水彩画研究会に際して

   

浅間山 10号 畑があって、山がある。それだけの場所なのだが、最近はそういう場所を描きたくなる。以前からかもしれないが、人間と自然のかかわりが分る所が描きたい。

水彩人では、伊豆下田に於いて、水彩画の研究会を開催する。水彩人が出来て以来、研究会の開催を続けてきた。それは、水彩人という団体は、水彩画をともに研究して行こうという組織だからである。絵を描くということは、確かに一人の行為である。しかし、誰もが一人で努力をして行くのが、絵画の世界のことではあるが、一人での研究では限界があると考えて、研究会を始めたのが、水彩人である。そのために、会の規約に於いても、互いの絵画の相互批評が決められている。一人でやりたいという人は、水彩人という組織の趣旨にそわないということである。水彩人の仲間であるということには、まず、この相互票を大切にするという自覚が必要ということになる。

水彩画というものが、どういうものであるのか。その可能性はどこにあるのか。これを共に探求しようということである。私としては、全員に自分の考える水彩画とは、どういうものであるか、レポートをお願いしたところである。中川一政氏は春陽会に於いてそういう試験をし、採点をしたそうだ。ただ、何となく水彩画が好きだから、水彩画を描く。というのでは、水彩画の本質に至ることはできない。それぞれが自分の考えで構わないのだが、水彩画の意味と、可能性を見直す機会を何度でも作ってほしい。ただ、その時の印象を、いつものように描くというのでは、水彩人の研究会ではないと自覚してもらいたい。そういう研究会を行いたいと考えている。

この機会に、いまだかつてない自分に向けて、始めての挑戦をしてもらいたい。私もそのつもりで、この研究会に、大きな期待をしている。自分を突破するということは、一人ではできない。今までと似たような絵を描くならば、黙って家で描いていれば済むことである。絵を描くということは、今までどおりでは後退ということだと思う。評価された自分を自己否定して、前に進むような、意欲が必要である。その意欲と勇気をもらえるのが、水彩人の仲間である。私を始め、多くの同人、会員が参加し、始めて出会う事が出来るかもしれない自分に、期待をしている。このどこの会にもない、水彩人の挑戦をぜひとも生かしてもらいたい。

実際には、下田の海を、港町を、漁港を描くことになるのだが、あくまで見えている世界を写すということではないと考えてもらいたい。見えている世界を、きっかけにして、むしろ自分の中の世界を展開してもらいたい。自分の心の中を掘り下げてもらいたい。見えているものは、あくまで入り口である。ここで行う研究はあくまで、冒険であり、挑戦的研究である。良い絵を描く必要もない。技法的にも、今までの得意なやり方にこだわらないでもらいたい。やってみたこともないものを一つでも、学ぶ機会にしてもらいたい。一人で描くことは、いつでもできる。むしろ、この機会に仲間たちがどう挑戦しているかを探ってもらいたい。

今までも、この研究会の場で、新しい自分を発見した人がいたと思う。そして、私も、この研究会を続けることで、自分の絵を展開することが出来たのと考えている。だから、あえて水彩人の研究会を続けてきたのである。この研究会が有意義なものになるように、一人でも多くの人に参加してもらい。水彩人の水彩画を共に探求したいと切に願ってる。もう間際であります。どうか、水彩を描く仲間が、この機会を生かしてもらえるように期待しています。開催日は5月7日(水)8日(木)9日(金)

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