自然農法で600キロ取りできる稲作法
欠ノ上田んぼ 全景 南側に久野川があり、小高い丘が続く。日照は少ない。手前のように水が所々で湧いてしまう田んぼである。
欠ノ上田んぼの稲作法を書きとめて置く。自然農法でも、有機農法でも稲作は畝取りができる。小田原市久野での3反の谷戸田での20年近い実践結果である。過去5年間の平均収量がほぼ1反600キロである。全国平均は過去五年が540キロである。小田原市は500キロに達していない。
稲作9か条
1、「苗作り」
苗は苗代直蒔きで作る。5葉期の苗で田植えをする。種籾は冷たい川での1か月の浸種を行う。滞りなく、順調に育てることが後々の成果につながる。播種後は、ぼかし土と燻炭を上から蒔いておく。
2、「水管理」
良い水を十分にいれる。良い水とは春は冷たくなく、夏は暑すぎない水。生きた水の流し水が良い。水のタテ浸透も大切である。ざる田は管理によっては良い田になる。水管理は矛盾した判断になる。深水も良ければ浅水も良い。湛水管理も良いし、干しを入れるのも良い。稲の生育を見ながらの細やかな管理が必要になる。
3、「草取り」
草は出来る限り取り除くことが良い。一本あるだけでも収量は確実に減る。トロトロ層。浅い代掻き。深水。流し水。緑肥漉き込み。抑草は総合対策である。
4、「発酵土壌づくり」
田んぼの土壌は、水底の土壌での微生物の活動で出来る。良い水中発酵型土壌になれば、腐敗が起こらず、微生物が稲に栄養を与えてくれて、多収が望める。腐植の増加が重要である。
5、「緑肥栽培」
冬は必ず緑で覆う。晒された土壌は疲弊する。緑肥は肥料ではなく腐植の増加と考える。レンゲやクローバーも良いが、菜の花、麦も土壌分析を行いながら、判断する。
6、「適合品種の自家採種」
自分の田んぼに適合する品種がある。それを自家採取を繰り返しながら、自分の作りやすいものにしてゆく。
7、「疎植、一本植、開帳型」
尺角、1本植は土壌が出来れば、可能になる。
8、「コロガシは土づくり」
草抑えで使う田車で、縦横2回の合計4回の田んぼ土壌の耕転を行う。これで分げつを取る。土壌に酸素を供給することが初期生育には特に重要。コロガシは抑草だけでなく、土の活性化でもある。
9、「天候を読む」
天候を読んで、先を見る稲作を行う。近年の荒い天候をこなさなければ良い稲作は出来ない。
実際の耕作の流れ。年々変化している。
1、立春 海水に田んぼの泥を加え海水選をする。その後13度以下の冷たい川に種籾を種まきまでつけて置く。
2、4月中旬 田んぼ全体にそば糠、そばかす、(米ぬかでも良い)を撒く。1反200キロ程度。緑肥の出来具合で土壌の様子で撒く量を変える。
3、4月中旬 荒起こし、代掻きを行い苗代を作る。場合によってはこの時に田んぼ全体を一度目の代掻きを行い、2度代かきにする。苗床のベット部分だけは丁寧に深く代かきをして置く。苗床はトンボを使い出来る限り均平をとる。
4、4月下旬(田植え5週前)苗床に直播で種を蒔く。自然農法では苗の状態が一番重要になる。昔の苗代が最善である。苗床は穴あきビニールでトンネルで覆う。。苗は5週間育苗する。4.5葉期を目標とする。苗は20グラム撒き以下のばらまきとする。バラ蒔きした後、ぼかした土と燻炭を覆土として上から撒いて置く。良い苗とは滞りなく生育した苗。
5、6月初め 田植えを行う。田植え直前に代掻きを行う。代掻きをしたらすぐに田植えをする。田植え直後にそばかすをミジンコの餌のつもりで撒く。4.5葉期の大苗を、1本植にする。分げつがすぐ来る。30㎝角植えにする。補植を丁寧に行う。
6、田植え1週間後からコロガシを縦横2回づつ行う。コロガシは多いいほど良い。コナギが発芽出来ないようにひたすらころがす。草が出ないでも分げつの為にコロガス。ヒエは8センチ以上の深水にすれば出ない。一度出ない田んぼになれば、その後は浅水でも出ない。
7、水管理は初期は深水管理で進める。流し水管理で行う。徐々に間断灌水に変える。花が咲くようになったら、水は切らさないで土壌を固めるという、矛盾した水管理をしながら、稲の顔色を見て進める。干田は倒さないための必要悪。倒れないなら行わない。乾かない場所は決まっているからそこが乾くような干田をする。また乾きすぎる場所は病気が出やすので、乾きすぎる場所も作らない。
8、稲の姿は開帳型で、太茎、硬い弾力の強い株。大きな止葉。サトジマンで100センチ以下。分げつは25本を目指す。穂は100粒以上平均120粒。
9、出穂3週前にそば糠(米ぬか)の追肥を行う。昨年から取り入れた。
10、穂揃い後1か月たったら水を落とす。水尻を開け、畔を切る。排水を徹底する。水を落とし10日後に稲刈り。
11、秋起こしを行う。緑肥作物の播種を行う。藁を散布する。ソバカスの散布も行う。
12、そばかすは緑肥に肥料を与えるつもりで、緑肥の様子によっては冬の間もう一度そばかすを撒く。肥料は田んぼの耕作をしながら作る。田んぼを堆肥場と考えた方が良い。
13、水底での発酵型土壌を作ることを目標とする。土壌が出来れば、肥料も削減出来て病気が出にくくなる。健全な稲作になる。