田植え40日からの管理

   

3番田んぼの水口付近 一番遅れている。

田植えから40日、6週目で幼穂形成期に入る。種まきから数えれば、11週目。毎年七夕の今頃だ。これから40日で出穂だ。収穫の為には影響の大きな機関である。それまでの栽培を総括して、これからの40日を計画する。稲のは小さな穂を作り始めている。葉は10枚目から11枚目になっているはずだ。葉は一段と立派な大きな葉になる。厚みや葉の幅がぐんと増してくる。小さな穂を作り始めた稲は葉や茎の成長だけではなく、穂に栄養を集め始める。ここで稲は様子が変わり始める。栽培の考えを少し変えなければならない。立派な草姿を求めるより、見えない穂を大きくしてゆかなくてはならない。田んぼは徐々に流し水管理を強めてゆく。土壌環境がここまでの管理でどのようになっているかで、健全な穂を作り出すことができるかになる。ただ水があればいいのではなく、穂を育てるように転換の合図を送る必要がある。

1番田んぼの水口付近

これが間断灌水である。水位を上げ下げする。常々干しには迷いがあるが、稲の分げつ、葉色の状態により干しも加える。大きくするのではなく、穂を育てる。実際にはこの転換が難しいことで、分からないというのが正直なところだ。もうコロガシは終わりである。これからは拾い草になる。株を踏んで倒すことも良くない。水温が上がるにしたが、分げつが取れるに従い、深水・流し水管理を強めてゆく。田植えから出来るだけの深水を続けてきた。ヒエを出さないという事もあるが、がっちり開帳型の株を作るためには、深水の方が良いからだ。浅水で分げつをとるという考えでは、ひ弱な株になりがちである。可能な限り、条件の許す限り深水にして、がっちり株を作る。生きた水を十二分に与えることが、稲の生育を増進する。水と土が稲を育んでいる。水があるなら十分に水を使わなければもったいない。良い生きた水で稲は出来る。水は流し水にする。常に動いている水の中に稲がいることは、根をしっかりと張り、がっちり株にならなければならない。田植え後1か月を過ぎれば、かなりの流水の中でも耐えられる稲になる。株は10本以上に分げつを確保している。

いよいよ一段と大きな10枚目から11枚目の葉を出す。これが出穂40日前の稲の生理の変化する時だ。根本には小さな穂の赤ちゃんが生まれている。本来であれば、田植え直後から流し水管理でもよいのだが、谷戸田では山からの来る川の水が水温が低いために出来ないでいる。この時期になるとやっと水温も、気温も上昇しはじめる。水の冷たさで生育が止まるようなことは無くなってくる。遅れていた水口の株も生育を始める。流し水が何故よいかと言えば、水による酸素の供給がされるからである。谷戸田の土壌は浸透性が良い。縦に水は抜けてゆく。これを良い効果に利用する。土壌を腐敗方向ではなく、良い発酵方向にするために、タテ浸透の水を使う。水が抜けることで土壌の攪拌をしているのと似た効果を出す。水温が上がり、土が湧くことを抑えることができる。春先に大量の緑肥が漉き込まれた結果がここにきて出る。葉色はさらに上がり、色は穂が出る頃でもさめることはない。この肥料の効き方が、どうしても株の高さにつながる。

そこで干しを考えざる得ない。物理的に稲を倒さないように地面を固めざる得ない。稲が倒れないのであれば、水は何時までも深く入れ続けたい。しかし、それでは田圃は田植え時期よりも深く緩んでゆく。仕方なく干さざる得ないという感じになる。その両方の矛盾した問題点を克服するために、稲の様子を見ながらの間断灌水を行う。また、近年谷戸田とは言え夜温が高くなる時期だ。夜田んぼを涼しくしてやることも意識しておいた方が良い。朝だけ水を入れて止めるという方法は、小田原では過去のものになっているのではないだろうか。今は1番、2番、12番と川側の田んぼを干している。川側は毎年少し遅れてしまうのだが、今年は対岸の木を切ったこともあり、今のこと頃は順調である。干してみてどうなるかを観察してみたい。

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