あしがらの水
2016/08/10
今月のピースカフェは「あしがらの水」を特集する。あしがらの魅力の第一は水が豊かなこと。これは暮らしにとっては変えがたくありがたいことだ。舟原にも、湧水が幾つかある。和留沢の方に向かって更に豊かな湧水がある。井戸を掘れば、素晴しい水がでる。100メートル前後の丘陵地に水が豊かにあると言う事は、人が暮らしが楽だと言う事だろう。縄文期から、絶え間なく人が暮してきた地域だ。自給自足をしてゆこうという者には、またとない地域だと思う。一日2時間で食の自給ができる。ということは、あくまであしがら地域の水があっての事だ。その地域の生産力はほぼ水の量と言ってもいい。それは食の基本と成る農業は当然の事だが、工業も水あっての事だ。これは昔からの水車の動力利用もそうだが、近代工業でも、水が生命線のようだ。足柄平野にどれほどの水があるのか。こんな研究もあって、ピースカフェには掲載する予定だ。
足柄平野には富士山や丹沢に源流域を持つ、酒匂川が中央に流れる。それを囲むように平野が広がる、西には箱根、北に丹沢、東に曽我丘陵そして南を相模湾。いたるところに、湧水があり、自噴する井戸も酒匂川周辺に多い。地下水は豊富で、井戸はどこでも、掘る事ができる。平野部の酒匂川周辺では、伏流水が豊かで、独特の生態系が形成されている。私の暮す舟原は箱根火山の外輪山の東斜面にある。斜面は急峻で、そこを流れる川、久野川は滝の様な川だ。かつては山女の固有種がいて、釣り人が多数見られる。舟原には、横井戸が多く見られる。古い家では、自分の家の裏の山に、横井戸を200メートルほど掘り進んで、いつでも湧水が使えるように引いてあるのだ。家の中に流れのある豊かさは、他に変えがたい潤いがある。そうした家は大体に400年ほど歴史を遡って同じ場所に住んできたらしい。
養鶏場には100メートルの深井戸がある。この水がまた素晴しい。足柄平野の中で私は一番においしいと思う。我田引水的だが、そうは外れていないと思う。鶏がこのいい水を飲める事はありがたいことだ。生きた水を飲むと言う事は、人間以上に動物には影響する。水が素晴しいのは箱根から大きな岩清水だからだろう。加えて上部に畑がないからだ。井戸水は化学肥料の影響を窒素分として反映する。養鶏場に行った時に汲んできて、お茶などを飲む、これは格別な味だ。試しに飲んで見たいと言う人は、峯自然園に行くと同様の水が飲める。峯自然園は日時計を工作したりできるので、子供の夏休みには絶好の場所だ。小田原に残った自然の川で遊べることも、嬉しくなる。
暮らしの方が変わって、水はいつでもどこにでもあって当たり前のようになった。しかし、こんなに水が豊かな国は、世界では希なことだ。そしてこの水のよさを守ってゆく事は、なかなか困難に成っている。水源地帯に最終処分場をつくろうとか、焼却場をつくろうとか。水を大切にしない、地域計画がすぐに立てられる。確かに、迷惑施設を目立たない、反対の起き難い、買収費用も安い。山奥に作りたいという行政の考え方も分からないではないが。結局は水を汚すと言う事は、暮らしを蝕むと言う事になる。水が汚れれば、土が悪くなる。土を汚せば、食べ物が駄目になる。あしがらの一番の財産である水を、大切にしてゆくには山を豊かにすることだと思う。山を豊かに出来るような、暮らしをしてゆくことが、永続性のある暮らしだろう。