良い田んぼの土壌とは

   

 6番田んぼは砂が多い。

 昨日はひこばえ農法を行うことで、田んぼの土壌をよくすることを考えた。引き続き田んぼ土壌について考えてみる。イネ作りという主食作物の優れているところは、4000年の永続性にある。同じ場所で継続して耕作できる農業は他にはない。

 同じ場所で、持ち込まず、持ち出さず、4000年の間同じ田んぼの土を使い続けて、主食の生産を継続できる。これがイネ作りの優れたところである。近代農業では農薬や化学肥料を使うようになって、収奪的なプランテーション農業が経済的な優位性を持って、世界の農耕地を疲弊させてきた。様々な文明がその結果滅びた。

 農薬や化学肥料を投入し続けない限り、農地の土壌条件が維持されない。そうした収奪的農業と、国際競争をして勝てないなら、日本の永続性のあるイネ作りも止めた方がましだというのが、政府をはじめ多くの日本人が考えるようになってしまった。愚かすぎる。

 世界の食糧事情は悪化を始めている。今も貧しい国は飢餓状態で、子供達が栄養失調で死んでゆく。世界の人口増加はまだまだ続きそうだから、食糧危機はさらに広がり、日本にも迫ってきていると考えなければならない。

 経営的にイネ作りが不可能なのであれば、自給的に田んぼを作らなければならない。大きな農業は経営で不可能になるとしても、産業としての経済のサイクルから外れた自給農業であれば、違う合理性で維持が可能だ。スポーツジムに行くつもりで、デズニーランドに行くつもりで、イネ作りを行えば良いのだ。

 自給農業はできるだけ化石燃料を使わない方が良い。手作業で完結していた方が、永続性がある。伝統農業はそういう物であった。何も持ち込まない方が良い。農地が生み出す生産力で、お米を頂く。耕作をすることでより豊かな土壌が生まれる農法を行う必要がある。

 良い田んぼの土壌を作り出す農法でなければ永続性が無い。田んぼの土壌と言っても、一様な物ではない。特に田んぼでなかった場所を田んぼにして、田んぼの土壌に変えて行く為には、土壌を粘土化すると言うことがあるはずだ。

 粘土土壌は微生物が作り出す土壌だ。微生物が増えて、田んぼの土壌の中で生活をする。微生物が土壌を粘土化して行く。トロトロ層を生み出すことになる。田んぼ土壌にするための農法があるはずである。その知恵のが東洋4000年の永続農法の中にあるはずである。

 35年前に山北町の山の上で始めて田んぼを作った。この時は土の上部を60センチほどの厚さで覆っていた、富士山の火山礫をまず取り除いた。その下にあった関東ローム層、いわゆる赤土の山土で田んぼを作った。赤土は短期間に良い田んぼ土壌になっていった。

 この関東ローム層では小田原でも畑から田んぼにする作業を何度か行った。とても田んぼにしやすい土であった。水持ちが良く肥料を充分に抱えてくれる土であった。新しく耕作する土壌であるにもかかわらず、1年目から田んぼとして十分の耕作が可能だった。石が全くない土壌なので、田んぼを作ること自体も苦労が少なかった。

 1年目は田んぼ自体がゆるめになる傾向があったが、2年目以降は普通にトラックターが入ることも可能な堅さになった。もちろん手作業だけなので、トラックターなど使わなかったが。田んぼ向きの粘土土壌と言うことではないただの赤土が、1年目から充分に田んぼは可能と言うことが分かった。

 石垣島の土壌はかなり複雑な印象がある。土壌の中に瓦礫質の部分や粘土層などがある。石もかなり多めである。一番の特徴は水持ちが良すぎるほどで、畦塗りなどしないでも水はそれほど漏れることがない。縦浸透がない土壌と言うことが特徴だろう。

 この土壌でイネがどの程度出来るのかは心配であったが、まったく問題は無かった。むしろミネラル分が豊富で、イネが堅く育つ印象がある。倒伏しにくい土壌と言えるかもしれない。まだ半年の耕作で十分には分かっていないのだが、田んぼ土壌に育て甲斐のある土壌だと思われる。

 湧いてきている水も量は少ないのだが、田んぼにとって良い水である事は分かった。良い水が良い土壌を育てる。通年二反の田んぼを維持することが出来る事は分かった。砂分の多い5,6,8,9,10番の田んぼの土壌が良くなれば、水管理ももう少し楽になるはずだ。

 どこの土壌も腐植がないという印象である。腐植が少ないと言うことは微生物も多くならないと言うことになる。そもそも牧場だった山の斜面を削って、石を取り除きながら、田んぼを作ったのもので、耕作された歴史がない部分が多い。粘土層が出てくるのだが、それは田んぼで作られた粘土層ではなく、本来の地層に存在している粘土層ではないかと思われる。岩石の間から出てくる。

 この細かな土が、田んぼにしたときにかき回され、沈殿をして、田んぼの縦浸透を止めている。田んぼには中央山側は深く削ったため、瓦礫質の部分があり、そこは耕土が浅くしか存在しない。他よりも生育がかなり劣る。両側の低かった部分の盛り土して深くなった部分のイネはとても良く出来ている。

 耕耘さえ出来るのであれば、できるだけ深く耕した方が良い土壌に思われる。深く耕して出てきた石をどれだけ取り出せるかという辺りも課題になる。2期作が終わる12月に、田んぼ中央部山側をできるだけ深く土壌を耕す必要がある。

 通年通水の田んぼでは、腐植質を増やすためには水生植物を増やすことが必要である。アカウククサが増やすことが先ずは目標である。案外に増えないというのが、今のところの印象である。糸条の藻類が一番増える。これは8番田んぼでも発生している。

 アカウキクサは増え始めれば一気に増えるのだろうが、まだその条件が整っていないという印象である。糸状の藻の上にアカウキクサは乗っかっている印象である。浮遊物に乗るようにしてアカウキクサは生活域を広げている。この状態を継続する必要がある。

 土壌を乾かさないことだろう。湛水状態を継続して、様子を観察して行く。2番溜め池、7番田んぼにも少しアカウキクサがある。今後増えるのか消えるのかを見ておくこと。アカウクサが増える条件を見付けなければならない。

 一方アオウキクサは8番田んぼまでどこの田んぼにも自然に発生している。ミズオオバコは1番田んぼには広がった。これがイネにどういう影響が起こるのかも気になるところだ。本来は水田雑草だったミズオオバコだが、今のところではイネの邪魔まではしないように見える。

 一番溜め池にはミズオオバコがほぼ全面を覆い始めている。出来れば2,3,4番溜め池にもミズオオバコが広がることを期待している。溜め池にミズオオバコが広がれば、田んぼ全体に腐植が増えるかも知れない。田んぼ土壌が時間経過で良くなるのかどうか。観察を継続して行く。

 

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