アメリカの一人勝ち

   

このまま行けば、結局は世界の経済競争はアメリカの一人勝ちになるだろう。自由競争の結論は、強いものが勝つと決まっている。アメリカの主張する論理は強いものの論理だ。能力主義の正義は、強いものが勝利するということである。自由競争と言っても、条件に恵まれたものと、悪条件のものとの競争が、公平な競争の訳がない。田んぼをやっている人なら、誰にでもわかることだ。谷間の谷戸田で耕作するものと、1枚が何ヘクタールもあるような田んぼを耕作するものが、自由競争だから頑張れ、こう言われたとしても条件の違いはいやおうなく存在する。江戸時代の田んぼでは、上、中、下と、田んぼの生産力が分れていた。それに基づいて年貢の徴収があったのだ。場所によってはさらに、上の中が又上下に分かれていたところもあるようだ。自然条件の差を認めたうえで、耕作者の努力を見ようとしている。現在行われている、TPP交渉では世界中の農業条件が、同じという、自然を無視した幼稚な条件での競争である。TPPの内容が見えてきて、農業を守ることはできないことが分かった。政府は約束通り、交渉から脱退すべきだろう。

国内では条件不利地域は農業を止めろ、という政策がすすめられている。そのためにTPPを受け入れるということでもある。TPPを受け入れるには、被害を受ける農業分野に補助金を出すということが、でてくる。農協も条件闘争に変わる為の打ち合わせをしているように見える。結局のところ、日本の稲作農業は企業型の10くらいの巨大組織が、食糧生産をする。この企業化とJAの調整だろう。結局悪条件の所は止めろというか、関係ないという政策である。国際競争力のあるとされる、田んぼだけをさらに政府が補助金等でテコ入れして、機械化、大規模化、集約化、を進めようとしている。それが悪い訳ではないが、そういう転換を出来ない農地を耕作放棄させる以外ないというのでは、日本の国土がとんでもない荒れたものになる。耕作放棄地がすでに、拡大し方策が見えない状況である。集落自体が無くなってゆく状況である。第3の道を打ち出す必要がある。

平等な、正義の、経済の国際競争は、必ずアメリカの勝つという競争なのだ。アメリカという国の条件は、エネルギーに置いても、自然環境に置いても、労働人口に置いても、その大きさに置いても、極めて恵まれている。すでに違うところからスタートしなければならない競争なのだ。アメリカの一人勝ちになる条件は明白である。何故そんな無理な競争に日本が巻き込まれなければならないかと言えば、日本の一部の企業にとっては、自由競争にしてもらった方が利益が出るからである。そうした一部の企業は日本の企業というより、グローバル企業と言われるものだろう。良い条件を求めて世界中に広がり、競争している。すごいことだと思うが、日本の利益よりも、自分の企業の利益を優先するのは、当然のことである。その利益のためには、TPP加盟が有利なだけだ。しかし、グローバル化すればするほど、富はアメリカに集中する。アメリカに売らなければ、有利さが得られない社会。

完全な自由競争で行くというなら、国という枠組みも外すことも目標にすべきだ。ユーロ圏はそういう理想で苦労している。環太平洋の経済協力の最終目標が、国の枠組みを取り除くというのであればまた別だ。弱い都合の悪い部分だけ、各国の責任として、輸出産業に有利な側面だけの自由化である。国家という枠を残したうえで、自由貿易を無制限に行えば、アメリカというダントツ有利な条件国が、勝利する競争である。そのアメリカにへばりついて、何とかおこぼれをもらおうというのが、日本政府の方針である。

 - Peace Cafe