世界農業遺産

   

伊豆の入江 中盤全紙 俯瞰的に港の入り口を見下ろしている。水面と陸の関係に興味がある。

先日、農の会の仲間の相馬さんが、フィリピンでの有機農業の支援活動の総仕上げとして、日本での実地研修を行なわれた。小川町の有機農家に泊まり込んで研修をされたようだ。帰りにみんなで小田原に寄ってくれて、農の会の見学をされた。フィリピンでも農業で暮らしてゆくという事は大変なことらしい。それでも有機農業というブランド力で、何とか困難を突破しようとされているようだ。こうした支援活動が生きる事を切に願っている。私ももう少し若い時代なら、加わりたいぐらいなのだが。この機会だと思ったので、くん炭づくりを見てもらい、帰ってすぐやれるようにと、参加してもらった。もみ殻や、藁は稲作をやっていればどこでも、簡単に手に入る材料である。中国では案外に使われていなかったのだが、日本の影響で今やくん炭を日本に輸出している。くん炭は土壌改良が出来るという事が素晴らしい。田んぼに行って藁を簡単に堆肥化する事も見てもらった。土を良くするには、腐食を増やすことだという事が伝わっただろうか。

フィリピンではコルディリェーラの棚田群が世界遺産になっている。一度は行ってみたいと思っている。イフガオ族という人たちが2000年に渡って耕作してきた棚田である。2000年同じ場所で耕作できるという永続性こそ、東アジアの永続農業である。見えた方は、そのイフガオ族の人もいた。相馬さんの関わる支援活動はコルディリェーラのお隣だそうだ。やはり似たような山岳地帯だそうだ。土壌が固く粘土質だと聞いていたので、くん炭を使えばと思っていたので、ちょうど良かった。イフガオ族の人は素晴らしいギターで、ビートルズを歌ってくれた。民族の踊りもかわるがわるおどってくれて、日本の参加者も見よう見まねで一緒に踊る事が出来た。とても優しい人達であった。世界中どこでも、里山の暮らしは、やさしい人を作り出すのではないか。以前タイから見えた山岳民族の人も、とても優しい人だった。

世界農業遺産の25地区の内、10地区が稲作と関連している所である。稲作と言うものの優れた特徴を表しているのだろう。永続農業としての稲作の優秀性は際だっている。伝統的農業業遺産と言われる形態を持ちながら、国の食糧の基本となる技術に連なっている。人間の永続性ある暮らしは、伝統的稲作と結びついている。稲作以外の古代文明は途絶えたが、稲作は中国で始まり、東アジアでは2000年循環する農法が続いている。。この伝統的な稲作技術にある、永続性は失っては成らない。日本では2700年培ってきた農業技術である。確かに国際競争力と言うものの前では、淘汰選抜されてゆく運命の中にある。しかし、日本に来てからでも2700年。中国では7000年も継続できた稲作の伝統技術と言うものは、人類として失ってはならないものに違いない。今後世界が混乱に向かうにしても、稲作に戻ればなんとかなる。現在、世界の伝統的稲作農業は、農業遺産として守ってゆこうとしなければ、存続すら危うい状況にある。農業遺産の中には世界文化遺産に登録されている所も少なくない。

GIAHS(注)世界農業遺産とは、伝統的な農業農法を核として、生物多様性、優れた景観等が一体となって保全活用される世界的に重要な農業システムを、国連食糧農業機関(FAO)が認定するものです。新潟県佐渡市が申請した「トキと共生する佐渡の里山」と能登地域4市4町で構成する能登地域GIAHS推進協議会(七尾市、輪島市、珠洲市、羽咋市、志賀町、中能登町、穴水町、能登町)が申請した「能登の里山里海」が、日本初となるGIAHSに認定されました。平成25年5月29日(水曜日)から5月31日(金曜日)に石川県七尾市で開催された世界農業遺産(GIAHS)国際会議において、新たに静岡県掛川地域4市1町で構成する「静岡の茶草場」世界農業遺産推進協議会(掛川市、菊川市、島田市、牧之原市、川根本町)が申請した「静岡の茶草場」、熊本県阿蘇地域1市3町3村で構成する阿蘇地域世界農業遺産推進協議会(阿蘇市、小国町、南小国町、産山村、高森町、南阿蘇村、西原村)が申請した「阿蘇の草原の維持と持続的農業」及び大分県国東地域4市1町1村で構成する国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会(豊後高田市、杵築市、宇佐市、国東市、姫島村、日出町)が申請した「クヌギ林とため池がつなぐ 国東半島・宇佐の農林水産循環」の取組が世界農業遺産(GIAHS)に認定されました。

農水省の専門部会で、日本から新たに申請する地域の選定が、推薦された7地区の現地調査が行われ、審査されていた。結果、申請地として、「みなべ・田辺の梅システム」は養分の少ない礫質(れきしつ)の斜面を活用して、高品質な梅を持続的に生産する地域。岐阜県長良川上中流域(里川における人と鮎のつながり)、宮崎県高千穂郷・椎葉山地域(高千穂郷・椎葉山の森林保全管理が生み出す持続的な農林業と伝統文化)の3つの地域が申請と決まった。世界全体では25地区が農業遺産地域として認定されている。その内5つの地域が日本に存在するというのだから、日本の国柄が農業遺産に表れている。こうした伝統的な農業の形態が、残されている国は経済先進国では極めて少なく、日本は由一の事例に成っている。佐渡、能登、掛川、国東、阿蘇の5地区とも世界に誇れる伝統農業をお残している。日本の国がらはまさに、瑞穂の国である。

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