有機農業研究会の報告書

   

有機農研の久保田さんから、報告書2冊が送られてきた。有機農産物の市場調査、流通の実情調査の取りまとめである。その中で放射能問題がかなりのウエートで取り上げられている。その前段として、全原子力発電の停止要求をしていることが示されている。有機農研の誠実さが出ている。有機農産物にかかわる組織として、深刻なことだと思う。関東東北の有機農産物の生産者は、普通の農業者以上の打撃を受けている。この問題は死活問題である。どうしてもそうした観点からこの報告書も読んでしまう。例えば、有機農研が切り開いてきた、「提携」はこの問題に対し、どういう答えを見つけようとしているかである。現在、この報告書は他の生産者に回したので手元にはないが、消費者と生産者の関係を考える上で、とても良い指摘もあると思う。ここで執筆されている、久保田さんや吉野さんや斎藤文子さんを交えて、話し合いを持てると有意義ではないだろうか。

しかし、残念ながら、この問題をどのように解決して行けるのか。ここに回答が示されている訳ではない。いくつかの事例が出ているか、事例の聞き取りが報告されているという状態。私が感じているような深刻な状況の、印象はない。廃業したり、移転したりした人を聞いているので、もう少し深刻な気がするが。前向きに考えて、乗り切っている人の事例ということか。有機農業の技術的な問題として、どうやって汚染された土壌とかかわって行くのか。まだ除染の問題や、農産物への移行低減法につても、深くは言及されてはいない。これも、趣旨が違うと言えばそうだ。内部被ばくの問題には、触れていない。これもこの報告書の趣旨からいって当然であるが、一番知りたいのは、そのあたりである。さらに言えば、有機農業での放射能の基準値というものはあり得ないのだろうか。JAS有機基準では、放射能汚染に触れていないが、このままでいいのだろうか。こういう深刻な問題にも触れないと、今有機農産物の流通を考えるうえでは、片手落ちのような気がする。

私は養鶏のJAS基準の件で退会してしまったので、実情は全く知らない。有機農研も生産者と消費者の両者が存在する組織である。意見は二分していると思う。より安心安全なものを食べたいという思いの消費者の力が、設立には大きな力になった。藤沢のSさんなどは今回の状況をどうとらえているのだろうか。2分していないのであれば、この問題を避けているとしか言えない。安心、安全な農産物の提供という事が、主題であるように見えた団体が、この困難な課題をどのように乗り切るのかは、学びたい所である。私の個人的な考え方としては、農産物の放射能の許容ラインを引くことだと考えている。例えば、一般の基準が100ベクレルなら、有機基準では50ベクレル。子供には、さらに半分の25ベクレル。というようなラインを引く。その基準以内であれば、喜んで生産者を支えて行く。この関係の構築に両者が努力する。と言っても、根拠は全くない。このあたりが困る。困るがそうしなければ共倒れである。

あしがら農の会は、「地場・旬・自給」が基本理念である。循環する地域の構築が目標である。小田原の農業が危機的な状況に進んでいるのは、放射能の為というより、老齢化による後継者不足ということが一番大きいだろう。その危機的な状況を乗り切るために、有機農業も利用して行こうと考えてきた。しかし、お茶の汚染問題以来、こうして触れることすら止めてくれよ。というくらい、辛い状況である。放射能の問題以来、後継者が育つ可能性は、ますます低くなっている。また、小田原から他に移住する農の会の仲間がいる位だから、小田原で農業をやろうという人も、減少している気がする。有機農研の報告書の中に何か打開のヒントはないか、そう考えてもう一度読んでみよう。

昨日の自給作業:コロガシ2時間 累計時間:72時間

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