何故、生ごみは堆肥になるのか?

   

1月22日、佐倉朗夫先生の講演会を開催した。小田原生ごみクラブ主催である。佐倉先生は明治大学の農場を担当されていると特任教授である。以前、神奈川県の農総研におられ、有機農業について考えてこられた。「有機農業と野菜作り」を筑波ブックレットから出版されている。小田原有機の里づくり協議会では、小松菜による堆肥の比較実験を指導していただいている。今回の講演はとても格調が高いもので、わたしたちの暮らしの背景となる、自然の営み全般にわたるとても重要な視点のものであるった。レイチェル・カーソンの「土壌の世界」に始まり、「センス・オブ・ワンダー」に終わるものであった。「すべての生物は土壌の恩恵を受けている。」「自然と言う力の源泉から遠ざかり、人工物に熱中するという愚にいたる。」まとめきれないほど、内容は広く大きいものであったが、思いに溢れている素晴らしい講演であった。

何故、生ごみは堆肥になるのか?「生ごみは有機物だから、堆肥になる。」では、有機物とは何か。緑色植物は空気中の炭素と根から吸収する栄養素に、光のエネルギーを利用して、「光合成をおこなう。」この植物を昆虫や動物が食べ物として利用する。その廃棄物が、有機物堆積物となる。それをバクテリヤや菌類は分解をして、栄養素を作り出す。その栄養素が、生産者足る植物に吸収されるという「自然界の循環の秩序」、自然の摂理が存在する。有機物はかならずC炭素をもっている。無機物は例外的には炭素をもつものもあるが、一般に持たない。植物遺体は土壌動物や土壌微生物により、分解され、炭酸ガス、水、アンモニアになる。一部は高分子化合物として残り、これらが重縮合して高分子化合物の腐植物質となる。森林では、落ち葉や倒木により、腐植の循環が起こり、自然の安定した循環が起こる。しかし畑においては、腐植は自然に生成されることは無いので、堆肥や肥料として、腐植物質として施されることになる。「農耕は、土壌形成にとって、危うい行為であり、土壌劣化的プロセスの上に位置する。」

「堆肥化」とは、人間が、自然の循環の輪の中で、農耕をおこない食糧生産をするために、生物の力を借りて、「有機廃棄物を腐植物質に還元する。」ことである。段ボールコンポストでは、基材を土壌の腐植層として位置付け、生ごみを投入しながら、箱の中の微生物を活性化させる。有機物を還元、分解をして行くこととなる。堆肥化の技術では、1、原材料の水分量 50~60%2、空気量 容積重の0,6 3、C/N比 20から30 の3つが重要になる。農業でのたい肥製造では、「2,3メートルうずたかく積み肥え」する。量がまとまることで、微生物の活動による温度が蓄積され、さらに高温での微生物の活動が促進されている。様々な物質の分解はそれに適合する多様な微生物が行う。水と酸素を加えながら、温度の上がり下がりを繰り返し、やがて、堆肥の分解が進むと、温度が下がり、微生物が遺体として蓄積し、有機質に富んだ堆肥となる。

段ボールと言う小さい世界での分解は、化学的分解が中心になる。つまり、小動物や虫がかじるような、物理的分解ではなく、バクテリア、放線菌、糸状菌(カビ)などの微生物が体内で化学反応させながら分解する形である。バクテリアは物質に合わせて分解に必要な酵素を作る能力を持つ。中温から高温で多くが活動する。温度が低下すると21度から24では糸状菌の活動が促進される。放射菌は中温性で、有機物分解の過程で、炭素、窒素、アンモニアを遊離したり、抗生物質の生成をしたりする。段ボール内では、生ごみに限定されるため生物の多様性が低い。生物間のバランスが崩れやすい。また、分解還元に速度差があり、残存する栄養分が多く成りやすいので、熟成期間を取る必要がある。畑での堆肥化とは違う、こまやかな管理が必要になる。

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