日本の方角

   

大上段ではあるが年頭と言う事もあり、日本全体の事を少し考えてみる。「チェンジはしたが、方角が見えない。」ある意味当然の事で、民主党政権が良くて選択したのでなく、自民党政権をチェンジしたかっただけだ。民主党もマニュフェストが選択されたなど、あまり思い込まないほうが良い。政治が定まらないだけでなく、経済も見通しが悪い。格差は広がり。税収不足はいよいよ深刻さを増している。我々団塊の世代は、幸運な世代であった。同世代の人に会うと、必ず、息子さんの事などの話で、こう言う事になる。次の世代は大変なことになるだろうと、多くの人が感じている時代に、いま立っている。朝日新聞の車内広告で「こどものツケで、酒を飲む」というような不愉快なものがあった。不愉快だけどその通りだ。我々の老後は、孫や子が背負い込むことになる。道路や、ダムや、無駄な施設に、すっかり使い切って、蓄えがない。蓄えがないどころか、莫大な借金を積み上げてしまった。馬鹿な親父達である。

増税は急務である。消費税しかない。しかし、それも当分出来ないらしい。財政支出を減らす。これもまた出来ないらしい。国の方向を、相変わらず経済成長神話というところいおいているからである。目を覚ます必要がある。世界の情勢から考えれば、かつての日本のように急成長してくる国が、相次いでいる。あの時代のヨーロッパ諸国は病気に例えられた。しかし、ヨーロッパは長い植民地搾取での公共投資の充実があった。それでも国の位置が落ち着くために40年はかかっている。日本は必要な社会投資も足りない中で、競争力を失い始めている。これは、労働費や技術力もあるが、追い上げる野心が既にない。当たり前で普通の国になってきたのだ。今の中国など、誰が見ても到底普通の国ではない。限界を超えた野心。死んでも働いて、成り上がろうと言うような激しい競争心。

経済だけではない。日本がアメリカと距離を置き、アジアの一国としての道を模索する。これは当然の事で、明治以来の間違った方角がやっと正されているのである。しかし、中国の軍事力の増強。北朝鮮の核武装。ミャンマーの軍事政権。アメリカとの長年の関係の清算の難しさ。正すべきだが、方角が見つからない。これが正直な所だろう。COP15には期待したが、インドや中国の非協力な姿勢を見ると、日本の考えるような、世界環境維持のシナリオは見えてこない。経済も軍事も環境も、方角の模索が続くのだろう。次の世代は、甘い所からスタートして、辛い所で暮らさなければならない。団塊世代は少しづつ生活水準が上がる中で、少々の問題があっても、明日には良くなる。こんな意識が持てた。ところが、意識の方向は、暮らしに苦労するなどない所から、明日の食べ物さえ不安になるような時代に入った。それでいて、周辺には富裕層が不思議な暮らしを見せびらかしている。

産業構造の早急な改変が必要である。公共事業や住宅建設など、建設業に従事する労働力を、違う分野で吸収しなければならない。それは、農業との兼業労働の多い分野でもあるので、農業のあり方を成り立つようにすると言う事を真剣に考える必要がある。同時に輸出主導の経済構造も変えざる得ないだろう。中国、インドと競合するような分野では、そこそこの技術差では、賃金水準から、対抗できなくなる。先端技術産業。環境分野での新しい技術。こう言う付加価値の高い分野に、産業構造は限定されてゆく。それに対応できるよう、財政も方向を絞る。農業分野でも、大きな方角としては環境対応型の農業に絞られてゆく。生産性を上げるというより、地域の環境を守る農業であり、健康を推進する農産物の生産。ここを育てていかなければ、生き残れないいことになる。次世代は大変ではある。しかし、考えを変え、身体を使うことを厭わなければ、より良く生きてゆける道は昔より広がっている。

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