稲倒伏の原因
稲刈り寸前の小田原では、昨日の雨でかなりの稲が倒れている。昔の稲作では、倒伏は恥ずかしいことだったと聞いている。技量も無いのに欲ばったが為に倒れる。今の農業では、倒れるのを予測して稲作をしているきらいがある。北陸から、東北と稲作地帯を秋に回ると、一面稲が倒れている姿を見る。稲刈りはコンバインで刈る。倒れた稲でも普通に刈り取ってしまう。小石が混ざったとしても、籾すり、精米の段階で、完全に取り去ってしまう。だから、たくさん採ろうとする稲作では、一年の置きに倒れるぐらいは当然計算のようだ。稲刈り前に雨が来るか来ないかで、その辺は決まってしまうので、予想の範囲に入れている。そう言う意味では、少々濡れたお米でも、刈り取りが出来るという点でも変わった。籾乾燥機の発達である。足柄平野でも大きな農家や農協では、自分の所に籾すり乾燥機が備えてあり、そこにもってゆけばきれいに仕上げてくれる。農の会の稲作では、倒伏は最悪のことに成る。この点では全く昔の稲作のままである。
何故、倒伏が起こるのか原因を整理してみる。倒伏には何種類かの形がある。
1、根元からばったりと倒れる場合。
それぞれに原因は異なる。ばったりと地面から倒れるのは、田んぼの土壌が緩すぎる場合である。干しを入れない農法のばあい、土の性質でどんどん柔らかく深く成って行く所がある。これは、地下水との関係もある。いずれにしても、耕盤まで緩んでしまうような事がある。田んぼ全体に怒ると言うより、一部に起こる場合が多い。緩んでも、稲の根がしっかりと生きていれば倒れることは抑えられる。2、根元に近い辺りが折れてしまう場合。
根元が折れるのは、茎が弱い場合と早く枯れ上がる場合がある。枯れ上がる場合は、大体に病気で穂も軽いのに倒れることに成る。く気が弱い場合もいくつか原因はあるが、田植えの時に苗を多く植えた場合、茎ががっしりとしない。また、初期に肥料が効きすぎると、根元近くが一気に伸びて、節間が広く成る。節間が伸びると、当然背丈も伸びて、根元に早くから陽が指さなくなる。その為に、ひょろひょろした苗に成る。日蔭の稲の方が背丈が高くなる場合などだ。
3、根元に近い辺りが大きく曲がり、穂が地面についてしまう場合。
これも節間が間延びした生育の場合が多いが、12俵以上の収量に成り、穂が重すぎる場合もある。稲が立派な生育であっても、株間が狭いと、過繁茂に成り倒伏の可能性が高まる。
対策であるが、干しを入れて田面を固めて行くことが一番である。特に、稲の受粉が完了次第、間断潅水に入り、歩いても沈みこまないような土の状態になれば、倒伏は減る。干しを入れるか入れないかの下限は、稲の成長次第である。苗を1本植えにして、株間を十分に採り植えれば、まず折れ曲がり倒れるような稲にはならない。しかし、分げつが十分に採れない所では、14本以下の分げつでは収量が減ってしまうので、ほどほどの株間にしなけばならない。舟原田んぼや欠ノ上田んぼでは、棚田で水も冷や水なので、25センチ角で、2,3本植えにしている。これで15本から20本ぐらいの穂が付き、8俵ぐらいを目標にしている。これだとまず倒れにくい。品種的にも、祭り晴れは倒れにくい。コシヒカリは初期の肥料で伸びすぎるきらいがある。取れ過ぎて倒れると言うような経験はないのが、今年の家で作った稲は、12俵を越えた作柄のようだが、株自体が極めてがっしりなので、一度も干しも入れていながい、倒れそうにもない。
つまり、稲の根元が太く全体の株を握って、手でぎりぎりぐらいの太さがあり、20本程度。しかもその握った稲が硬く、ギシギシするような、バリバリのもので曲げようとしても曲がらないほどの強さがあれば、倒れることはない。止め葉の状態が厚く、幅広で大きい。穂が25センチの長さがあり、粒数が135粒あるような稲。こうなればなかなか倒れない。それでも倒れる場合がある。それは強い風である。台風の強風に長時間煽られた時にはどうしても倒れる。水を満杯に張るのがいくらかの対策に成る。台風後、風邪で倒れていても、立ち上がることもある。最近の強風は突風のような激しいものがあるので、風ぐらいでは倒れないとは言い切れない。