稲の水管理

   

桂林七星岩 インドの水彩紙 中盤全紙

良い稲作は水管理がすべてである。良い水管理を行うことで良いお米が出来る。水管理は良い土壌と表裏一体である。田植え後は出来る限りの深水管理である。分げつを確保するために、田植え後の浅水管理で分ゲツを取るという考え方もあるが、深水でしっかりとした稲を作ることの方が、重要である。田植え直後から深水することで、土壌のトロトロ層の形成が促進される。トロトロ層が初期に形成されることで、植えられた苗はがっしりしたたくましい苗に成る。トロトロ層が作られる為には、3つの条件があると仮説を立てている。一つ目は土壌に腐植を増やすこと。出来る限りの植物残渣を堆肥化して入れてゆくこと。落ち葉でも、稲藁でも、周辺の雑草でもいい。そして緑肥作物である。二つ目は田植え直後に微生物の餌と成る、米糠などの有機物を入れることである。それを行うためには、ここで十分に米糠が消費される様な、条件が無くてはならない。微生物の爆発的な発生が起きなくてはならない。三つ目は深水管理である。充分な水が常にある状態を作る。8センチ以上の水深である。これら3条件を5年間続ければ、田んぼの理想の環境が作り出される。

深水は、稲の生理からいえば、穂揃いまで続けたいことである。しかし、トロトロになった田んぼのままでは、穂が重くなるに従い、倒伏することになる。そこでどの段階でで土壌を固めるかである。それが中干しと言うことで、幼穂形成期以前に田んぼを固めてゆくという考えがある。しかし、それではゆっくりと分げつを確保する深水管理では、まだ分ゲツが進んでいる状況でもある。また、幼穂が形成され、徐々に大きくなってゆくためには水も今まで以上に必要とする。増して、出穂が始まれば、さらに水が欲しくなる。登熟期までは水を切るどころか、さらに水が必要になる。とすると、ここまでの間のどこかで、一番障害の少ない時期に、土壌を固める以外にない。その意味で中干しは稲の為にはやりたくはないが、収穫の為にはやらざる得ない作業と成る。その為に観察に従った、細かな水管理が必要になる。土壌を固めるぎりぎりの間断灌水と言うことを今はしている。間断灌水は、土壌条件によってかなり異なるが、穂揃い期以降であれば、かなり水を切ることが可能になる。

開花・受精後、子実の外形は、長さ→幅→厚さの順に決まり、その後30日頃まで玄米の充実が進む。出穂後10日~2週間頃が長さと幅が急激に増加しており、この時期を「登熟最盛期」という。また、粒張りを左右する形質である厚さが決定するのは最も遅い時期で開花後20日頃である。(かがわアグリネット)
出穂期にはすでに受粉が始まり、穂揃い期までは水が一番必要と言うことに成る。この時期稲に十分水が行き渡りながら、土壌を固め体という矛盾のある水管理が望まれる。それは野生稲の穂より、現代の品種は数倍の穂の重さがある為である。土壌がある程度乾きそこに新鮮な水が流れ込むということは、酸素をふくんだ生きた水が、根の周囲に到達するということになる。根を生かした状態で行けるかが重要になる。根が長く元気で活動できるための間断灌水でもある。それは止葉の状態に現われる。止葉が厚く、幅があり、長ければ、良い穂が作られるのだが、この止葉が長く活動してくれなければならない。その為には、根が元気であることだ。葉が最後まで緑が残り、光合成していることが重要である。

この為に間断灌水には、充分な観察に従わなければならない。朝一時間水を入れて、止めると言う間断灌水もある。深水まで溜めて、浸透させて乾くのを待つという考えもある。夜の間流し水を入れて、水尻を空けておく、そして朝止めるという考えもある。これは夜間25度を越える時の対応にはいいと考えている。いずれかの組み合わせて、徐々に水を控えめにして、登熟を待つ。しかし、倒れないのであれば、出来る限り最後まで水は入れてゆく。この最後の水加減で、良いお米はできると考えている。倒れるぐらい実らせなければお米は取れない。倒れないようなしっかりした稲を作らなくてはならない。思い出したので書いておくが、冬季湛水を試みたことが何度かあるが、土が緩くなりすぎて、良い管理が今のところ出来ないので、その後は止めている。

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