鶏種の作出

   

中川昭一農相は「少数の外国に(鶏の)原種を依存しているのはリスク要因になりかねない」と述べ、日本独自に優良品種の開発を進める意向を示した。
 採卵用、食肉用に日本で飼われている鶏の大半は、海外から輸入したヒナを育てて交配した子や孫。優良な鶏の原種は欧米企業数社が流出しないように押さえているため、日本は輸入を続けるしかない構造だ。05年の生きた鶏の輸入は約100万羽で、輸入先は英国が約37万5000羽(37%)でトップ。フランス、米国、ドイツ、オランダが続いている。

 ところが、欧州で鳥インフルエンザが広がり、フランス、オランダ、ドイツからの輸入が相次いで停止。4月29日には英国からの輸入もストップし、輸入の約8割が止まってしまった。

「発酵利用の自然養鶏」を書いた時、私は3つのことを予測として書いた。
1、ワクチンで対応できない鶏病の流行。
2、有機畜産の世界基準が出来るに従い、卵の輸入が始まる。
3、種鶏の輸入が出来なくなる時が来るので、独自品種の開発を急ぐ事。

私自身にも恐ろしい事だったが、三つともが予測どおりだった。そのいずれに対しても、これも予測どおり、国は何の対応もしなかった。出来なかった。私のこの予測を立てた、根本とした考えでは、この先、日本が迷走飛行に入ると言う事。だから、不時着法を提案する事を考えていた。

問題は独自品種の作出である。いよいよ、輸入できなくなってから、取り組むと言う事が可能なのかどうか。農水省が、本当に品種の作出を理解しているのかどうか、怪しい気がしてくる。今からでも、気付いた点は悪くないのだから、以前国がやっていた、レグホーンとロードを交配して作っていた、国産クロスとよばれていた桜卵の二の舞にならなければいいのだが。

昨日も、長く養鶏を群馬で取り組まれてきた、Oさんから電話があった。鶏が突然卵を産まなくなったという相談。病気ではないという。エサや、状態を一通り聞いてみて、不自然な事何もない。Oさんのようなベテランが、私に聞いてくるというのだから、通例の事でもない。春には90%産んでいたのが、突然、殆ど産まないと言うのだ。ここで、鶏種の事に思い当たる。輸入できなくなり、国内で自給したのだ。それで調子が狂った。同じ飼い方では、エサ食いも、サイクルも違うはずだ。

種鶏の輸入が止まり、鶏が変化してきているのだ。10年前、アメリカの世界戦略で、種の独占と言う事が盛んに言われていた。世界中から、有用、無用を問わず、種を集めていると言う話だ。当然動物にも及び、世界各国、種鶏の保存と言う事が行われたはずだ。
日本と言う国は全く特殊な国で、こうした基礎的な努力は、放棄している。私の知る限りでは、種鶏を集めていると言う話は聞いた事がない。そんな悠長な事に、目を向ける人が、国の機関にいるはずがない。
そうした事はやると、研究費を趣味に流用している。こうした苦情が出る。

この間、主に行政関係の鶏の作出といえば、肉用の何とか地鶏の作出である。それを地域おこしに使えるとか、地鶏と言えば有利販売できるとか。土台地鶏のナンたるかも、確定しないまま、こうした事を行ってきた。一応仕事だから何かしない訳にいかないので、やっていたのだろう。
鶏には品種の登録制度すらない。特許とも何の関係もない。こうした中で行っている事、事態が、おかしいのだ。行政が整えるのは、先ず、制度を整える事だろう。

問題はどうやって、日本独自の種鶏の作出を行うか。ここに目を向けたのが、あまりに遅かった。日本国内にいる鶏から作らなければならないことにある。
何とか、短期的に考えればそれなりの鶏は、私でも、可能だ。問題は、その永続性と、状況の変化に対応できる能力のある鳥ができるかに在る。
作出の能力のある研究者がいないと言う事もある。国がそうした基本的な研究者の努力を、拒否してきた。本来、こうした基礎研究は大学が行うのだろう。しかし、産学協同とかが叫ばれる割には、大学での基礎研究の意味が捉えられていない。
農業系の大学で、そうした保存がされているとも聞いていない。

企業はそれなりにはやっているらしい。農水が、企業から、種鶏を出させる事ができるのか。これもおかしなことではあるが、日本的に可能なのかもしれない。
作出で一番大切な事は、大きな目標の立て方である。どんな鶏種を作り出したいのかである。まともに出来ないとなると、クローンやら、遺伝子組み換えやら出てくるのか。これまた心配な事になる。

いずれにしても、鶏に興味がある私としては、これからどのような事が起こっていくのか。着目してゆきたい。

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