ナガミヒナゲシは問題なし

   

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ナガミヒナゲシが最近どこでも見られるようになった。群生する美しい花にもかかわらず、危険外来生物として駆除しなければならないとの主張があり、知識の浅いテレビ局など駆除を進めるように報道していた。どのような理由で危険なのであろうか。強いアレロパシーがあり、この花が広がりだすと、他の草が無くなるという主張らしい。日本にどこかそういう場所があり、困ってでもいるのだろうか。黄菖蒲の扱いと似ている。カキツバタが無くなるという主張のようだが、美しい花が何故嫌われるのか。特定危険外来生物というものがあり、植物には13種ある。それら以上にナガミヒナゲシは雑草化のリスクが高いので、早く駆除せよという主張まである。根拠のないデマに過ぎない。ネットによる弊害の一つである。農にかかわるものとしては、この草が特定外来植物ほど迷惑になるとは思えない。増えてどんな植物を無くすというのだろうか。また増えて人間に対して迷惑があるのだろうか。もう少し自分の頭で科学的に対応しなければならない。これも半可通の自然保護原理主義者の仕業か。

日本の身近にある草花や農業の栽培品種の大半のものは、外来種である。帰化植物である。何か困ることでもあるであろうか。稲が増えて困るとか、小麦が増えて困るという話は聞かない。そもそも稲作や麦作に伴い、数限りない植物が渡来した。そして日本の自然に広がっていった。そして落ち着くところに落ち着いているのだ。杉は日本固有植物だそうだ。ところがずいぶん人間に迷惑な植物になっている。杉が悪い訳ではない。杉花粉ほど、人間に迷惑をかけている植物はないのではなかろうか。太古から日本列島に自生していたものだという。それを日本中の山に偏在させたことが間違えであった。子供にまで緑の羽根募金をさせて、日本中の山に植林して、そして価格が合わないという事で、建築材として切り出すことさえままならなくなり、今やスギ花粉症の元凶となっている。人間が偏在させて、困ることにした植物があるということに過ぎない。

特定外来生物(12種)と要注意外来生物(84種)というものがある。ここには国内由来の外来生物というものもある。小田原周辺ではみかんの雑草抑えと敷き藁に使われている、なぎなたがやなども所によっては要注意植物という事になる。家の周辺にもいくらでも植えられているが、具体的に何を注意すればいいのだろうか。麦作をすると雑草として出てくるが、すぐ倒れるのでカラスムギほどは困らない。麦以外の作物では良い敷き藁になり問題がない。麦を刈るころ倒れてくれれば何とかなる。高山や離島に入り込んで、そこにある固有種と交雑するから危険とされる植物もある。帰化植物に加えて史前帰化植物というものもあるようだ。地球の成り立ちから言えば、ありとあらゆる植物が帰化植物と考えた方が良い。作物は全て帰化植物という事になる。そもそも植物の侵入を完全に防ぐというようなことは不可能である。あくまで手入れの範囲でかかわりを続ければ行えばいいことである。

循環農業とはそういうものである。ありとあらゆるものをほど良い耕作の中で継続させる術である。除草剤で一網打尽というような思想では不可能なことなのだ。一網打尽の思想では、いったんはびこったものはもう手の打ちようがない自然破壊となる。どのような植物でもよい面もあれば、悪い面もある。それはあくまで人間にとってという視点で考えなくてはならない。人間に都合が良ければ作物であろうし、迷惑なものなら雑草である。工場ですべての食物が合成されるようになれば、いま最も困るという植物が有用植物になる可能性だってある。ほど良い範囲で調整して行く以外にない。つまり人間の暮らしが無くなったことに原因がある。周辺の自然とのかかわりの中で暮らすことが無くなった。草刈り一つやったことのない人の方が、多いいのではないだろうか。こういう人が、意味も分からずナガミヒナゲシが危険だから取り除けなどと主張するのだろう。

 

 

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