崩壊のアベノミックス

   

アベノミックスはいよいよ崩れ始めた。消費の低迷である。アベノミックスでも経済は活性化できなかった。アベノミックスはグローバル企業の既得権を擁護し、収益の増加を図ることを直接の目標としてきた。法人税を下げ、TPPを推進し、株価の高値誘導。確かに企業収益は増加を続けてきた。その一方で実質賃金は低迷を続けている。給与を上げられるのは大企業に限定され、賃金水準の2極化が進んでいる。同一労働同一賃金を主張しながら、正規、非正規の格差は極めて大きい。その結果消費はますます落ち込んでいる。円安誘導と株価維持の金融政策も、いよいよ効果がなくなってきたというところだろう。マイナス金利で、ローンの見直しをして返済額が減ったとしても、それが消費に回る状況とも思えない。格差社会の深刻化、年金の破たん。将来の不安がこれほど大きくなれば、将来の蓄えと考える人の方が多いいはずだ。その貯金金利を下げて国債の利息を軽減しようとしている。アベ政治では第3の矢を出る杭にしてしまっている。既存企業の優遇政策なのではなかろうか。

それもこれも、世界経済の渦中に日本経済はあるのであって、崩壊を始めたのは中国経済だけではない、アメリカも危ういところに来ている。トランプ氏に集まる人気に行き詰まりが見える。アベノミクスがお手本とした韓国もかなり苦しくなっている。日本の社会構造の崩壊が現実化し始めている。株価がこれだけ不安定化して、年金資金まで株に投資してしまった政府。アベノミックス崩壊の責任は誰にもとることは出来ない。アベノミクスで一番重要なことは新産業政策だったはずである。新しい世界に抜きんでる新産業の創出であったはずだ。既得権を守る企業に期待したところで無理だと思ってはいたが、新産業に挑戦しようとすら政府はしないでここまで来た。結局のところ過去学習した成長期の経済の踏襲である。円安で輸出を増加しようという事に過ぎなかった。製造部門が国外に出ている大企業が多く、円安が日本の景気浮上に直接的なものにはならない。

実質給与所得は循環しながら増加すると言い続けたが、今のところ増加の兆候が見えない。消費の増加は未来が見えない中で簡単には起こりはしない。マイナス金利で住宅ローン金利が下がり、家づくりが増えるかと言えば、それはあり得ない。家はすでに余ってきている。過去の発想の第3の矢は飛ぶことはない。発想の転換が必要なのだ。消費の増加ではなく、消費の充実である。より充実した暮らしの質への転換である。遠回りのようだが、文化の充実を日本は目指すべきだ。消費文化から充実文化への転換。ゴッホの絵がごみとして燃やされることもあれば、100億円になることもある。価値というものを創出するのは、人間である。私は田んぼが出来ることに大きな価値を見ている。絵を描くことに関しては、何でもする。人間の文化的在り方を探ることだ。人間の暮らしの充実は、まだまだ未開拓である。

同じ映画を見るにしても、より高品質なものを味わえる人間がいなくては、良い映画は成立しない。遠回りのようでも日本は日本の伝統に基づく文化を再認識する事だ。アニメ文化が世界に評価されたのは、絵巻物や浮世絵文化に見られる日本人の美意識である。と言ってもアメリカの幼稚なアニメの方がまだ世界では受けている。日本食が評価されたのは江戸時代の暮らしである。それを外国人は楽しみに日本に音連れる。それらの諸々が第3の矢のはずだ。まだ人間の成長はこれからである。かつて世界に誇れる文化を生み出した日本人の暮らしである。東洋4000年の循環農業によって培われたものだ。手入れの文化。自然と一体化した人間の生き方。いま日本が捨て去ろうとしているものにこそ、日本が再生するカギがある。未来を見失ったときは過去を見直してみることだ。文化の中に価値を見出せば、未来はいくらでも広がってゆく。

 - Peace Cafe