基準地価と田園優良住宅
7月1日現在の神奈川県内基準地価が公表された。地価というものは、その地域の、その時代を良く反映していると思う。住宅地の平均変動率は3・2%で 1990年の調査以来、17年ぶりに上昇に転じた。商業地は6・5%で二年連続の上昇となった。一方、県内8地域のうち、前年から下落したのは小田原市、箱根町、南足柄市、山北町のみで、二極化傾向が続いている。こうした発表で、農地が言われることはないが。農地は、下落が続いている。山林も同様だ。地価の上昇への転じている原因は、経済の好況によるという。失業率とか、有効求人倍率の、改善を見てもそうなのかとは、思う。株価と言うのも、反映していると言われるが、投機的要素が加わり、不思議な動きだと思う。その点、地価は本音が出ている。
農業分野でも、投機的な側面が強い業種もある。都市が拡大してゆく中、農場は郊外に移転してゆく。例えば、東京農大は、最初渋谷にあり、その後、世田谷に移り、今は厚木にある。農場は富士宮にあり、他の地方にもある。移動のたびに面積を拡大してきた。農業の中でも、花卉・植木・園芸・畜産、などは、土地価格の上昇に合わせて、郊外へ移転してきた。広く、安い農地を購入して置いて、マンションが建つような地域に変わることで、利益を得る。本業の農業より、農地を購入できると言う、有利さを生かした経営だ。農地法が変わろうとしている。その中で、都市近郊農地価格はどのように動くのか。特に、小田原は「優良田園住宅の条例」が作られようとしている。
この条例は49市町村で、運用されているが。首都圏の都市近郊と言う地域で行われるのは、初めての事だ。この法律の精神は、農業との整合性を求めている。所が、現在小田原市が進めるように配慮無く、条例が作られれば、農地の宅地化という側面だけが、進んでしまい。農業の振興という本来の趣旨から離れてしまう。一方地域の農家は、農地で借家でも建てようか、と言うので大半の人は歓迎だろう。農業が成立しないのだから、致し方ない所がある。しかし、行政まで、この地域の農業に対して、何も考えが、あるいは方策がない。諦めてしまったというのも、すごい選択だ。どうしても条例を作るなら、優良な環境を守るために、田園に居住する人、に限定すべきだ。新住民が来る事で、優良な環境が壊れていくと言うのでは、互いに不幸だ。
土地価格の二極化は格差社会の表れのひとつだ。足柄地域が地域として衰退している。人口が減少している。その減少速度も高まる傾向にある。最大原因は地域行政が、地域の方向性を示せないで居る所にある。工業団地を国が奨励すれば、従って、失敗する。住宅需要があるとなれば、住宅の乱開発に道を開く。観光に目を向ければ、それほどの資源でもないお城だけに目を向けて、他の資源に目を開かない。「足柄地域全体は今後衰退するのだろう。」この本音が、神奈川県の衰退地域として、地価が下落している。もちろん地方行政の問題だけではないが、苦戦のなか、開成町は善戦している。その理由をもっと分析する必要がるだろう。