藤井聡太5冠ついにA級に

   


 2月27日の苗代の「トヨメキ」の5週の苗代の苗。日照不足で生育は今ひとつ。でも5週で一応分ゲツが始まったものもある。筋蒔きした部分の方がかなり成育が良く、ほとんど分げつは始まっていた。

 藤井聡太5冠は19歳で将棋界の頂点に君臨している。現在317回戦い、265勝している。勝率8割3分6厘である。過去に無い想像さえできなかった成績である。過去中学生でプロになった棋士は5人いるが、その中でも傑出した成績である。

 19歳7か月は加藤一二三元名人に次いで2番目の成績である。今年度は21年度の対局を終え、52勝12敗となった。5冠を獲得して5年連続で勝率は8割を超えた。 そんな棋士は過去に存在しない。今期のB1級リーグ戦を見ると、対戦相手が、それぞれに対藤井戦に全力を費やして、研究して対戦していることがわかる。

 現状ではすべての棋士が藤井聡太を研究している。将棋界の最高峰の棋士達があらゆる手段を用いて挑戦している。ところがそれでも今年の勝率が8割を超えているのだ。そんなことはちょっと考えにくいことだ。7割の勝率を超える上位棋士さえいないのが将棋の世界である。

 何故それほど負けないのかと思う。ある程度将棋は理解できるので、藤井聡太の棋譜を何度か見ている。よくICも思いつかないような素晴らしい手を指すというようなことが言われるが、どちらかというとそういう勝ち方よりも、当たり前に押し切ることがほとんどである。

 ICも思いつかなかったような手と言われたいくつかの手は、奇手というよりは地味な妙手だ。そんなところで受けるのかとか。まさかそんな戦場の外の手をここで考えるかというようなことだ。おおよその勝ち方は互角で終盤まで行く、そして相手の玉の詰みまでの道筋が1手2手早く見えているようだ。

 終盤戦に入り王手がかかるところまで来ると、自分の王と相手の玉との間合いの読み方が卓越している。相手が寄せてきても、ここで手抜きして攻めに攻守を変えれば、勝てるという見切りがはっきりしている。その見切りの線が他の棋士よりも、一手早い。

 そのために、互角で終番まで来ると押し切って9割り方勝利してしまう。当然、序盤戦で藤井5冠に対して優位を築く研究をして対してくる棋士がほとんどである。しかしなかなか勝機を与えないような指し回しをして、不利と思われる局面をだんだん複雑な曲面に持ち込む。対局者がいくらか有利であるが、明確な勝ち筋が見えないと時間をかけさせる。相手が間違うのを待っているような指し方である。大抵の場合いくらかのミスは誰しもする。将棋はミスをして負けるゲームである。

 相手がわずか隙のある手を指したところで逆転してしまう将棋が、中判まで不利な将棋の半分位はある。その積み重ねの結果、8割を超えた勝率になる。相手に罠を仕掛けて逆転を導くというよりは、場面をどれほど複雑化できるかに苦心しているように見える。

 重要な戦いになればなるほど、負けないというのも特徴ではないかと思う。いま強敵が渡邊2冠である。不思議な勝負強さがあり、なかなか負けない将棋を指す。普通の相手は勝負術で敗れる感じだ。その意味では大山将棋と似ている。

 ところがその一番の強敵渡邊2冠には最近負けない。対渡邊戦の戦略が十二分に立てられているのだ。渡邊2冠を倒すことが、棋界を制覇することになる。夢の8冠への道でもある。以前負けていた、豊島九段も研究の末に、圧倒するようになった。

 渡邊戦のタイトル戦の間の他の棋戦では意外な負け方をしている。大事では無い勝負は一つもないのだろうが、ここぞという所では負けない気がする。やはり研究が充分にあり勝つように見える。研究が充分に出来ない場合、相手の研究に負けてしまうのこともあるのでは無いだろうか。

 コンピューターを利用して研究している。将棋界の中でも最高機能のパソコンを準備して、ディプランニング系のdlshogi ソフトを使っているという。たぶん研究するためにはよほどの速度で反応してくれないと、藤井自身の発想速度から言ってまずいのだろう。

 将棋や囲碁はコンピュターの方が強くなってしまい廃れて行くのかと思いきや、意外にも最近の方が人気が出てきている感じがする。将棋のテレビ中継でも次の手の予測や、有利不利を常に表示している。ところが棋士は案外にコンピュターとは違う手を指すことが多い。

 コンピュターは案外に絶対ではないという事が、だんだんわかってきた。最善手と思われる手を以外に気づかないこともままある。プロならば一瞬にわかるような一手でも以外に気づかない。しかし、人間には見えないような妙手に気づく。

 コンピューターが気付かない手と言うこともあるが、発想が違うという気がすることがままある。コンピュターが指摘した手を指すと、67%の有利さになると予想していても、コンピュターは意外にも自分の間違いをすぐに認めて、その手に対する妙手があり、逆に30%もの不利に陥ると言うことがある。

 コンピュターも読み違いが案外に多いように見える。そういうこともふくめて、先を自分でも読みながら、テレビ将棋を見る面白さがあ
る。ああ指せば良いのにという手を思いついた気がすることがある。コンピュターが見落としていて対局者が発見して指してくれて勝利に進んだというようなときは変な満足感がある。

 将棋ではどちらを指しても同じ局面になるという手がある。手順の違いだけである。ところがその2つの差し手の評価値が異なる。同じ局面に戻るのだから、どちらの評価値も違わないのが人間の考えである。人間はそういうときは余り考えないで飛ばす。

 コンピュターの発想には相手のミスを誘うという考えがない。ところが将棋はミスで勝負が決まるゲームである。コンピュターであっても、詰む場面までは読み切れない。その時に人間なら、相手が混乱する手を指して、ミスを誘導する。ところが、コンピュターは意外にこういう場面で不利に進んでしまう。

 将棋はネットとうまく連動して生き延びた。ソフトの方がはるかに強いゲームなのに、むしろ人気が出てきたのだ。藤井聡太5冠でもゲームソフトには圧倒されるはずだ。それが分かっているのに興味が減らないところがおもしろい。

 藤井聡太はまだ強くなっている。人間相手では頭打ちになるところを、より強いコンピュターというものを利用して研究することで、新しい発想を得ているのだろう。いつまで成長を続けるのかと言うところが、将棋界の興味である。

 藤井将棋がソフトに似ているのは、相手のミスを待たないという事である。最善手を常に求める。そうしているうちに、相手がミスをすることがあるという感じだ。そしてともかくミスが少ない。強かった羽生将棋でも単純な一手詰みを逃したこともある。

 羽生将棋の場合場面が不利になった場合、意識してミスを誘う事があった。谷川将棋は他の人が発想できないような、鋭い攻め筋を見つけた。渡辺将棋の強さは勝負術が卓越している。それぞれに人間臭く強かったのだが、確かに藤井将棋の強さはコンピュター的である。

 - 身辺雑記