中国経済は崩壊か
中国の株価が30%も下がって、経済が崩壊するのではないかという意見が見られる。アジアのライバルが駄目になって欲しいという、醜い願望が現れていて、情けない限りである。今中国で起きているのは、株の急上昇のバブルがはじけている状態。中国には3回、農村地域ではあるがかなり入念に見てきた。このまま経済が上昇を続けることはないだろうとその都度感じてきた。しかし、中国の潜在的な力量は高いものがある。一定の質の高い労働力が大量に存在するということが、かなりのところまで経済力を上昇させるだろうとも感じた。中国人は投機的な商人気質が強く、これが破たんにつながりやしないかということも感じた。よく言われた、模倣文化とか国際的な商取引に適合しないということである。経済的なリーダーになりにくい、世界基準から距離がある。儲かるものであれば何でも手を出す傾向が強く、新しいものを開発する能力にはまだ乏しいのではないか。しかも、国家資本主義という特殊性もある。国家資本主義とでもいう仕組みが、良い面と悪い面を共存させている。
今ギリシャが経済破綻に向かっている。その原因は世界企業のない国が、EUという経済連合に組み込まれたことにある。EUという枠の通貨統合をすることで、共通の経済圏を作れば、その中での競争は資本主義的な経済での競争ということになる。北海道や、沖縄が、東京という世界企業がたくさんある地域と、共通の基準で競争するということになる。当然、東京が一人勝ちになる。EUではドイツなどの主要国が勝ちになってゆくのは予測されたことだ。資本主義における平等の競争というものは、グローバル企業のある先進技術国が勝利するようにできている。ギリシャのように、一次産業や観光の国であれば、経済的に苦しくなるのは当然の帰結である。一人の労働力で生産できる物量は農業産品と、工業製品を比べて、その労働力への依存率は比較にならないくらい、開いている。農業を大規模化し、工業化している国と、個人農家的経営を行っている国が同じ枠に入れば、ギリシャが苦しくなる。
TPPでも同じことになる。必ずアメリカの一人勝ちになる。ドイツがギリシャを経済原理だけで攻め立てているように、弱い国はますます、経済原理の前に追い込まれてゆく。資本主義は共通のルールで、一定の正義ではあるが、強者の論理であることも間違いがない。発展の方向が資本主義的な合理性に向いている国と、そうでない文化の国とがある。それを、一つの金銭的競争の価値観ですべてを、押し延べてゆくのが資本主義の問題点である。競争原理に加われない国を努力が足りないからだと、決めつけることは間違いである。価値観は国によって、民族によって様々であるべきだ。世界基準に統一することが良いこととは言えない。EUの理念も各民族の文化やあり方を尊重し、経済の合理性だけを共通価値とするのであれば、ギリシャのような国はどこまで行っても浮かばれないことになる。このことはかなずらTPPでも起こることであるから、日本は加わるのであれば、十分にそのことを考えなければならない。
中国の国家資本主義はそうした背景のもとにできた。中国のことは、たぶん日本が一番理解できている気がする。付き合いが長いからである。欧米各国は中国がアメリカを抜く経済大国になると予測している人が大半だそうだ。ところが日本人は中国が破綻するとみている人が80%もいるそうだ。そういう読みは日本人だけがしているらしい。私は中国は経済大国にまではならないが、破綻することもないと考える。あれだけの国土と、能力のそれなりにある国民がいて、しかも、有能なリーダーがいる。そこそこまで経済をのばして行くのは当然である。問題は汚職撲滅キャンペーンの逆作用である。汚職があるからこそ中国は伸びている。水清くして魚住まずの国である。余り、倫理的なことを強調すれば中国人の能力を矯めることにもなる。それが今起きていることのような気がしてならない。