アフガニスタン、ミャンマー、香港で起きたこと

世界の民主主義はわずかずつ前進をしてきた。そしてこのところ逆流が起こるように民主主義は後退を重ねている。時系列的に言えば、ホンコンで始まり、ミャンマーの軍事クーデター、アフガニスタンのタリバン政権。一見別々のことのように見えるが、やはり大きな世界の動きに合わせているかのように見える。
経済で勝利すれば民主主義などどうでも良いという、世界の潮流のがこうしたことをを引き起こしているような気がする。アフガニスタンでのアメリカの努力が無に帰したことは、これからアメリカは世界から引いて行き、その穴を埋めるように中国の影響が強まると言うことなのだろう。
アメリカの建前としての正義の戦いの終焉。そして、中国は内政不干渉と言いながら世界を牽制している。中国は覇権主義と言われるが、何をもって、どういうかたちで世界を支配しようというのだろうか。商業主義的中国が利益にならないことをやるとは思えないのだが。
アメリカはテロとの戦いを標榜し、テロを無くすためとしてアフガニスタンに侵攻した。しかし、20年も関わって結局の所、テロを無くすどころか泥沼にのめり込み、脱出することすらままならない敗北。ベトナム戦と言う無意味な戦争が敗北に終わり、そして、又20年というアフガニスタンの戦争も無意味な戦争で終わった。
武力で武力を無くすことは出来ない。その現実だけは世界中が思い知ったはずだ。戦争で解決できることなど無い。タリバンはバーミヤンの世界遺産を破壊した。イスラム原理主義と言う理解不能な暴力集団がアフガニスタンを支配した。良いこととは思わない。歴史の後退だと思う。
しかし、今目の前で起きているアメリカの敗北という現実。どれほど強大な正義の武力であれ、武力では何も解決できないという世界。アメリカはこの戦争でも多くのものを失ったことだろう。世界は武力に変わる新しい問題解決の道を見付けるほか無い。
あるいは海外で次々に起こる悲惨なことにはできる限り目をつぶるかである。本来であれば、平和的努力である。アフガニスタンには中村哲氏のペシャワールの会の活動がある。今も取り残されている、JAICの活動もある。この努力が無駄であるとは思いたくない。
そして世界では内戦の激化が始まっている。ミャンマーでは市民が武装化を始めている。軍と正面から戦うことになりそうだ。市民の武装化にアメリカは支援をするのだろうか。あるいは、さすがにもう介入はしないのだろうか。
日本の企業はミャンマー軍産に関係が深いらしい。進出企業は今どうなっているのだろうか。どういう言い訳を考え出して、関係を継続するかを模索しているのでは無いだろうか。お金は人の命よりも重い。もちろん民主主義も金次第である。
中国はミャンマーでも軍事政権を支持している。体質を考えれば、確かにミャンマー軍事政権と中国習近平政権は似ている。もっとうまくやれよと言うところかもしれない。国民が自由に発言すると言うことが、国の経済発展にはむしろマイナスだという結果なのだろう。
新自由主義経済と、国家資本主義経済の戦い。国際競争力至上主義がそこまで来ている。経済競争は公正な競争とされるが、まったくそんなことは無い。農産物はその生産経費は、気候風土でまったく違ってくる。国土を荒廃させても、目の前の収穫を目指すプランテーション農業では、継続性が無い。
食料生産はその地域の国土に伴うものであるべきだ。国土を育て、永続する農業を目指さなければ、国の安全保障は無い。そこに暮らす人々の生活という視点で考えれば、問題はアフガニスタンの砂漠化である。内戦どころではないはずである。
先ずはどの国も食糧自給をそれぞれに達成することが、重要である。食料援助では無く、食料が自給生産できるように世界中が協力し合う体制作りでは無いか。アメリカが食料輸出国であるからといって、世界各国の食糧自給体制を壊してしまうことは、世界の民主主義の正義を後退させることになる。
安定した暮らしが成り立つと言うことが、武力主義の圧政から人間が抜け出すと言うことのはずだ。食べるものがないほどの貧困が、暴力主義の登場を許してしまうのだと思う。ミャンマーの軍事政権は自らの利権を重視して動いてきたのだろう。
スーチー民主主義政権が出来ても、一定許容範囲としてきた理由は、日本などの経済支援が増えることと、経済進出が期待されたからだろう。その経済は軍の利権と結びついていた。軍上層部は利益が独占できる間は、民主化を許容範囲としていたのだろう。スーチー政権も軍の利権を一定認めながら、民主化を進めてきた。
ところが民主化の流れが続き、世界からの経済支援や経済進出が進む。経済も好転を始めた。農業生産量なども随分良くなった。ミャンマーは農業国であり、稲作農業が中心である。稲作農業には水利の整備がされる必要がある。
経済の好転によって国民はより民主政権の支持を高める。憲法の改正まで行い軍の経済利権に関与が制限される状況が迫ってきた。軍の利権が損なわれはじめた。軍はクーデターを起しても利権を守ろうとする。これがミャンマーの現実なのだろう。
日本政府は軍産との関係が深い。日本は今でも完全には関係を絶っていない。一番投資の大きい日本は簡単に関係を遮断できない。そこには軍と関係が無いとは言えない投資であっても、ミャンマーの国民のための支援も沢山ある。関係を絶てば、そこに中国が介入してくると考えている。
中国は香港の民主主義を終わらせた。中国政府の支配の中に香港を取り込み、民主主義を完全に封じ込めた。今後香港はどう変わって行くのだろうか。香港は中国の息抜きのようなものではなかったのか。中国政府の徹底した独裁政治がどのように香港を変えて行くのだろうか。
中国が本当の社会主義国になることを願っている。富裕層など存在しない国である。思想信条や人間の能力で人を差別しない国である。世界は資本主義が行き過ぎた競争を認めることによって、格差が生まれてきている。資本主義の限界を越える可能性が社会主義にはある。