石垣島「あじゅんま」の惣菜店

   

「あじゅんま」の惣菜店。「あじゅんま」はハングルでおばさんの意味だ。

小さなお店ではあるが、とても忙しい揚げ物屋さんなのだ。天ぷらと、鶏のから揚げ。揚げ物は家で作るのは大変である。たまにてんぷらなどやると、あとで油がもったいないことになる。営業中と赤い大きな旗が出ているのは、外から見たのでは、営業中なのかどうか、誰にもわからないからなのだ。それが不思議なことに、中からは良く見えるようになっているらしく、店の前まで人が来ると、たいていの人は車で来るのだが、窓の中から大きな声でやりとりが聞こえてくる。それは喧嘩をしているようなあじゃんまと思われる人の、元気すぎ屋さんの声と、か細いようないつも言い訳しているような声。その合間に子供の声もする。何をしゃべっているのかは誰にも分らないのだが、一生懸命注文の、てんぷらを揚げているための声のようだ。あじゃんまだから、ハングルでしゃべっているのかとも思うのだが、よく聞くと単語は日本文字になる。しゃべり方がハングルだから、ひらがなには起こせない。

ふくろがよんだ。ふくろはさんだ。サンハアリサンノトコロデ、ヨンハオモテサンダヨ。さんはよんだ。等と総菜を箱詰めしている。箱詰めしなければならないほど大量な注文がまいにち毎日ある。次から次へと注文である。そこに私が紛れ込んでしまったので、さんもよんもあったもんじゃない。今日はもう何にもない。何にもないのだから、あげられない。あげられないけど、鶏は少しはある、それなら冷蔵庫から出せばいい。10分過ぎのアラシロさんが来る前に、からあげならあげるよ。いやそうでなくて、もう10分のトウダさんはさっききたのだから、10分はとうに終わった、今は15分のアカミネさんだから、もうなんだかわからないけど鶏の唐揚げならあげられるよ。この揚げられるが売れるというのか、揚げることができるのかはわからない。2時間先になるけどいいのか。いや2時間先じゃなくて、すぐに15分を上げるのでそのついでに上げるので、10分待てば、あげるよ。

その間も大きな小学生が天ぷらをモクモクと揚げている。かなりおおきな天ぷら鍋からは香ばしてんぷらを揚げる香りだ。全くしゃべろうとしない。ひたすら揚げている。大きな小学生の女の子なのだ。小さいといっても年は小学生なのだが、身体はあじゅんまより少し小さいぐらいはある。良いにおいが立ち込める。おなかが減る。いつの間にか鶏のから揚げを注文したことになっているようだ。いつまで待つのかはわからないが、帰るわけにもいかないし、待っていてもいいのやらいけないのやら。よんが3んになるなんて、みればすぐわかる。おかしな袋だ、いつの間にか大きくなったよ。あじゅんまはあまりに忙しくて、私を忘れたのかと思っていたのだが、300円だよ。早く袋に詰めて持っててよ。300円もらってよ。それで出てきたのが鶏のから揚げ7つ。これは最後のせいか、だいサービスだ。

 これは安い。アツアツのうちに持ち帰って泡盛を飲みながら、あっという間に食べてしまった。味はさっぱりしている。あのあじゅんま勢いだと、濃いめの味かと思ったが、実にさっぱり味で悪くない。悪くないどころか、ケンタッキーよりもうまい。油も悪くない。こんな良いお店が、家からすぐのところにある。今度はテンプラノミックス500円というのを頼みたいが、こちらの注文を聞いてくれるかどうかは不安があるが、なんやかんやこの空気のお店はいい。

ついでに書いておけば、写真の敷物は麻布の沖縄の手織りの帯地。燕絣という。二つをつなげてテーブルクロスにしてある。

 

 

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