鳥と新型インフルエンザ
強毒の鳥インフルエンザの世界的流行は、ほぼ自然界に吸収されてきている。農水省のデーターが正確だとすると、ネパール、中国南西部での昨年5月の発生が最後である。この冬どこかであるだろうかと思っていたが、今の所発生の報告がない。日本では豊橋の弱毒のうずら感染が昨年最後の発生となっている。養鶏をするものとして、実に安堵している。人感染についても昨年世界での年間死者数が、中国4人、ベトナム5名、エジプト4名。13名で以前の100名を超えたような状況から見ると、収束してきていると見られる。累計数で一番の115名の死亡といわれているインドネシアでも、昨年は一人の死者もでていない。インドネシアでは日本で行われているような、鶏を自然界から遮断して防ぐようなことはしていない。それでも納まり方は、防疫を騒ぐ日本と変わらない形で、収まってきている。
一方、豚由来の新型インフルエンザが大騒ぎになったが、こちらもほぼ収束をしてきた。昨年の12月に厚労省から、とても貴重な資料の公表があった。これを良くよく読むと、インフルエンザというものがどういう病気なのか、おぼろげながら見えてくる。とても用心深く書かれていて、コメント部分は暮らしのレベルでは意味がないのだが、データーは深い。インフルエンザの流行について、これほど易学的にデーターが揃った事はないと思われる。どんな形で感染が始まり、感染を広げ、そして収まって行くのかが見えている。結果的に見ると、今回のインフルエンザは毎年起こる風邪の流行と大きくは変わりがない。フランスなどではワクチンを接種する人はきわめて少数派であったそうだ。冷静な判断である。5月に感染の起きた大阪の高校での、8月時点での血清疫学調査の詳細な研究は、興味深い結果がでている。
一定の抗体があるものが半数、160倍価以上で感染し抗体を得ていた者が15、8%。抗体があると確認された人の45%が発症した。抗体がある者でもその後再感染したものが、3名(2,8%)いた。抗体価を160倍以上としているため、抗体価の低い感染者もかなりいると見られる。考えてみれば、自然感染であれ、ワクチンでの抗体でも同じことで、人それぞれである。既に日本人の半数は感染したと思われる。その中で122名の死者数。死ぬ人は特別な身体の条件の人と考えられる。普通の体質の人の場合は感染して発症すらしない人が大半と考えられる。今回はワクチンの摂取が発生時に出来なかった。その結果普通の人の場合ワクチンが無くても問題はおきないという事も確認できた。ワクチンも病気によりけりで、今の所、インフルエンザにワクチンで対応と言う事は、大きな意味がないことがわかる。
感染を防ぐ、これを厚生省も広報している。しかし、いつかは必ず感染する。病気というのは避けられるものではない。そのようにリスクを背負いながら生きていかざる得ないのが、全ての生き物の自然の姿である。マスクをするより、免疫力を高める事である。今回の鳥インフルエンザの方は最悪のシナリオにはならず、徐々に自然の力に溶けこんで来ている。とは言え、今回が幸運であって、必ず、新たな形で人類を脅かす新しい感染症は登場する。多くの場合、畜産由来であると見ておいていいだろう。自然の奥に隠れていた、ウイルスを引っ張り出す事もありうる。ワクチンの開発より、そうした新しい流行を生み出す、原因の方を断つ努力をすべきだ。少なくとも、感染の連鎖を起こすリスクの高い、大規模畜産の禁止は必要である。合成化学物質の畜産での使用も出来る限り避けるべきだ。