中国が沖縄の領有権を主張しているというデマ

   



 中国が沖縄の領有権を主張していると言うデマを広める人が居る。

 「日本には沖縄の領有権はない!」と宣言している中国が、速やかに尖閣、沖縄を奪うでしょう。だから、軍事の自立は、段階的に行うべきです。北野幸伯氏ーーー引用

 日中間の対立を深めるための誘導である。こういう事をあえて書くのをフェイクニュースというのだろう。もしそういう領有権の主張の事実があるなら、その出所を示し、きちっと分析しなければならない。一体ここでの中国とは何だろう。日本で言えば、北方領土の丸山議員のような発言では無いのか。あれをもって、日本はロシアに攻めてくると言われても困る。

 中国が主張しているのは、琉球王国はそもそも日本国であったわけでは無いと言うことである。琉球王国という独立国であって、薩摩処分がなされるまでは、中国と江戸幕府両国に朝貢する、小さな属国的国家であったという意味である。

 当たり前の歴史認識であり、首里王朝は中国であったわけでもないし、日本であったわけでもない。巧みな外交努力をした独立国と考えるのが、正解である。

 沖縄は文化的は中国の影響は大きい。グスクは中国式の城である。お祭りなどには中国様式が見られる。台湾から移住した人も多い。一方言語的には日本語である。人種的には日本人とかなり近い。日本全体にある混血タイプのひとつと言える。

 もちろん日本にも戦争をして北方領土を取り返せというような、馬鹿な国会議員がいるくらいだから、おかしな人間は中国にも居るだろう。中国の属国だったのだから、中国に返せというおかしな中華思想的主張も当然ある。今の日本もアメリカの属国のようなものだし、朝貢的関係だと見える。

 沖縄を佐渡島と同じ意味で日本であったというのは、間違いである。同じような意味で、北海道に関して言えば、アイヌ人の国であり、アイヌ人はロシアの勢力圏に住む人々なのだから、アイヌの国であった北海道はロシアだという主張をしているロシア人もいる。
 
 中国は沖縄の政治的な独立性を完全に認めた上で形式として臣下のかたちを取るというのが冊封体制をとった。中国政府にそういう歴史認識があるのは当然のことだ。もしその歴史認識がおかしいというのであれば、日本政府は琉球王国の位置づけをきちっと説明すればいいだけのことである。

 日本の右翼的な人間は中国政府の公式見解として、沖縄の領有権を主張しているかのように、冊封体制の考え方をすり替える。仮想敵国中国をいかにも事実であるかのように見せるためである。だから日本政府はこの問題にあえて答えようともしないのだろう。そのために悪質なデマが放置されている。

 琉球王国がれっきとした独立国家であったと言うことを知らない日本人も多数存在するのでは無いだろうか。独立国であった、琉球国を、明治帝国主義の日本陸軍が首里城を包囲することによって、強制的に併合した。琉球処分という形で、帝国主義の明治政府は日本に組み入れたのだ。

 これを中国は抗議をした。しかし、当時の中国には力が無かった。その後日清戦争を行い日本に敗北してしまい、この主張は立ち消えになる。そのために、一方的な日本の占領はおかしい、と言う考え方はある。

 沖縄独立論とか、沖縄のアイデンティティーと言うことが言われるのは、こうした歴史を踏まえてのことだ。日本帝国政府によって歴史を曖昧にしたまま、日本に併合された沖縄。日本の敗戦の結果、今度は沖縄はアメリカの統治下に入る。日本に返還されるまで、20年間の占領下の暮らしが続く。

 アメリカ占領下の沖縄では、独立運動では無く日本復帰運動が起こる。日本復帰前の調査では70%以上の人が、日本復帰を望んだと言うことだ。そして復帰されたことを多くの人が喜んだ。アメリカ軍の支配が終わると考えた事が大きな要因であろう。

 沖縄は復帰したのだが、アメリカの基地の島としての重い立場はむしろ高まる。核兵器の持ち込みまで正式に行われていた。ベトナム戦争のさなかである。アメリカは世界戦略上アメリカの拠点として、沖縄に基地を集中させる。

 沖縄の基地負担の軽減どころか、日本本土の基地負担軽減を、沖縄に担わせたのだ。ベトナム戦争に敗北したアメリカは引き上げるどころか、沖縄をアメリカのアジア戦略の拠点と考え、軍事基地を強化してゆく。

 それが普天間基地という、危険な基地の存在を温存することにつながる。そして、辺野古米軍基地の建設という、途方も無い計画が、住民の反対を押し切って強行されている。この根底には、東京中心主義と沖縄差別が感じられる。

 その結果生まれたのが沖縄独立論である。いずれにしても沖縄のことは沖縄が決めるのが、民主主義のルールである。地域の独立に関しては憲法に明文化されたものはない。沖縄の人で、独立したいという意見は聞いたことがあるが、中国に所属したいという人はまず聞いたことが無い。それは台湾の状況を考えれば当然のことでは無いだろうか。70年以上独立して国家として存在しても、独立国としては認められないのだ。

 日本政府によって、奄美諸島、沖縄列島、八重山諸島と自衛隊基地の強化が進められる。それはアメリカ軍から自衛隊基地へ名称を変えて、共用してゆくと言う考えが、アベ政権にあるからだ。トランプの言う、安保条約の片務的な状態解消策である。

 地域振興策と交換条件で、すでに自衛隊基地を受け入れた島もある。石垣島では住民投票で決めようとしているが、市長と誘致派の議員によって阻止されたなかで、基地建設が強行されている。

 その背景に作り出したのが中国は沖縄に攻めてくると言う妄想に基づく防衛大綱である。中国は軍事力を持って、沖縄を占領してくると言う考え方である。これが仮想敵国中国という考え方であろう。中国が今にも日本に軍事的攻撃を仕掛けてくると言う存在と決めつけた防衛大綱なのだ。

 もし、中国が沖縄の領有権を主張しているとするなら、政府は曖昧にせず、すぐにでも外交交渉をしなければならない。衝突が起こる前に紛争を解決するのが平和外交である。それが日本国憲法に示されている。軍事的衝突を待つような姿勢は納得がゆかない。

 アメリカの様子も変化している。アメリカが一国主義を強調するのであれば、日本は中国と接近する可能性もかなり出てきている。沖縄の基地はその役割が終わる可能性も出てきているのではないか。ともかく今は慌てて動くときでは無い。政府は辺野古基地の建設中断をするのが、外交戦略としても、重要な選択肢である。


 

 - 石垣島