6、 里地里山事業に於ける行政の役割

   

この事業においては、地域住民、県および市行政が、上手く連携をとり、住民および市民の参加を求めてゆく形が、重要に成る。この場合の行政の役割は大きくは2つあ。1つは、法的な制約を、里地里山事業として整理して行くことである。市民および住民が実際には動くとしても、農地の利用には様々な制約が、法律により規制されている。ここをどのように調整するかが、行政の行うべき一番の役割であろう。その手法の前提として、先ずこの地域を条例に基づく、里地里山地域としての指定を行うことになる。しかし、里地里山地域として、指定されたからと言って、今まで行われている、建築資材置き場や、残土置き場、ごみ焼却施設、最終処分場、墓地霊園。火葬場など、現在久野地域に集中してきている。いわゆる迷惑施設が。法的に規制されるわけではない。これをどのように、調整するかが重要な要件になるだろう。また、今般施行された優良田園住宅の適用により、農業地域に住宅が適正に配置されるように、里地里山事業の観点からも、調整する必要があるだろう。

次に考えなければならない行政の役割は、事務局的役割である。行政は公平に住民の利害を調整すると言う意味で、里地里山事業が、地域に広く周知されるよう、広報し、あるいは説明会などを行う必要がある。又参加者の募集なども積極的に行わなければならないが、地域外の市民の参加に対し、どう対応してゆくかなど、今後地域住民の合意を形成する努力を行わなくては成らない。行政は今後作られる事業主体の組織の、事務的業務機能をになう必要がある。具体的には、久野里地里山通信をつくり、年4回程度は久野の住民に配布する。この発行を行政が担う必要があるだろう。編集は住民が行うにしても、行政が発行の責任を持つ必要がある。久野里地里山事業の中心となる組織が整えば、その連絡的業務や、会員の管理運営なども必要になる。これも行政の役割である。久野地区の例えば、フラワーセンター内に、久野里地里山事業の窓口を作る必要があるだろう。

実際の事業の展開においては、久野地域で提案される、里地里山事業の認定を行う事が考えられるだろう。これは、地域住民が作る組織が行う事になるにしても、行政的調整が必要であろう。久野里地里山認定事業としての、統一基準の制定を計り、協力して事業が広がるように進める調整を、行政はしなければならないだろう。引き続き、認定事業が増加するように、行政において担当を決め、分かりやすい窓口を作る必要があるだろう。又、どの事業においても、立ち上げ時の後押しが必要になるので、その補助的役割と、経費負担なども、考えてゆく必要がある。

農の会の事例においては、久野地域10年間の活動においてだけでも、1,1ヘクタールの農地の再生管理が、行われるようになった。足柄地域の小田原以外の地では、10ヘクタール以上の農地が管理されるに至っている。今後の里地里山の形成には、新しい農業者の参入を促す事が、大きな要素に成ると思われる。もし、受け入れ態勢が整えば、特に住宅等の整備がなされれば、更に久野地域への新規就農者の参入の可能性も高まるだろう。その為には、就農者の一時的宿泊施設や、研修施設の準備なども必要と思われる。就農農地の斡旋を初めとして、新規就農者が就農可能となるためには、行政的協力は不可欠である。しかし現在も、小田原は新規就農が大変困難な所になっているため、他の足柄地域に移住する結果になっている。こうした点で、行政の配慮があれば、小田原久野地域は新規就農者にとって、最適な地域となり、里地里山作りには大いに役立つことになる。

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