批評と言う事
水彩人では徹底した相互批評を行います。展覧会の最終日は会場を閉じて、同人のみの批評会を行います。前持って、各自が他の同人の作品に対し批評を文章化し、全員に配ります。そこには、5段階評価で、同人として共に並べたくないと言う×から、水彩人としてこうした作品を推奨したいと言う◎までの採点も入れてもいい事になっています。×印が過半を超えて、2年連続であれば、退会と言う事の約束になっています。
今までにはそうしたことはありませんでしたが、一年で×印が多く、退会した例もありました。
なぜそこまで厳しい相互批評を行う事を、会則で決めたかと言いますと。本音で自分の考えをぶつけ合う作家の仲間が居ないからです。すぐ、お仲間展になり、互いの批評を行わなくなるからです。水彩連盟と言う会の会員でもありますが、この会の中で、相互批評が行われる事はほとんど無いのが、現実です。これは、本音で作品の批評が出来ない風土が日本の社会にあると言う事でもあります。
物言えば唇寒し、本音を封殺してゆく、遠慮社会が存在します。そのような事で、まともな文化が育つわけがありません。
つい仲間にさえ本音が言えなくなることが、作家としていいこととは思えなかったのです。これは作家にとどまる事ではなく人間としても同様です。
これを打破するためには、根底に人間的信頼を培っていく事だと考えています。仲間の生き方が信頼できるものであれば、本音で意見が言い合える。生き方から離れた、発言、つまり自分の制作から離れた意見を発言していても、信頼関係は構築できないと考えています。制作する仲間は深い信頼関係に従い、感じた事は全て述べ合う事が大切です。これだけが、互いの絵を高めてゆく手段になる。このように考えたのです。
以上の原則は入会希望者にも、全く同じです。この会は意欲があるものは、自由に、加わってもらいたいと考えています。しかし、その人の絵を充分に見て、その考え方を延べてもらい、その上で同人に加わってもらいます。その際、同人と同じ5段階評価をします。同人の相互批評と同じ事を、新規入会希望者にも行う事にしています。同人は資格とか、特権とかではなく。水彩人の作家としての立場に立つことを意味しています。