安倍政権の支持層
三津浜からの富士 10号 インドの水彩紙 海と富士と空。この組み合わせの中にすべてがあるはずだ。
安倍内閣は高い支持を受けている。安倍政権は憲法を破壊するほどの、変則的な手法を弄しているにもかかわらず、高い支持を受けている。この理由を考える必要がある。その前提として考えておくことは、今回の憲法解釈の変更は、アメリカによる強い圧力で行ったことだ。中国の軍事的な拡張をこれ以上は阻止したいと考えているのだろう。その役割を日本に期待している。アメリカが正面に立たないで、日本を盾にしようとしている。日本は戦後一貫してアメリカに隷属してきた。日本はアメリカに隷属することで、軍事的な負担を軽減し、経済成長一辺倒できた。しかし、資本主義そのものが行き詰る中で、日本もこのままでは成長を続けられないことが明確になってきた。資本主義は弱いものから吸い上げる仕組みだ。しかし弱いものが世界に居なくなってきた。後発国の追い上げで、大きく変わることが必要になっている。安倍政権は、一見日本の自主独立を求めるかのようだが、実はアメリカへの隷属の傾向はどの過去の政権より強い。
国という単位を越えて、世界資本は成長の可能性を探り続ける。国家の正義とか、思想というものを凌駕しながら、その資本自身の生き残りの道を探し続ける。中国と考え方が違うとしても、利益が出るものなら、強調せざる得ない。韓国の在り方がまさにその典型である。日本が目指している道は、韓国が先を歩んでいる道である。しかし、韓国の未来が明るいかと言えば、日本より先に、ひずみを拡大させて破綻するとみている。国家資本主義とでも言うように、利益が出る事をすべての国策に優先して行く。ウクライナのEU加盟を、ロシアが阻止しようとする引っ張り合いも、経済が要因になっている。日本国内でも、原発再稼働の主要因は経済である。経済が全ての安倍政権の基本姿勢は、経済を最優先だとする政権である。その経済優先は国内にさえ吸い上げる層を見出そうとしている。安倍政権の支持層は、競争の激化を歓迎する、格差の上に位置すると意識している層なのではないか。
この経済優先が安倍政権の高い支持の背景にある。菅官房長官によると、第3の矢はすでに打たれて成果を上げていのだそうだ。経済政策の失敗は遠からず明らかになるだろうが。その時が安倍政権の見放されるときだろうから、格差はさらに深刻になるだろう。安倍政権は既得権益にこだわり過ぎている。新しいものへの意欲に欠けている。過去の成功体験に基づいた、経済政策だけで、冒険心がまるでない。これでは、世界との競争にますます遅れてゆくことになる。しかし、これは日本人全体に広がっている、臆病な気持である。日本全体が弱気になっている。気持ちが弱いから、過去の成功した記憶に戻ろうとする。今必要なことは、確かに第3の矢だ。その第3の矢は新しい発想に基づいた、世界にかつてない産業の創出のはずだ。そうでなければ、世界の競争に勝つようなことはない。所が人間にとって新た幸福を産み出すようなものは、そう簡単には見つからない。過去に拘泥して、挑戦する気持ちが生み出せないところでは、見つかる訳もない。安倍政権の本質は、可能性のない、原発にしがみつく弱い気持ちの政権ではないのか。
日本人の多くが実は後ろ向きの政権を歓迎している。その心情は気持ちが弱まっているからだろう。前回の東京オリンピックに向かう時の日本人と、6年後の東京オリンピックに向かう日本人の心の様子はまるで違う。前向きの興奮がない。前回は敗戦後の復興という日本人の存在を世界に示そうという共通意識があった。こうした意欲が生まれないのは、日本人が土から離れてしまったからではないだろうか。行動力が少ない日本人。細分化して多様化した日本人。肉体から離れ、観念的に成った日本人。日本人の質が変わり、低下していると考えざる得ない現象が多発する。経済の豊かさが人間の質の低下になるとは、予想外だった。衣食足りて礼節を知ると考え、先ずは経済をと考えて来たのだろう。所が誰でもが普通に暮らせるようになったら、格差社会を目指すようになった。貧しかった時代には、何とか生きてゆきたいと必死だった日本人の気持ち。現状では人を犠牲にしてもより豊かに成りたいという競争の醜さが現われてきていると思われる。