第1回東電賠償請求交渉
いよいよ本日第一回の東電との賠償交渉である。覚悟を書いてみたい。普通の農家として普通に交渉したいと思っている。あしがら農の会は放射能汚染によって、大きな打撃をこうむった。畑に対する愛着が揺るがされた。今まで生きるすべてと言っても良い物を注ぎ込んで続けてきた、土壌を育む努力が、一瞬にして無にされた。農薬や化学肥料をを使わず、土壌の力を十二分に引き出す農法を、生き方として模索してきた。今回の放射能飛散は農薬を何百年空中散布される事と同じような、被害を受けたことになる。しかし、そのことを逃れるためには、この地を離れる以外にない。しかし、農の会の理念は、このあしがらの地における循環する社会構造を目指しているものでもある。放射能汚染によって、農の会の活動の根元が、否定された思いである。単純にお茶が放射能汚染され、その賠償を請求するということで終わることは出来ない。放射能で、普通に暮らす人々がどれだけの被害を受けたかということを、東電に認識させなければならない。
もし我々の主張を理解できるのであれば、東電が思い至るのであれば、即座に原子力発電を中止するということである。原子力発電と言うものは循環しない、人間の手に余るものであることは、今回の事故で東電自身が身にしみたはずである。東電は、事故後、福島第一原発から逃げようとした。当事者として、これほどの危機を体験したにもかかわらず、原子力発電をいまだに続けていることは、信じがたい愚鈍である。この事故の実態を把握しているのであろうか。津波で電力が途絶えたために、冷却装置が次々に不能になり、ついには溶融してしまったとされているが。地震直後にすでに放射能の放出があったと言うデーターもある。地震による揺れによって、制御棒による停止が出来なかったのではないか。あるいは格納容器に亀裂が入っているのではないか。こうしたことについて、明確に説明する義務がある。
放射能汚染の原因となる、原子力発電所の事故の正確な説明があって、始めて補償の出発に立てるのだろう。原因が分からないまま、賠償の交渉は成り立つものではない。この事故の原因が明確になれば、安全な原発などないということが分かるはずである。危険な原発を続けながら、賠償の交渉をするというのでは、賠償のテーブルに着くと言うことにならない。まず賠償原因の除去が賠償の出発点になると考えている。加害者が加害の原因を取り除くことなく、交渉に入ることがそもそも矛盾している。即刻の原子力発電の廃止の方向を示す事が、誠意ある賠償を始める姿勢である。この事故によって放出した、放射能すべてを回収することが、本来東電の義務である。日本の国土全体を汚染し、海を汚染し続けている。この回収をどのように対応するつもりであるのか。まったく不可能であろう。不可能と言うことは、日本人全体に「地球を汚染した日本人」と言う、汚名を着せたことになる。この点では日本と言う国家に与えた悪影響をどう認識しているのであろうか。
あしがら農の会の活動は、新しい農的な暮らしの提案である。地域が自給自足的に循環し、物による豊かさではなく、暮らしの日々の充実による豊かな心を取り戻す、活動である。その農の会の活動する足柄平野まで、300キロ離れた足柄平野まで、多大な影響を与えた放射能汚染。このことに向かい合うことが、残された使命と考え、全力で粘り強く交渉をしたい。交渉は一切農の会の方式によって行う。加害者が被害者に対し、申請書類を指定して出すなどと言うことは、前代未聞である。被害者は被害を受けたことを口頭で言えば済むのでなければおかしい。後は加害者に誠意があるなら、自
ら調査すればいいことである。今後どのように交渉が展開して行くのかも、できる限り記録して行きたいと考えている。