TPPと日本農業
TPPに加盟するかどうかは、日本の稲作農業にとって存続の岐路である。自民党と政府は茶番劇を演じている。農業分野が例外になるなどあり得ないことである。報道では、日本農業の国際競争力が低いのは、農家の努力不足だ。経営合理化や規模拡大を行えば、世界に負けないはずだ。という意見が目立つ。これは、意図的な農業への攻撃なのだと思う。農業でも分野でまるで違う結果になる。野菜や果樹生産であれば、TPPなど関係がない。その関係のない、分野の農家を取り上げて、あたかも日本農業全体が、努力をすれば国際競争力が生まれるという誤解を作り出そうとしている。悪いのは努力をしない農家であるというイメージを形成して、自動車や電化製品のような、輸出産業が有利になることを願っているからである。マスメディアはそういう産業からのコマーシャルでできているからである。このまやかしによって、日本の根幹たる、食糧生産が崩れ去ろうとしている。TPPはそういう大きな曲がり角であることを考えなくてはならない。
食料は自給しなくてはならない。これは国家としての最低限の安全保障である。この点で日本国民は合意できるのか。さすがに、これを否定する日本人は少ないだろう。どれほど米の消費が減ったとしても、まだ日本人はお米を食べる民族である。食料の安定供給の確保となれば、稲作の安定した生産をしてもらわなくてはならない。米の自給をする。この点の合意を確認をすべきだ。このままTPPに突入すれば、米の自給すらできない国になることが明らかだからである。世界の食料はこの先不安定になる。これも説は分かれるが、アジアの人口大国が経済大国になれば、食糧は不足になる。すでに中国ではその兆しがある。気候変動も不安材料である。食料が足りないような状況を想定外とするわけにはいかない。稲作農地の確保は国家の条件として必要なことだ。加えて、ロシアのように、自給的農業を広げて置くことも安全保障である。
農産物は気候や地形に大きく左右される。日本の置かれた環境条件の中で考えるしかない分野なのだ。日本の農家の努力が足りないために、あるいは合理化が遅れているために、生産効率が悪いとすればそれは確かに問題である。しかし、お米の場合日本の地形や環境条件の中で、ずいぶん工夫された農業がおこなわれている。今後どれほど大規模合理化したとしても、国際的米価の3倍程度の価格以下にはならないとといわれている。この計算根拠もさまざまあるが、TPP推進派の人でも、さすがに努力すれば、日本のお米が海外より安くなるなど主張できる人は少ない。当たり前のことで、自動車でも、テレビでも、海外の労働力を借りて生産しているのだ。高い労働賃金。日本の複雑な地形、まとまった農地が少ない点。一毛作しかできない点。永続性のある農地利用方法。稲作の合理化限界はある。
TPPに加盟する見返りに、農家に補助金を出すという政策が予想される。農業補助金は、もらう農家と、もらえない農家との生産コストの格差を生む。特に、企業的参入者が補助金を独占するだろう。いよいよ農家を崩壊させることになる。国家100年の大計を建てることだ。大規模、機械化すべき地域を地域指定する。そこでは、大規模機械化に合理性があるように、道路、倉庫、社会的インフラを含め、合理化農業が可能になる条件を整える。一方に自給農業地域も地域指定をする。これは都市近郊や中山間地になるだろう。住居条件の変更を行い、生産的農家だけでなく、誰もが農地を利用できるようにする。家庭菜園だけでなく、市民的稲作の普及を支援して、耕作放棄される水田をなくす。いずれの土地も農用地として指定された場所は未来永劫変えない。変える可能性が農家を財産家意識させてしまい、合理的な生産者としての意識を奪う。中山間地域においては、国や自治体が農地を所有し貸し出す制度を作る。この制度によって、中山間地の集落の再生を行う。都市とは異なる、医療、教育、通信、新しい社会インフラを作り出すこと。