新しい高校教科書での領土問題の扱い方

領土問題に関する記述。新しい指導要領では、こう求めている。「固有の領土である竹島や北方領土に関し、平和的な手段による解決に向けて努力していることや、尖閣諸島をめぐり、解決すべき領有権の問題は存在していないことなどを取り上げること」
これが教科書だとすれば、間違った教育を始めたと言うしかない。竹島や北方領土は解決の見通しが立たないことが日本外交の現状である。尖閣諸島に関しては中国が領有権を主張し、日中の最大の外交的課題になっている。こうした現状は教えない方が良いと言うことなのか。教育は現実から目をつぶれと言うことか。
日本は文明開化の明治帝国政府によって、帝国主義教育が推進された。そして、戦争をする国になった。日本を天皇を中心とした帝国と言う歪んだ臣民意識を教育した。いままた、そこに戻ろうとする人達が政府に居ると言うことである。大げさなようだが、それほど時代離れしたことを主張しなければ、自民党では総裁になれない。
まったく驚いたことに尖閣諸島には領有権問題が無いと言うことを、高校生には教え無ければならない日本の高校である。日本政府がそう考えていると言うことは誰でも理解している。しかし一方で世界情勢の観点から考えれば、中国が領有権を主張して、尖閣の領海を侵犯し領土問題は深刻に存在している。
いかに中国が不当に尖閣を領海侵犯しているかを強調したいという姿勢なのだろう。しかし、そうして現実から目をそらす方が良いとは思えない。中国がどう考えているのかを、冷静に知ると言うことがすべての始まりであろう。それが教育である。
現在の尖閣で起きている状況を見て、領有権問題でないと考える日本人はいるのだろうか。中国が無知で不当だからだけではないはずである。日本政府は尖閣諸島を固有の領土と考えているが、中国政府も自国の領土と考えているために、尖閣諸島では領土問題が発生している。日本の外交および安全保障に置いて、深刻で最大の課題になっている。これが教えるべき、当たり前の事ではないのだろうか。
確かにロシア、韓国、中国の教科書と同じレベルの教科書に、日本の教科書
も成ってしまった。いままでの教育が生ぬるかったというのが、政府の認識なのだろう。この姿勢の変化はそれだけ日本政府が、ロシア、韓国、中国政府と同じくらい民主主義から離れ、劣化してきていると言うことを表している。
こうした教育の後退は日本の未来にとって、何の益もないものに思える。もちろん政府は交代どころか、やっとまともになってきたと考えているのだろう。自分の主張だけで世界が出来ていると考えるようでは、これからの中程度の国日本として、世界での立ち位置を模索して行かなければならない国家運営は極めて危ういことになる。
相手の立場を想像する力を育む事こそ教育の目標ではないだろうか。中国は何故、尖閣諸島を固有の領土と考えるようになったのか。何故竹島を韓国は占有しているのだろうか。北方領土にはどういう歴史があるのか。それをできる限り客観性を持って考えられることが重要なのだ。それが日本の教育の方向ではなかったのか。
何故このようなあからさまな偏向教育が横行し始めたかと言えば、アベ・菅政権の人事による抑圧が原因しているのだろう。教科書検定をする委員の人選にあるのだろう。文部省にある教科用図書検定調査審議会のメンバーを恣意的に決めているのではなかろうか。物事を正しく見て、政府を忖度しない委員は選ばない。
こんな答申をするのだから、まともな審議会ではない。政府を忖度した客観性のない審議会である。こうした忖度審議会政治を出来ないようにしなければならない。アベ政権以来実に政府の了見が狭くなり、露骨な審議会の操作を行っている。こうして日本がダメな国の仲間入りをしてきた。情けないことだ。
文部省によると教科書検定制度は、教科書の著作・編集を民間に委ねることにより、著作者の創意工夫に期待するとともに、検定を行うことにより、適切な教科書を確保することをねらいとするとある。国が教科書は作らないと言いながら、政府を忖度して教科書を作らせていると言うことだ。文部大臣が審議会メンバーを決めているのだろう。その結果こんなに歪んだ教科書ができたと言うことになる。
アベ菅政権にしてみれば、良い教科書が出来たとほくそ笑んでいるのだろうが、こんなに視野の狭い教科書では偏見人間が出来てしまうことが分からないのだろうか。分かっているからこそ、こういう教科書を望んでいるのだ。国民は視野が狭い言いなりが良いと考えている。アベ政権は日本を心底だめにした政治だった。
こんな教育でアベ氏や菅氏のような人間が出来たら困ると思っている。思いやる心を育てるのが教育だろう。自分の主張だけしか見えない人間を作ることは教育としては失敗である。確かに明確な自分の考えをも立たなければならない。その上で相手の考えも理解できなければならない。相手を知らないでは話し合いも出来ないだろう。
日本が抱えている3つの領土問題でまるで無能な対応をしている理由が、やっと理解できた。日本の与党の政治家では相手の主張を理解など出来ないのだ。相手は野蛮人であると考えているに違いない。自分たちは天孫民族だとでも思っているのだろうか。
たぶん外務官僚がそこまで無能とは思えないから、アベ菅政権の意図を汲んで馬鹿の振りをしているのだろう。こうして日本という国はなし崩し的にだめにしている。変わるべき野党がないからといっている間に、政治家の視野がひどく狭いものになった。
韓国や、中国や、ロシアの政治家たちと同じような利己的人間に成ってしまった。これはたぶん、政治分野だけではないのだろう。国の劣化を生んでいるのは結局の所人間の劣化と言うほか無い。こんな教科書をまともなものとするようではもうこの国はダメだろう。
ともかく選挙で変えるほかない。今のアベ菅政権を見ていると、選挙で負けたらば、不正選挙を言い出すのではないだろうか。たぶん和製トランプの東上である。そして、それでも動かないとなると、国会侵入が国民に呼びかけられる。果ては軍事クーデターをやりかねないような気がしてきている。まさかとは思うが、それぐらいの政治の劣化である。