空き家の増加

   

日本の空き家率は異常な状態である。15%近いと言う。10軒の家があれば、1軒と半分が空き家と言う状態である。舟原で言えば、10軒が空き家と言う事になる。ドイツでは1%、イギリスで4%とあるから、日本が異常な状態である事が良く分かる。総住宅数は6063万戸と5年前に比べ305万戸増加し、約820万戸の空き家があるという。空き家が増えながら、家が立てられてゆく状況。「ビホアー・アフター」と言う、家を修繕するテレビ番組を時々見るのだが、新築より、家直しの方が面白い。新築がされればされるほど、家が空き家になってゆく現実。これはなにも過疎地の限界集落の話ではない。都会の話でもある。小田原でもよくある話である。町を歩いていれば、ここは空き屋だなと言う家が目に着く。それでもすぐそばに新しく家を建ている。こういう信じがたい事が起きていると言う事に驚かざる得ない。産業と言うものは動き出すと、利益を求めてうごめいてゆく。

ビフォ―アフターでは、もうダメかという所まで痛みきった家を、見事に再生する。良くやったと言う気持ちで熱くなる。この番組のテーマは、家族の問題を家を直すことで解決する。と言う事らしい。家が治る事で家族と言うものが再生される。家は暮らしと言うものに大きな影響を与えている。私も家直しが面白くて、この舟原の家はずいぶん直した。自分でも直したし、箱根の本田さんという大工さんにも何度も直してもらった。そして今は、暮らしを反映したものになり、家らしくなった。絵が描きやすくなった。絵を描く場所であり、絵を見る場所であるから、普通の家とは少し違うが、気に入った家に段々なってきた。この家は、関東大震災で壊れた後にできた家だ、昭和五年に建てられた家だと言うから、もうすぐ100年の家。まだ大切にすれば100年以上大丈夫そうだ。人が住んでいるという事はそういう事だと思う。家は住まなくなればすぐ崩壊して行く。

空き家が増えると言う事ほど不経済な事はない。空き家のまま置いておく事は許してはならない。政策できちっと対応しない事が良くない。多くのばあい、空き家になる原因は借り手との良い橋渡しがないからだろう。国の税制も悪い所だ。空いている家は誰が住んでもいいという事になっていれば、空き家など初めからないだろう。人間の所有と言う思想の良くない所だ。すべての資産は預かりものだと考えれば、自分の生きている間だけ利用させてもらうと言う事になる。私の今住んでいる家も、いい形で次の人にバトンタッチしたいと思うが、どうなる事が良いのか考えている。後15年くらいはここに住んでいなくてはならない。その後どうすれば次にリレーできるかの問題である。老後の面倒などみてもらいたくもないが、家等の管理だけは、受け継いでもらわなくては困る。

空き家問題は耕作放棄地と似ている。資産と言うものにしがみつく人間が表現されている。その結果受け渡す事が出来ずに、放棄されてしまう。人生の目的が財産に傾いても仕方がないと思うのだが。目的が達成されても、その意味が生かされる事がない。農地が財産だった時代が少し前にはあり、それが財産価値を失った時に、農地の維持をして行く意味を見いだせなくなる。家も同じことだ。家は直して使う使用価値だ。本当であれば、国から自由に借りて、死んだときにお返しするのが一番だ。家は直す事が面白い。そして直す事は、新しく作るよりはるかに難しい。建築家は自分の創作として、新しく作る事が面白いのだろうが、再生し生かして使うという意味を考えた方がいい。建築家が暮らす訳ではない。自分の暮らしを考える人の家は、直すことで自分の家になってゆく。この家はタダである。土地は母が購入して私に残してくれた物である。その事を書いておかないといけない。

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