田んぼの肥料そばかす
蕎麦6種類 小田原久野の久津間製粉さん 小田原に来て以来鶏の餌として、蕎麦の糠を貰っている。
左上から1、玄そば 2、精粉前の選別ごみ 3、ソバカス(磨きによって出るパウダーを含む。)
下の段左 4、そば粉(藪) 5、そば粉 一番粉(内層粉、更科粉) 6、蕎麦サナゴ砕け 7、この写真にないのがそば糠である。 米ぬかとほぼ同じように蕎麦粒の甘皮を掏り取ったヌカである。枕に入るそば殻も写真にはない。蕎麦の実は複雑な選別を経て粉になる。
田んぼや堆肥に使うソバカスと私が呼んでいるものは、脱穀したままのコンバインから出たそばをまず精粉前に、ごみ取りをする。それが2番の雑草の種や小石などである。その後蕎麦粒自体を磨く。蕎麦のヘタや毛羽などが取れる。これが磨きによって出る、3番のソバカスである。ここには軽いそばのかけら、表皮のはがれたものも入っている。当然、発芽するような蕎麦粒も混ざっている。2番の精粉前の選別で出るごみは、小石や雑草のの種、小さなそばなどが混ざっている。欠けた蕎麦粒もかなり混ざっている。これは鶏の餌に一番いいものである。6番のそばサナゴはそばの表皮のような感じのものだ。軽くふわふわである。これらのものが毎週30袋ほど頂いていた。今は私が取りに行くの月に1,2回ほどになった。鶏の餌には2、の精粉前の選別ごみと写真にはないそば糠を使う。
蕎麦の精粉はお米や小麦の精粉より、かなり複雑で、どの段階でどういうものが出てくるのかわかりづらい。分かりづらいものではあるが、長年使ってきてその使う立場からの特徴は分かっている。水に長時間浮いているものは田んぼに撒くためにはちょうど良い。風上から静かに流し込むと、田面にあっという間に広がってくれる。2,3日すると沈んで田んぼの土を覆う。これが地表で発酵することで、発芽抑制になる。水中に浮遊してミジンコのえさとなり、沈んでイトミミズの餌となる。多く沈み込む田んぼの淵ではミジンコの発生が目立つ。水中に浮遊しながら小さな微生物の餌となり、忽ちに分解されることになる。田んぼの水がミジンコで濁るほどの発生となる。ソバカスは、そば糠よりも早く分解されるとみている。だから、ソバカスを分析して、炭素率とか、窒素分とか、肥料成分が何%という事とは少し違う。微生物の餌となって、微生物が糞や生成物や身体に置き換えてゆくものである。田んぼの土壌生物を大繁殖させるための飼料と考えている。
田んぼでミジンコ等の微生物が発生すれば、それはオタマジャクシやヤゴなどの水生昆虫の餌になる。こうして田んぼが生きものであふれてゆく。オタマジャクシやカエル沢蟹が増えると、それを餌とする水鳥やセキレイやカワセミなどが集まってくる。こうして田んぼは生き物の住処になる。生き物の住処になって田んぼが直接的に収量的に良くなるという事でもない。稲作には直接的には関係しない生き物たちも、循環の輪の中に無数にいることは確かだ。良い循環を作り出すことが、永続性のある農業という事になる。里山の手入れの一つが、田んぼの耕作であるというように、生き物としての人間も田んぼの生き物の一種という事だ。人間が居なければミジンコも困るというお互い様関係。
生き物が増えると具体的には田んぼの表面にトロトロ層が増える。ここでいうトロトロ層は田んぼの水を軽くかき回して煙のように浮き上がるような軽いものを指す。田んぼを代掻きして表面にできるトロトロ層よりもさらに細かい層である。この細かい層がある田んぼは良い田んぼだ。草が少ない。土壌が腐敗しにくい。稲が元気で硬くなる。田んぼの生き物を増やしたいというので、どんどんソバカスを撒き続けると稲が大きくなりすぎる。分げつも増えていいのだが、背丈も高くなりすぎて倒れることになる。ソバカスを撒いて20日目から30日で効果があるとすれば、ソバ糠は田植え前20日に撒いて耕運しておくという事にした。田植え直後にはソバカスを一回撒く。そして7月後半に様子を見てもう一回撒く。これは穂肥ということになる。秋にも撒く。同じものをこうして繰り返し撒くことで、それを餌とする微生物が住み着いてゆくと考えている。