種牛5頭抗体も陰性
口蹄疫が少しづつ終わりかかっている。今回川南町の感染農場の丸一隆氏のマスコミに向けた情報が、47NWES以外では取り上げなかった事がわかった。マスコミがこの問題で興味を持つ部分は、本質とは少しも関係のないことである事が、よく分かる事例だ。国の対応を政治的に問題化して、面白おかしく取り上げる。昔で言えば、夕刊紙やスポーツ新聞のレベルである。ワイドショウ的な事には熱心である。いかにも、現地の畜産農家に同情的な風は装うが、宮崎県の種牛の処理についても、対応を興味本位で取り上げたに過ぎない。報道機関が現地入りできない状況で、初期段階で地元メディアの現地入り取材が行なわれた問題もある。こう言う時に現地の農場から、インターネットを通して情報が出てくることは、とても重要な事になる。そうした仲間からの緊急連絡で、急いで対応を始めたと言う畜産農家の声も聞かれる。国や県の通達よりすばやく、対応が流れる。マスメディアの科学的分野の能力低下も目立った、事件であった。
大分で放牧養豚をされていて、現在千葉で養豚をされているYさんと、この一連の事で話す機会があった。行政の対応の後手後手について、深刻に言われていた。行政が口蹄疫について、予備知識や事前準備がなかったこと。ヨーロッパ、韓国と日本の対応の違いなど、教えていただけた。畜産業では家畜医療の進歩が遅い。治すより殺処分と言う発想から、医薬品会社の対応も鈍い。日本全体で鶏を専門とする獣医は6名ではないかと言われていた。全国の行政から、緊急にデスクワーク中心の獣医師が集められて対応する。現場の最新の口蹄疫の情報を持っているものは極めて少ない。まして政治問題化するから、赤松農林大臣の最初の記者会見のように、ニコニコ笑って人間には感染しませんから大丈夫です。まさか農林大臣かと言うような、場違いな事になる。最近でも東国原知事との会談で、殺処分を1週間以内に済ますように要請した。どこの誰がどうやってやると考えての発言か。
種牛49頭は既に殺処分されてしまった。しかし、きわどく5頭の種牛は免れた。これに対して全国肉牛事業協同組合と日本養豚協会と言う団体からは、「犠牲を強いられた生産者に対する裏切り行為だ。」早く処分しろとの声明が出ている。5頭が何故感染しなかったのか。このことを充分に考えるべきだ。ウイルスが濃厚な環境にいたとしても、感染しないものは感染しない。こう言う事が充分に研究されていないのが、獣医学の状況だと思っていい。たぶんすべての獣医が5頭が感染していると主張したはずだ。そして、抗体があると。Yさんもそういわれていた。そんなものではないと、最初の予想通りの結果である。感染とか、免疫とか、ウイルスとか、まだまだ未解明と考えなければならない。こうした大流行こそ、研究を深める機会である。それをせず、ただただ殺処分を急ぐことの繰り返しが、再流行を防げない原因である。いつも、感染の経路は不明確で終わる。
多くの命を無駄に殺してしまった、大事な教訓として、今回の事件を記憶にとどめる必要がある。一つは、危機管理の不十分な国であること。もう一つは、報道は科学的分野に弱いため、自今判断力が不足していること。さらに、経済優先の畜産が巨大な産地形成に繋がり、リスクを高めている事。遠からず、次の感染が起こる。口蹄疫ならまだいい。人畜共通感染症が起こることを想定しなければならない段階に来ている。人間は殺処分できないから、隔離である。その体制はまったくない。WHOではまだ豚由来のインフルエンザを6レベルと主張している。次の流行では6と言う事態を深刻には受け止めないことになる。医師は病気を見る事が出来ても、世間知らずである。今の状況では、個々人が自己防衛以外にないような状況である。一つある。覚悟を決めることである。オタオタしない。これぐらいしか方法がない。