憲法改定について

   

安倍政権はいよいよ、憲法改定を明確にしてきた。国会答弁でもその意思が感じられる答弁である。そのこと自体は良い事だと思う。本音を隠す政治では、近隣諸国に対しても、日本自体にもよくない事だ。2016年夏に予定されている参議院選挙を、憲法改定の選挙と位置付けると言う事のようだ。そしてその参議院選挙に自民党が勝利した場合は、憲法改定の国民投票と言う事になりそうだ。野党勢力および、公明党はそうした自民党の覚悟、思惑を前にして、どういう姿勢を取れるかである。自民党は、自民党憲法草案を発表している。この憲法の方向に変えたいと言う事であれば、無血革命政権と言う事になる。つまり、自民党憲法草案は、到底改定の範囲の物ではない。根本的に新しい憲法を作ろうと言う考えである。つまり、そこに自民党の党是があり、目指す所の競争に勝つ、経済の国づくりがあるのだろう。

野党は現在力を失っている。憲法論議の前に、与党に対立出来る野党と言うものが存在しない。野党における憲法論議と言うものが、共産党及び社民党以外にはない。この両党は現行憲法を良しとして、政権を取ったとしてもこの憲法のもとに政権を運営すると主張している。特に憲法に関して民主党内は、ばらばらで到底党としての統一の論議すら行えない状況であろう。話す事自体が党の分裂につながる。それは維新の会も状況が似ている。後1年半の間に、憲法改定が論議されるとすれば、野党はその為の体制の立て直しを行わなければならない。安倍政権を動かしている人達が、憲法改定を前面に出してきた背景には、憲法に関しての民主党、及び維新の会がバラバラな状況であることを見越しての上の、賢明な選挙戦略である。また与党たる公明党は参議院選挙前に、与党を離脱する必要がある。今後はリアルに、憲法改定のシグナルを見ておかなければならない。

確かに自民党は選挙戦略に長けている。しかし、国民の総意と言う事を考えれば、自民党は3分の1の支持しかない。これはいつまでたっても増えないし、むしろ老齢化して支持者の総数は減少をしている。その3分の1の支持者も、利権的、地縁的な支持者が多数派であり、憲法に関して明確な意識があるとは思えない。保守的な思考があると言う事は想像されるが、今回の全中の解体の過程を見ても、農村保守層が失われてきているようだ。自民党に圧力をかけられるような、保守層も失われてきているという感じだ。一方に石原党に代表される軍国主義層も殆ど支持者がないという事は、この前の衆議院選挙で明確になった。こうして考えてみれば、憲法に向かい合っているのは、自民党かなりの人達と、共産党と社民党の人達と言う事になる。

その自民党憲法案は、進駐軍の素人が7日間で作ったと、自民党が揶揄する所の現憲法より、品格がある文章であろうか。実に空回りした露骨なな感じのする、印象を受ける。何十年もかけている割には、大して品格ある新憲法案ではない。自民党の場合、最近の議員は自民党株式会社の社員と言うような印象である。ここの社員は会社の方針を述べるだけで、社員としての考えを強く述べる人は少ない。会社内の序列があるようで、自分の意見を言える人はほんの一握りのようだ。つまり、そういう序列のある国に日本をしたいと言う事なのだろう。日本国が一つの会社のようになれば、競争力が高まり、世界の経済競争に勝てるという発想なのだろうか。明治憲法には世界の時代の先端をゆく、憲法を創案する意欲がある。自民党案は、懐古的な物で新鮮な未来志向がない。次の時代に相応しいの価値観の模索がないという事なのだろう。その理想に向かう意思がないために、競争主義の下卑た匂いがするのではなかろうか。

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