除草剤とは何か。
線路に除草剤散布、沿線水田200か所で稲枯れ
近江鉄道(滋賀県彦根市)は30日、7月に線路に散布した除草剤の影響で、東近江、彦根両市など滋賀県東部の3市2町の沿線の水田約200か所で稲が枯れる被害が出た、と発表した。
稲穂から国の基準値を超える除草剤成分が検出され、県は被害農家にコメの出荷自粛を求めた。健康への影響はないという。
同社や県によると、除草剤は7月9~31日、委託業者が全長約60キロの全線で散布。今月4日以降、沿線の農家から「稲が枯れた」などと苦情が寄せられた。
同社が調査したところ、稲穂から、除草剤に含まれる「テブチウロン」が、食品衛生法の基準値(玄米)の4倍余りにあたる0・09ppm検出された。被害面積は20ヘクタール以上、被害額は2500万円以上に上る見込み。(2012年8月30日21時43分 読売新聞)
除草剤とはどういうものだろう。どのような仕組みで草を枯らすのだろう。他所の田んぼのことであるが、何故か稲が弱っている部分があり、どうも除草剤の影響ではないかと推測される。それで松本さんに聴いてみると、松本さんのところでは除草剤で枯れたことがあり、撒いた人に謝罪されたということだった。「テブチウロン」は尿素系農薬。防除の難しい雑草類を含む幅広い種類の雑草に効果を発揮するとされる。つまり、非農地用除草剤である。農業に利用してはいけないという、除草剤がある。あらゆる植物を枯らしてしまう系統の除草剤。長く効果が残るものほど利用価値が高いために、残留性も高いとされている。多くの除草剤の仕組みは、植物の光合成の、光エネルギーからでんぷんを作り出すまでの過程の回路を司る酵素に影響する仕組みのようだ。
(1)光合成阻害剤: 明反応の回路である、光合成電子伝達系を阻害させ、細胞内で活性酸素を増加→細胞膜を破壊させる
(2)光色素生合成阻害剤: カロテノイドなどの光色素の合成を阻害させ、白化→枯死させる
(3)栄養代謝系の阻害剤: 暗反応に働きアミノ酸、脂肪酸などの生成を阻害させる
(4)ホルモン作用かく乱型阻害剤: 合成ホルモンによって細胞内のホルモンバランスをかく乱させる
(5)その他(細胞分裂阻害、セルロース合成阻害、SH基の阻害など)>
「新しい農の形から」
稲作の除草剤でも SU剤(スルホニルウレア系除草剤) ヒエ剤 その他 ダイムロン(薬害軽減効果)、ブロモブチド(カヤツリグサへの効果) とう様々である。実際に適切に草を防除するには、使用には、熟達した技術が必要なようだ。一面草で、稲が負けているというような田んぼが、除草剤の使い方で、完全に雑草一つない田んぼに出来る。信じられないほどの効果がある。ジクロロフェノキシ酢酸 (2,4-D)が良く使われている。多様であるだけに、上手く草を押さえることは難しい。農家からは雑草は嫌われている。雑草を生やしていることはそれ自体が、駄農の象徴とされる。しかし、タイミング悪く田んぼの畔の草刈りをすれば、カメムシが行き場を失い、田んぼになだれ込むことになる。あるいは、こうした雨のない炎天下においては、草一つない畑地は砂漠化する。雑草と言えども生やしておいた方がいい場合もある。もし、秋に麦を蒔くとしたら、どのタイミングでどういう作業が適正であるかは、草とも相談しなければならない。
問題は農地での使用されるものより、非農地での利用が許されている除草剤である。こちらは残留性が強いほど評価される。公園、ゴルフ場、道路、公共施設周辺。人件費の節約のため、除草剤の利用が一般的である。冒頭の路線敷向き除草剤という名称のものまで売られているそうだ。こうしたものは残留性が強いほど評価が高い。作物への移行も考えないでいいので、農業用とは違う成分で作られている。農業用の除草剤では、草による選択性がある。作物への影響が無く、雑草だけを枯らす。残留性が減少している一方で、より複雑化した除草剤が開発されている。畑であっても草一本ない状態を、良い状態とは私は思わない。自然界では、植物の循環が上手く行われている。草一本なければ砂漠化してしまう。私の所の畑は草に覆われているが、今も、キュウリなど夏野菜が取れている。草と上手く付き合う方法は、技術と手間暇がかかるが、無い訳ではない。