稲水管理、干し田の疑問
今年も田んぼを干すか、干さないか迷う時期になった。稲刈りを10月8日9日として、稲はまだ3ヵ月田んぼで成長を続ける期間がある。6月末までは捕植をしても十分な穂をつける。田植え40日を過ぎて出た分げつでも十分大きな穂をつける。立派な穂をつける分げつを止める訳にはいかない。2回の干しを行う人もいる。中干の期間は2週間で、しっかりと田面に割れ目が入るまでと言われている。その理由は大体3つのようだ。1、稲刈りの機械作業をしやすくする。2、過繁茂、無効分げつを止める。3、土壌のワキを抑え、根の環境を改選する。畑根に変えるという言葉もある。しかし、この3つについていえば、自然農法では無意味とみている。機械が入りやすくするには、むしろ間断灌水に入ってからの水管理である。田植え40日で分げつが平均で20本に達したというようなことは経験がない。過繁茂とか、無効分げつは自然栽培ではめったにない。ゆっくり成長である。土壌が湧くのはロガシで対応できる。
分からないときは、自然の姿をもう一度想像し学ぶしかない。河畔の湿地のような場所に野生の稲はある。春に川が増水してきて発芽。秋になって引いてゆき穂をつける。そんな川の水位の季節変動がある場所であろう。成育のピークで水がなくなることはない。こう考えて中干は迷いながらもやらない。自然の形に近づけたいと考えているので、この時期はむしろ深水にしている。春に田植えしてから、徐々に深水にして、8センチ以上を目標にしている。これから1か月は深水を維持する。理由は稲ががっしり太くなる。よい穂を作るためには深水の効果である。太くてしっかりした茎になっていれば、背丈の高いイネになっても例えば、1,5メートルあった山田錦でも倒れない。サトジマンでもたぶん20センチは標準より背丈が伸びて、高いものは130センチにはなる。畝取りしたときも倒れることはなかった。とすると、コシヒカリの倒伏と中干は関連しているのか。
田を乾かすことで田んぼの土が良くなるとすれば魅力的だ。田んぼに入ることは重要だとは昔から言われる。経験としてもコロガシで入った場所から緑が一気に濃くなる経験をする。入ると田んぼからアブクが出る。春に漉き込んだ緑肥がこの時期に湧いて来る。だから、コロガシと緑肥は組み合わせだと考えている。昨年の藁や緑肥を大量に漉き込んでそのままにしておけば、酸素不足で腐敗してしまう。当然切り返しが必要になる。切り返すことで良い土に戻ってゆく。その為に一度干して酸素を入れるという考えはある。沸きがひどいようなら田んぼは干した方が良いのだろう。しかし土壌のタテ浸透の大きな田んぼで水が下に通り抜ける際の酸素補給で良い発酵に進む。田の草取りや拾い草で田んぼに入るぐらいで十分ではなかろうか。田んぼを干すと土の窒素が発現するというのも読んだことがある。これは意味不明。この時期葉色は濃さを増してくるものだ。自然農法ではとくに葉色は濃くなり、落ちることがない。
葉色が濃すぎて心配するのが自然農法である。最近思うのは、慣行農法の稲の葉が黄色いのは、除草剤の影響ではないかと考えている。干しで窒素の補給という考えは、追肥の問題でもある。穂肥を与えるかどうかである。土壌が良ければ追肥はいらない。水を増やすという事を重視している。水は入水口で早朝の一番冷たいときに20度になっている。20度を超えれば、水を増やしても大丈夫だ。水を出来る限り増やす。水が多ければ酸素補給にもなる。水を通して様々な山の恩恵も受けることができる。山からの絞り水は堆肥の絞り水と言える。新鮮な、豊かな水が行き渡ることでよい穂が出来ると考えている。おいしいお米と言われる地域はたいていがそうした山際の田んぼか、湧水の豊富な場所だ。さて、今年も中干をしないでおこうかという方向に傾いている。傾いては入るが、やはり何か気になるところが残る。