続々・小麦の価格
火曜の集荷場では、みんなで小麦の話をしてみた。湘南小麦プロジェクトの話しをどう考えるかを聞いた。小田原で生産者がいるとすると、小台の方で、2反ぐらい小麦を作った人がいたから、その人ではないか。と言う事だった。松本さんの畑の傍だそうで、いつの間にか小麦が無くなり、田んぼになっていたそうだ。平塚の方の話は誰も知らなかったが、おおよその感じで、田んぼの裏作としてやっているのではないか。1町4反で、機械を購入するというのは無理だろうから、コンバインや、乾燥機をお米と連動させているはずだというのだ。確かに平塚には広い田んぼ地帯があるから、あのあたりでお米の裏作として、やっているといると想像できる。裏作で作るとすると、私たちに可能か。という話になった。稲の方が田植えを控えて、慌しい時期に小麦の収穫が廻ってきて出来るかどうか。田んぼには除草剤を使うしかないだろう。藁の持ち出しはどうなるか。当然化学肥料での栽培になる。稲の苗は購入と言う事だろう。色々の意見があった。
1町麦を作って、3トン。小麦粉にして、2トン。それで1キロ600円ならば、120万円。お米を1町作ると、4トンで240万円。私たちのやり方でお米を1町作れるかどうかは別にして、営農の可能性はある。小麦が、800円なら、160万で。経費は別にして、400万円となる。その後、農総研に問い合わせてみた。普及部長の山田さんという方が、農の会の事や私のことなどもご存知で、平塚の事例について詳しく教えてくださった。もう20年の活動なのだそうだ。しかも、それは裏作としての小麦はそのお二人が、作付けを止めなかっただけだと言う事だ。パンの為に新しく始めた事ではなかった。場所は平塚の真田神社の側だそうだ。和田傳氏の舞台となるあたりだ。作付けが、実に工夫されていて、「麦、大豆、休み、稲、休み、稲、麦、大豆、」と繰り返すそうだ。ひとつの畑で考えれば、3年に1回麦を作る。そういう約束がある。約束の意味は良く分からないが、奨励金や耕地整理などの条件としてなのか。
要するに補助金があると考えていいだろう。栽培法は一般的な作り方だそうだ。麦を作って、一番の困難は播種後のスズメ、ハトの害。これはアンデスというカルパー剤で対応する。堆肥とかは入れない。大豆の残渣などを鋤き込む。品種はニシノヒカリ。ただし、この地域に適応する品種なら、400キロ採れるが栽培が難しいので、300キロは超えるぐらい。小麦をやると、コンバインでも、乾燥機でもすぐ傷む。梅雨時の刈り取りが、災いする。パン屋さんとの間で、もし不作の時は、収量補償がある。20年の間作付けは増えるでも減るでもない。同じお二人が続けているということらしい。小田原の人の事もご存知だそうで、試作したと言う事らしい。どうもそうした麦がそもそもあって、その麦を行政が、高橋さんというパン屋さんとを結び付けた。価格は言えないという事だが、私が今考えているような価格とは、かけ離れている。裏作でやるのは、今の農家では出来ないぐらい大変だ。と断言していた。3年に1回麦と言っても、農地は借りて、毎年地域のどこかでやる。同じ農地での裏作でないから可能だといわれていた。
小麦は日本中何処でも作っていた。それが、だんだんに作られなくなった。もちろん価格の問題もあるが、専業農家というものが、無くなったから、裏作までやるなどという人が、居なくなった。裏作でやると言う事はもう今の人には無理と考えた方がいい。山田さんはこう断言された。平塚のお二人は、間違いなくすごい、スーパー農家人だ。地域を支えると言う事を含め、頑張ってくださっている人に違いない。お二人だけではない。久野にもそうした方が居られるから、はっきり想像出来る。しかし、補助金も無く、そういう小麦の作り方はやりたくても、次の人が出てくる可能性はない。裏作が不可能としても、食糧が不足すればやるしかない。そうなったときには、既にその技術が消えている。農業に石油が使えなくなり、食糧輸入が出来なくなるとき。どういう手順で、江戸時代の農家はやりきっていたのか。今のうちに試してみるのが、私のすることのような気がしてきた。