日本の経済力を超えた防衛費

防衛費をこの経済不況の中で、増額するという。財政再建の目途も立たない中で、到底大丈夫とは思えない。経済が破綻して、国が潰れてしまえば国防など何の意味も無いだろう。ロシアのウクライナ侵攻の危機に乗じて、この際できる限り国防費を増額しようと言う、いかにも浅はかな考えに過ぎない。
仮想敵国の倍ぐらいの軍事力、国力、が無ければ安心できないのが、武力による国の安全保障の前提である。ところが到底そんなことはできない日本の経済状態である。東日本大震災からの復興予算を、国防予算に回すという発想は論外のことだ。
復興税は臨時の緊急対策だから、国民も寄付をするような気持ちで受け入れたことだった。しかも、法人税は早々に復興特別税から外されている。こうやって、国民から搾り取るのが税金と言うことでは、消費は増加どころか減少して行き景気の悪循環になっている。さらにその上乗せと言うことだ。
まず経済の安定が、安全保障の第一である。日本の財政破綻の固まってしまった構造は、エネルギーでも、食料でも、経済封鎖されればひとたまりも無い状態になっている。戦争は出来ない経済になっている。戦争をしない前提で、日本の経済は出来ている。
もし戦時体制と言うことになれば、日本経済の海外依存度の高さから、軽い経済封鎖で日本の経済は崩壊することになる。食べるものがなければ、則無条件降伏しかない。日本はアメリカの真似は出来ない。すべての国と仲良くして、仮想敵国など作らないで行くのが国是である。
中国が台湾に武力侵攻を行えば、日本も巻き込まれる可能性がある。 自民党の議員の中には年内に軍事侵攻があると、発言している愚か者もいるくらいだ。年内になかった場合、狼議員と言うことで、辞職して貰いたい。責任の重い国会議員としての騒乱罪である。
日本が実効支配する尖閣諸島について、中国は領有権を主張している。石原慎太郎の発案で2012年に日本が尖閣諸島の国有化を行って以降、中国海警局の船が巡回したり、了解への侵入を繰り返している。それでも日本は話し合いを持とうとしない。何故なのだろうか。抗議だけしていても解決するはずもない問題だろう。
国際問題は平和的手段で解決すると、憲法に書かれている。平和的努力をどれだけしただろうか。まったくしていないと行っても良い状態だ。それどころか、尖閣を日本の軍事力増強の材料にしている。この愚かさが悲しい。さらに、敵基地攻撃ミサイルの準備に入るというのだ。これでは日本から近隣諸国に刃を向けていると言うことになる。
日本の防衛政策の大転換になる。残念ながら、国民から反対の声が盛り上がらない。ウクライナの悲惨な状況を見ていると、不安になるからだろう。しかし、敵基地攻撃ミサイルを持つことが、より危険度を増していると考えるべきだ。
敵基地攻撃能力を持ち、アメリカに自衛隊基地を提供すれば、ウクライナの状況に近づくと言うことになる。日本に攻撃能力がなければ、中国としては余計な戦況を広げるだけのことになるのだから、台湾有事の際に無視してくれる可能性が高い。
反撃能力の保有はこれまでの日本の安全保障体制を大きく転換させる。つまり明らかに憲法違反を犯すと言うことになる。憲法に触れずに、ここまで拡大解釈を続ける政治を果たして信頼できるだろうか。憲法は国の政治の在り方を規定しているものだ。それを好き勝手に解釈する姿にはうんざりする。
これまでの自衛隊は反撃能力を持たないがゆえに、防御に重きを置いてきた。ミサイル防衛網を整備し、イージス艦も保有している。こうしたことは、反撃能力を持たないが故に、特例として許されてきた。これを攻撃的な敵基地先制攻撃となると、すべてが変わることになるのだろう。
どのように変わるのかが問題であるにもかかわらず、具体的な方向や準備してゆく兵器も明確ではない。これでは小出しにしながら、核ミサイルまで進むというような解釈も可能なのではないだろうか。つまり小さい弱い方が、強い相手に対抗するためには、原爆の保持は不可欠と言う意見が次に出てくる。
いずれにしても防衛費の増額はどんな防衛費を増額させるのかが明確にならなければ、判断が出来ない議論である。大多数の国民が原爆の保持までは望んでいないだろう。石垣島に配備する敵基地攻撃ミサイルというのは一体どんなミサイルなのだろうか。
中国のどこまで届くミサイルなのだろうか。北朝鮮まで届くミサイルなのだろうか。本当にそのミサイル配備が、日本の安全を高めるだろうか。ウクライナは迎撃はしているが、ロシアにミサイルを撃ち込んではいない。NATOもロシアを直接攻撃する武力を提供していないのだ。ここはよほど慎重に判断が必要だ。
ウクライナはあくまで国内で戦うと言うことである。侵攻してきたロシア軍に対して攻撃をしている。ロシアが侵攻してきたのは、ウクライナの領土の一部をそもそもロシアの一部と主張しているからである。何故領土問題を話し合いで解決しようとしなかったのか。ここに戦争の原因がある。
話し合いを拒否して、NATO加盟を進めたことに対して、ロシアは軍事侵攻を選んだのだ。日本で考えれば、台湾有事が起きないようにするのがまず第一である。台湾と中国の話し合いを推進することだ。中国もまず平和的な交渉によって、台湾を併合すると主張している。併合の条件は何も定まっていない。
もしそれが出来ない場合は、軍事的な選択も排除しないと言うことだ。確かに台湾が中国になることは現状では悪い事になる。それは中国が民主主義国家で無いからである。年々その独裁的政治体制を習近平政権は強めているからだ。香港の二の舞いになると台湾は考えているだろう。
しかし、台湾にしても中国が民主主義国家になれば、統一することを否定するわけではないはずだ。台湾が中国を併合すると考えれば良いだけのことだ。中国が民主主義国家に動いて行くことを、手助けすることが日本の役割ではないだろうか。交流を広げて行くことだ。
日本に多くの中国人が観光に来る。中国の国民に民主主義の良さを知ってもらうことだ。中国は素晴らしい勢いで経済成長をしているので、独裁的な習近平政権を表面的には受け入れている。これが経済成長が鈍化すれば、状況は変わる。中国の経済成長も必ず止まる。その時に自由主義、民主主義の素晴らしさを中国人も考え始めるはずだ。
日本はそのお手本になるような国として、中国の国民と交流して行くことだ。中国人は信頼に足る人達だ。能力も高い。今高度成長期の中にいるために、問題はあるが、習近平政権で行こうと言うことだろう。もうしばらくすれば中国は立ち止まって考えるはずだ。
費用の足りない軍事力で対抗するようなことではなく、財政の潤う平和的な交流を続けて、日本の良さを知ってもらうことが一番の平和外交のはずだ。岸田氏は軍事力を高めることで、外交の力を高めると記者会見で述べたが、本当の外交は後ろ手に銃を隠したようなものではない。
日本自身が民主主義を大切にして、平和憲法を守る国である事を示すことが、日本の外交能力を高めることになる。武力など無くとも堂々と平和外交をすれば、十分なはずだ。一人でも多くの中国の人に日本に観光に来てもらおう。円安はチャンスだろう。そして中国人と仲良くしよう。