよい。自由に動かせるものだ。しかも良い絵の具ほど減るのが早い。使いたいときに使いたい絵の具がないというのでは、困る。そこで絵の具もヤフーオークションで十二分に準備してある。紙もそうなのだが、いくら描いても十分あるという状態にしてある。そうでなければ私には絵は描けない。贅沢なようだが、それほどのお金がかかるという訳でもない。ヤフーオークションのお陰だ。先日偶然見つけた水彩紙など、買えば10万円はするだろう全紙の束になったファブリアーノが、1000円で売られていた。私以外は入札する人も居なかった。
つまり案外のものが格安で売られている。たぶんそのものの価値が分からない人が処分しているのではないかと思われものが出てくる。泡盛を古酒にするための大きな甕が、1個1000円で送料込みだったので、6つも買ってしまった。これは沖縄料理店の片付けで出たものだ。絵にかかわるものなら、そうは騙されない。実は水彩画もよくオークションに出ている。私が見るのは水彩画である。今、確認してみると2402件とある。それだけの水彩の風景画が出ているという事だ。文化勲章受章作家をはじめ、ありとあらゆる画家が流れてゆく。本物もあれば、明らかなにせものもある。そして多くが1000円というような価格である。と同時に何処にでもある300円くらいの朱竹画が2400万円でずーと出ている。間違えてくれる人もないだろうと思うのだが。もし間違えで買った時にはどうなるのだろうか。
そして知っている人の絵も、時々出てくる。この人がこの価格でつまり、画廊で見る価格の50分の1くらいの価格で売られている。私もこれは直接手元で見たいと思う絵が出ることもあるが、買う事はない。絵は買ってもあと困るだろうと思ってしまう。高校生の頃、つまり、今から50年前くらいに、デパートで売り出す新人画家たちという特集が芸術新潮に出ていた。自分が芸術新潮を買う高校生であったことには驚くが、三宿にあった古本屋さんで月遅れで買っていた。季刊芸術もみずゑもそうなのだが、月遅れで格安本になる。昔から安いとつい買ってしまう性格なのだろう。デパートの絵と画廊の絵の違いは買い戻し条件があるかどうかだと書いてあった。昔の画廊はその画家を育てる。今でいえば所属タレントである。そしてブランドにしているから、どこかでその人の絵が安く出たら買取利をして、価格を維持するというのだ。またその画廊で購入した人が絵を買い戻してほしいといえば、購入価格で買い戻すというのだ。本当だったのだろうか。その後、バブルで絵画も投機材料になった。高くなることが期待されて企業なども買った。上手く節税する材料になったらしい。政治家の賄賂に使われたりもした。買ったことにして、あげたことにして、買い戻したことにしてと、グルグル回しにして、どこかにお金が移動するらしい。
ヤフーオークションが登場して、絵画の販売の世界も変化を始めている。絵画の相場価格というものが完全に崩れている。絵画年鑑というような相場表があるが、誰はいくらというような価格は、全く無意味化した。自分は号〇〇万円だとか、昔は自慢した絵を描く人がいたが、今は笑い話のように聞こえる。ネットオークションでは格安になる。年鑑に載せてもらい。それを根拠に絵を販売する人も居た。ところがネットオークションでその〇〇万円が実は〇〇円で出ても買う人も居ないのが現実だ。絵の売買の世界が変化している。ネットオークションで高いのは、名の売れたタレントの絵などだ。これは絵の世界が良くなりつつあるという事なのだろうか。