原油価格の下落と日本経済
ガソリンスタンドに行くと、確かにガソリン価格が下がってきた。行くたびに下がっていて、1リットル130円で入れられた。これは久しぶりの感じだ。何しろ原油価格は半値になったのだから、もっと下がっても良い。円安の影響で、そこまでは下がらないという事なのだろうか。上がる時は素早い反応で上がる気がする。原油価格が下がるのは、消費者にとって有難いお年玉だ。最近悪い話ばかりだったから、日本経済にとっても良い事に違いないと思っていたら、日銀では、これでは消費者物価の上昇の2%が達成できないと、心配しているらしい。いったい日銀は消費者いじめの組織なのだろうか。デフレから、インフレに変える金融政策を行うと言うのは、つまり日銀が円をどんどん発行して円の価値を下げると言う政策らしい。実際には発行した円で国債を買う。それで国債の金利は過去最低になった。円安になって良いのは輸出産業と観光業者か。
インフレになれば、早くお金を使いたくなるという気分になると言われる。例えば土地が値上がりするから、早く購入しておこう。上手く行けば値上がり益が得られるかもしれない。デフレが続けば、土地はこの先下がるのだから、本当に必要になるまで買うのはぎりぎり延ばそうと言う事になる。こうした気分がインフレに載せられるという事で期待されている。実際には、インフレになっても給与が上がると言う事が無ければ、この経済を上向きにする好循環と言うやつは始まらない。例えば給与が2%上がって、物価が2%と上がっても、消費は増加すると言うのだ。物価が2%下がって、給与も2%下がれば、同じ事であるのに気分的にお金を使う気にはならないという事らしい。今の状況は、給与は停滞を続けている。実質賃金の低下である。経団連でさえ、給与を上げなければダメだと言う事を言いだしているのはここに原因がある。給与を上げなければ、物価上昇に追い付かないのが今の状況だ。
しかし、気分の問題は別にして、土地は人口が減少して、値上がりはもうしない。土地と言う物はいくらか増えてゆく。山だったり、海だったりした所が、住宅地に変わったりする。しかし、必要な人口はこれからどんどん減ってゆくだろう。だから都市部の繁華街ではいくらか上がるが、それ以外の所は、インフレになっても上がらない。つまり値下がりを続けている。又それは石油価格もそうだ。世界での経済の衰退で原油需要は下がり始めている。同時にシェルガスやエントロガスなど新エネルギーの発見は、原油価格があがれば当然増える。自然エネルギーの技術革新も既に先進国では進んでいる。当然、原油価格は上がらなくなる。とすると、やはり、ほんとに景気が良くなるためには、金融政策、財政出動の2つだけではダメだ。こうした刺激策が効果を上げている間に、第3の矢の成長戦略、新しい産業の創出である。これが一番難しい事だし、最近は不可能ではないかと言われはじめた所である。
何故、第3の矢が日本にできないのかを考える必要である。世界経済の流れもあるが、日本人が野心を失い始めたからではないか。日本は一定の経済的成功をおさめ、新事業に挑戦する意欲を失っているのではないか。自動車を作る、オートバイを作る。こうした事に野心と情熱を傾けたように、自然エネルギー産業にまい進している感じが日本にはない。原発事故を起こし、資源小国の日本こそ自然エネルギー産業に全力を傾倒するのが本筋ではないか。国民のコンセンサスも得られ、政府も開発資金が準備できる。所が、政府は水を差すようなことばかりを主張し、後ろ向きに原発にしがみつこうとしている。こんなシグナルを政府が出しているようでは、到底新産業の創出どころではない。何故ここまで既得権政治をするのかである。小渕優子氏の問題で表面化したように、自民党政治の裏側で利権とがんじがらめになっている疑いが濃厚。その結果第3の矢が掛け声だけという事なのだろうか。