中干しについて
草だらけに見えるところが、入水の水路でクワイが植えられている。向こう側の錆びトタンのあたりから水が入る。水口はまだすこし寂しい。
一般的な稲作では出穂40日前後に田んぼを干す。地域によっては地域全体が干すことになっていて、黙っていても水が来なくなって干される。特に連絡などない場合もままある。それでいて、水管理料は取られるのだからどうかなと思う。自然農法では干しは基本すべきではない。稲の自然の生理からすれば、川辺の自然の稲には干し田はない。秋になり水が引いて実りを迎える。そして、倒れ、実を落とし冬の間岸辺で春を待つのだろう。自然の稲はわずかしか実らない軽い穂なので、重さで倒れるようなことはない。栽培品種の稲は自然の稲穂よりも、10倍以上に一つの穂に実り、重い。稲の自然な生理から言えば、多収の為の不自然な改良がおこなわれている。そこで稲が自然に従い元気に生育すればするほど倒れることになる。一般にサトジマンは93㎝、1メートルは超えないようにとか言われるが、120㎝にも私たちの稲はなってしまった。自家採取している内に品種特性が崩れた可能性が覗えた。そこで今年は種もみを更新した。
背丈が1メートル以内に収まるようなら、干しはしない方が良いと考える。ただこれが40日前の7月10日で60センチを超え、1メートルは超えそうだとなれば、干しを入れないとまず倒れる。普通の稲の倍も太さのある茎になっていても、地面のぬかるみ状態で倒れる。その意味では分げつが取れようが取れまいが、干した方が後の作業が楽という事になる。ではその干すときにどのくらいの分げつが取れているのが目標かと言えば、16本から20本というところである。水口はこの時期になっても4,5本である。このあたりは全体の犠牲になってもらうしかない。何しろ、全長100メートルを超える小さな5畝程度の14の田んぼに水を回すのである。水口は強烈な流し水である。(流し水管理については次回)そして、稲は倒れるぎりぎりのところまで作らなければ、畝取りは出来ない。畝取りが目標なので、ここの水管理が重要な技術である。
干しは今年はやるべきかと実は考え始めている。長らく干しはやらないできた。そして昨年は秋の長雨でかなり倒された。それで収量は52キロという事になった。地域では稲刈りを諦めてしまった田んぼがあるほどぬかるんだ。天候は極端な偏りが起こることが多くなった。何があっても対応できるようにするには、干しを行い田んぼを固める必要を昨年感じた。特に冬水田んぼなどは干さなければぬかるんだままで乾くことはない。そこで、4,5,6,7,8.9.10.11の系列は干すことにしたい。1,2,12,13,14の系列は別に考える。干した田んぼと干さない田んぼがどのようになるかも見てみたい。いずれにしても干して根に酸素を供給するなどという事は間違った観察だと考えている。空気中の酸素を根が取り入れられるわけがない。水に溶け込んだ溶存酸素が土壌に影響を与えている。その仕組みはよく知らないが、少なくとも田んぼの土壌に供給される酸素はタテ浸透をしている水からが一番多い。
田んぼの土壌を良い方向に持って行くとすれば、干して空気を送り込むという発想より、酸素を含んだ水をどんどん送り込める、浸透性の良い土壌を作ることではないか。いわゆる水持ちの悪い田んぼになれば、酸素は送り込める。減水深が1日100ミリであるという事は、それだけの水がタテ浸透しているのだ。以前測定したときに、24時間で200ミリを超えたタテ浸透だった。代掻きの仕方の工夫や、腐植を出来る限り増やしてゆくことだ。結局のところ、干しをやるかやらないかは稲刈りの作業の問題と考える。水管理では干しをしないとしても、幼穂形成期以降は間断灌水は必要になる。これは稲本来の生理だ。川の水が徐々に引き始め、もう実らせなければならないですよという合図だ。幼穂が出来てくると同時に、10番目の葉以降11,12、と出てくる。そして、13,14,15の稲穂に直接影響する大きな葉が出る。これらの葉が極めて重要になる。下葉枯れが問題になるのは下葉が枯れるような土壌の状態が問題なのであって、12番以下の葉はすべて取り去ったところで穂の大きさには影響がない。
迷いに迷いながら、4番から11番までの干しに入った。7月2日11時から予定では7月4日ごろまで。