現代農業7月号
今月の現代農業は「水&エネルギー自給」特集。雨水利用法。太陽熱利用法。夏を涼しくする法。発電法。燃料の自給法。どれも、農家自身が取り組む自給技術である。ペットボトルを黒くして温水器を作るなど、ちょっと笑ってしまう工夫が満載である。自給は工夫である。アイデアである。日々の工夫を楽しんでやれることに尽きる。屋根に散水して涼しく。これは洋ランをやっていた時随分やったものである。温室の屋根を水が流れるようにする。その水を雨樋で集めて地下の貯水槽に戻す。そして又屋根から落とす。半地下温室も何回か試みた。大地の持つ夏涼しく、冬暖かいという力を利用しようということである。水のタンクを地中に埋め込み。この水の安定している水温を利用する。雨水を井戸水に変換しようというのである。だいたいはアイデア倒れであったけど、やってみること自体が楽しいのである。
よしず、打ち水、すだれ、蚊帳。風鈴、うちわ、鈴虫、金魚。冷房機の普及は何よりではあったが、風情がない。ああ暑い暑いでどっぷり暑さに暮らす事も、一夏を楽しむ極意である。そりゃー涼しい方が良い。それで失ったこともある。農家は炎天下、否でも草取りをした。子供の頃これだけは十分やらされたと人に言える。一つの自慢である。厳しいお爺さんだったから、泣いてもやらされた。つらかったが、いま思えば有難いことだ。除草剤の登場で無くなった。確かにらくになった。庭に撒いた除草剤が雨で池に流れ込み、池の鯉が全滅した。又草取りが始まった。便利になることは、何時もリスクが高くなる。自給エネルギーなどと言うと、すぐコスト計算に成る。この本に出ている工夫は、楽しんだ分得になったという工夫である。緑のカーテンにコストはない。ゴウヤが何本取れたからいくら得したとか、堆肥にいくらかかったから損だ、など、二の次のことだ。楽しんで自給できれば、コストはない。
カラーページは大豆の苗作りのすごい工夫である。これは是非やってみる。よくもここまで大胆なことをしたものだ。根も切り捨てるし、芽も切り捨てる。この大胆さに脱帽である。反収600キロの大豆と言うから、驚異的である。ちょとした工夫がばかには出来ない。自給農業とはそういう農業のことだ。プランテーション農業と対極にある。土を育み、自分の存在を循環に織り込んでゆくすがた。実はこの大豆記事は去年も出ていた。しかし、カラー特集でインパクトが増した。余りの事に文章だけでは信じ難かった。少しの工夫が地球を救うという思想。今回の特集は、原発対応である。原発を止めるには暮しを変えなければ。そう言う思想だと思う。実は私も原発に関する記事を書かせていただいている。現代農業と同じ考えだ。国際競争力のある農業の道は、プランテーション農業の道であり、リスクの高い原発への道に成る。
いわき市の薄上さんが好塩菌という微生物の事を書かれている。塩類を取り除く菌を培養していたので、津波被害の地域の人に無料配布されるという。薄上さんとは中国に同行させていただいた。学ぶ所が沢山あった。農業者は次の時代を作り出す可能性を持っている。まだ伝承を身体の中に貯めている。伝承そのものと言うより、物を見る目を伝承から育てている。農業には日本が再生する、力が秘められている。「大丈夫だよ、にっぽん。」現代農業はいい雑誌である。農家の知恵を足で集める今どき珍しい雑誌である。私自身東京で絵を描いて行き詰まり、もんもんとしていた時、救いをこの本に見ていた。いつか、こんな暮らしをしようと漠然と思っていた。チェリーブロッサムである。幸い、セールスマンとして死なない内に、自給生活を目指す決意が出来た。