安倍総理大臣の農業政策
国の最も基本となるものは食料だ。食料がなければ、戦争も起こる。平和に暮す、基本が食料だ。その食料を、60%輸入している国、日本は実に危うい状況にある。瑞穂の国も、いまや美しいとは言いがたい。そこで、新総理の農業政策に着目して、発言をたどった。殆ど無い。小泉前首相に、次いで農業音痴が、総理になったと言う事のようだ。
それでも2つだけ見つけた。愛媛の大規模水田の視察をした。北海道の街頭演説で総裁選での農産物輸出の奨励についての発言したそうだ。いずれも付け焼刃的で、適切なコメントが無い。一方、民主党の小沢代表は100%食糧自給を打ち出している。これもどうも参議院選挙向けに、打ち出したのではないかと、見られないことも無いが。つまり、今度の参議院選挙は、1人区が勝負になる。そこで農業地域が問題だ。農村に力を入れた政策をどちらが打ち出せるかが、選挙対策で問題となっているのだ。
安倍首相は、「美しい国・日本」をかかげ総裁選で勝利した。しかし、安倍氏が訴える「美しさ」とは全くはっきりしなかった。歴史認識もあいまいにしてきた、A級戦犯の戦争責任すら、何を言っているのか皆目理解できなかった。靖国神社に行ったけど、行ったと言わないのが、考えだそうだ。再チャレンジについても、「格差を固定化しないための再挑戦」であるとしていたが、現実にある格差についてはどのように考え、挑戦さえ出来ない状況にある人について、どう考えるのかはっきりした発言はなかった。政策を曖昧にする為に、美しい国を持ち出したと考えたほうがいい。
構造改革による「負の面」に対し、新保守主義的に、例えば共同体の再建や家族の意義づけなどを打ち出し、また、日本人=美しい国というアイデンティティに基づく、ナショナリズムの強調といった方向になっている。要するに、小泉構造改革の「負の面」を再チャレンジできる社会という、政策を掲げつつ、構造改革そのものも推進して行くという矛盾に満ちた政策体系になっているのである
小泉首相も一個2000円のりんごを輸出しろと、自由競争を強調した。安倍首相も、農業者にも再チャレンジできる、環境を提供するので、頑張って世界と競争しろと、言っているわけだ。しかし、近隣人口爆発諸国の、現状を冷静に考えてみるべきだ。すでに、中国は燃料の輸出余力はなくなった。食料が輸入に転ずるのも、そう遠くない。中国人とインド人が、アメリカ並みに肉を食べると。世界の食料は、今の42倍必要と言う計算があるそうだ。
食料を自由競争すべきと考えるのは、労働力を自由競争すべきということであり、結局は軍事力を競争すべきと考えること、同様のことになってゆく。食料自給が国の基本でなければならない。これはどのような政策を用いるとも実現しなくてはならない。それが、平和な国を作る基盤になる。食料は競争してはならない。競争しなくても、必死に作るのだ。
再チャレンジしろと言う事は、負け組みへの呼びかけだろう。競争に加われといっているわけだ。しかし、競争には常に負けがある。負けたものが居ない社会と言うのは無理にしても、競争に加わりたくない者がいることを認められる社会の方が、いいに決まっている。