田んぼの見方

   

今度県西総合センターに素晴しい方が採用された。天の配采か。まるであしがら農の会の為に、来てくれたような人だ。久野の里地里山の関係で、農地課の職員として、臨時採用されたそうだ。この辺の県の仕組みは、全く無案内だが、ともかくありがたい。県の農政課主催で「有機農業の推進に何が、必要か。」と言う問いかけの集まりがあった。あしがら農の会としては有機農業技術指導を是非お願いしたいと言う事だった。何かその答えがすぐに出てきたようで、ありがたいやら、嬉しいやらで、何処から何をお願いしたらいいのか、取り止めがなくなる。それぐらい分からない事だらけだし。指導教官が決まった、卒論の生徒のような気持ちか。そういう経験もないから、本当はわからないが、ワクワクしてくる。「どくたーK」氏である。どうも専門は田んぼの生き物のようだ。田んぼの生き物は、きりがないくらい面白い。

先日も、県博の方のどくたーKに、指導してもらったが、我々は県の指導については、全国でも希に見るほど恵まれている。田んぼのいる不思議な虫の名前が、分かるだけでもうれしいのに、その虫の生活ぶりが教えてもらえるなんて、幸運としか言いようがない。しかも今度見えたドクターKはその生き物生態を観察する事で、田んぼの世界を全体をも見通そうという人だ。稲葉さんの民間稲作研究所に居られたそうで、たくさんの田んぼを見てきているようだ。熟達の名人達の田んぼを見てきて色々の事を感じてきたようだ。やはり、ワザの世界を見たようだ。再現性の安定した、技術化できない世界を、どのような視点で見てきたのか。この辺りが面白い。100人百様の世界の、何処に共通項を拾い出すか。そこに田んぼの生態学ともいうべき世界が、広がっている。

まごのりさんが、打ち合わせで訪ねる調整をしてくれたら、早速見に来てくれた。そして、田んぼに入って、トロトロ層の形成の違いを指導してくれた。イトミミズと、ミジンコは、違うのだ。違う虫なのだから、当たり前か。当たり前なのだけど、似たようなトロトロ層に役立つ虫位の事しか見ていない。出てくる時期も、タイミングもあるのだそうだ。彼らの餌の事を言われていた。このステージがどう展開するのかぐらいは、良く見て置く必要がある。と言っても、この見ると言う事は至難の業で、観る、診る、視る。視点が無ければ、何も見れない。視点がなければ、ただの虫。田んぼワールドの全貌が見え出せば、面白い。面白いだけでなくて、すばらしく役に立つ。今日コロガシを入れるか、明日乾しか。こう言う事は、全部その世界が見えていなければ、本当は出来ない。朝転がすか。夜転がすか。水廻りはどう見ればいいか。朝だけ入れるということはどう言う意味か。慌てない。

それが一枚一枚の田んぼで、異なると言う事だろう。その中で手繰り寄せ、つむぎだす、共通項。田んぼに水のまわらない所がある。理屈ではそういうところはダメと聞いているが、この田んぼでは良く出来るのだが、その理由をきいてみた。水温であろう。この田んぼでは、あれこれ問題があっても水温を上げることに力を注ぐ事が、当面一番の対策だろうとの事。つまり、処々の条件が悪いはずの所が、水温が高くなって。この唯一の条件で、他の悪条件を乗り越えて余りある。なるほど水が停滞しても、腐敗しないくらい浸透している。浸透しているから、やはりコナギは少ないのか。もう少し観察がいる。良く見ること。見ているようで少しもみていない。コナギの多い場所の土に違いがあるか。浅いところと、深いところではどう違うか。深くなった代の場所はどうなっているか。見ているようで見てないものだ。

 - 稲作