富士通が全面テレワークに

   



富士通は、国内のグループの従業員、およそ8万人を対象にテレワークを原則とすることを決めました。働き方を抜本的に見直すことによって単身赴任をやめ、家族と同居できるようにするとしています。富士通は製造現場を除く、国内のグループの従業員およそ8万人を対象に、テレワークを原則とする働き方に改め、今月から勤務時間を自由に選べるフレックス勤務に移行します。自宅からのテレワークと出張で、対応できるようにすることで単身赴任をやめ、家族と同居できるようにするほか、介護や配偶者の転勤などで転居が必要な場合も、遠方からテレワークと出張で働けるようにする方針です。

また、通勤の定期券代の支給を廃止する代わりに、自宅で働くための環境整備や通信費などの補助として、月額で5000円を今月から新たに支給します。働く場所を選べるよう、サテライトオフィスを全国に増やす一方、余分なスペースは減らしオフィスの面積を3年後には今の半分にする考えです。オンラインで会見した富士通の平松浩樹常務は「社員の生活を犠牲にしないような働き方を実現したい」と述べました。---NHKニュース


  富士通は全面的なテレワークを発表した。素晴らしい見識の企業だ。今この文章を書いているパソコンは富士通の4代目のものである。富士通を使い慣れているので、他のものに変えないできたのだが、何か他人事でないようで嬉しくなってしまった。きっと富士通の先駆的な試みは成功するだろう。

 日本の企業にはこうした大胆な先駆性が失われたかと思ったが、そんなことはなかった。こうして思い切った挑戦をする大企業があったのだ。2017年4月より全社員を対象に、自宅やサテライトオフィスなどの様々な場所で業務を可能とするテレワーク勤務制度を正式導入していたとある。

 富士通はテレワークのシステムを販売もしている。その為には当然自分の会社がやってみなければわからないだろう。それで、2017年から試みていたようだ。その実践がコロナによって生かされる時が来たのだろう。企業としての躍進の機会ととらえているのがわかる。

 テレワークが広がれば、当然富士通のパソコンの販売も伸びる。当然企業戦略としても正解である。富士通がテレワークに取り組む事には、富士通の企業として当然のことでもあったわけだ。それをコロナを機会に全面的に取り入れたわけだ。

 果たして直接顔を合わすことがなくて、日本的な合意形成が可能なのか。この辺が一番気にかかることだ。仕事が終わって飲み会で良いアイデアが出るというようなこともないのだろうか。私のかかわってきた、いろいろな会では普段の会話の中から、次の形が出てくるという事が良くあった。これがメールだけではどうなるのだろうか。

 テレワークを効率的に運用するために欠かせない要素は「Web会議」「ペーパーレス」「仮想デスクトップ基盤」富士通では書いている。 例えば、社内のメールシステムをマイクロソフトのクラウドサービスである「Office 365」に変更するのは大変だったとある。つまり、企業の内部データーをクラウド化しなければならない。これが完成していれば、情報漏えいに強くなる。

 テレワークが定着することによって、隙間時間を有効活用できていると体感している社員の割合は85%と非常に高い数字になっている。ワーク・ライフバランスに関しては2人に1人が向上したと感じている。また、東洋経済新報社がまとめた「CSR(企業の社会的責任)企業総覧2017年度版(注1)」では、女性が働きやすい会社の第1位に選ばれている。確かに女性にはより良いかもしれない。

 7月から定期代に代わる在宅勤務費用として月5000円の「スマートワーキング手当」を支給する。光熱費や机の購入などに充ててもらう。出勤が必要な場合や、業務都合による移動の交通費は実費精算とする。通勤の負担軽減は大きいだろう。1時間節約できれば、食糧自給が出来る。

 富士通の働き方を読んでいると、地方に暮らすことが可能になることがわかる。地方に人が分散して暮らすことが出来ることになるだけで、日本の課題がいくつも解決が出来る。大都市偏重の歪みが、いろいろな弊害を生んでいる。地方社会が消滅してしまえば、日本という社会は崩壊すると考えた方がいい。

 もし富士通の方が、石垣島で生活していたとしたら、気っと地域社会にも良い影響が出るのではないだろうか。企業の人たちが地域社会の生活者になるという事は、日本の社会が様変わりするような、良いことが起こるはずだ。農の会にも企業の人が沢山いる。そのことが、会を良くしていると思う。

 日本の地域社会は、様々な人の集合として成り立っていた。例えば自治会とか、消防団とか、そして農業とか。個別には仕事として成り立たなくとも、様々な仕事を重複して行う事で、地方の小さな社会は成立している。道路に倒れた木をどけるなど、仕事ではないが、生活の中で当たり前に行うことで、地域社会は成り立っている。

 地方社会から、企業で働くような人が抜けてしまったとしたら、活力が失われるのは当然のことだ。日本衰退の一つの原因として考えてもいいのだろう。多様な人が地域社会を構成する社会を、テレワークは作ってくれるかもしれない。

 がけが崩れた、川が氾濫したなど、地域からの情報が上がってきて、全貌がつかめる。各所に暮らす人がいて、きちっと連携が取れていて、地方社会は成立している。日本の農業が3ちゃん農業と言われて、父ちゃんが勤めに出るようになる。残されたじいちゃん、ばあちゃん、母ちゃんが支えてきたわけだ。

 それが成立しなくなったのは若者が都会に出てゆき戻らなくなったからだ。特に若い女性が地方の社会から消えてしまった。ただでさえ女性が暮らしにくい日本の社会で、地方にいるのは結構大変なことだったのだと思う。一度は出ていこうと都会の会社や学校に行けば、そちらで結婚して戻らなくなるのは当然だったのだろう。

 ところが、今回のコロナ感染症はどうも都会暮らしは良いだけではない。こういうことを思う人が増えている。仕事があるなら地方の暮らしもいいのではないか。特に子育てを思うと、都会よりも地方の方が豊かな情操が育つのではないかと考えるようになっている。

 テレワーク勤務が良い人材の採用に繋がる可能性が出てきているのではないか。特にテレワークを取り入れることで、優秀な仕事が出来る人が、他所の会社から移籍してくれる可能性があるだろう。故郷に暮らしていいのなら、会社を移ろうという人は多数いるのではないだろうか。

 テレワークシステムが進めば、当然教育や医療分野でも、地方社会の不利が減少してゆくだろう。政府は地方の教育や医療のテレワーク推進のサポートをするべきだ。地方の暮らしの不安である教育と医療が充分でなければ、せっかく動き始めた地方居住の流れが途絶えることになる。
 原発事故を次の社会の転換に何も利用できなかった日本社会であった。コロナウイルスは一度限りのことではない。これから繰り返される災害の一つになる。感染症に強い社会構造を作ること。ぜひとも、コロナを機会に日本社会が変わることを願っている。
 

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