日本農業の困難な問題

   



 日本農業の三つの問題。
 1、高齢化(平均年齢が68歳)による農業者の減少
 2、耕作放棄地が増加し、農地面積が減少
 3、農家の経営が出来なくなっている

 政府はこの三つの深刻なはずの問題を問題であるという認識がない。ここが一番深刻なことなのだ。政府は食料を軽んじている。輸入すれば何とかなると、過去の幻想を未だに抱いている。もう食料はそれほど甘い国際情勢ではなくなっている。
 まず農業者の減少で一番深刻なのは40歳以下の農業者が減り続けていることだ。新規就農者は4~5万人くらい毎年居る。そのことだけ見れば、有望な産業に見えても良いくらいなのだ。ところが新規就農者が農業経営が出来て定着出来ることが、難しい農業の実態がある。

 新規就農するとすれば、2500万円くらいの資金がなければ無理だろうと言われている。どんな自営業でも開業資金が必要になる。農業の場合新規就農者には国から補助金が出る。49歳以下の新規就農者などが対象。農業を始めてから5年で経営が安定するのを見込み、最初の1~3年目は年150万円、4~5年目は120万円を交付する。これは以前のもので今は少し変わった。

 この交付金を目当てに新規就農したものの、5年後にどれだけの人が農業者として残るのかと言うことになった。補助金を5年間の生活費に充ててしまう。だから定着率が悪い。そこで制度を変えて、日本政策金融公庫が最大1000万円を無利子で融資するという制度。

 使い道は、就農してから3年以内に機械や施設を買うための資金とする。償還スケジュールは10年均等。この返済資金は10年営農をつづければ、国と地方が毎年肩代わりするのが制度の基本になった。しかし離農すれば、当然返済は当人が負うことになる。厳しい農業環境を考えれば、困窮する農家を増やしているだけになるだろう。(就農支援制度は変わっているので現状については正確ではないかも知れない。)

 他の産業と競べれば、桁違いに優遇されているのが、新規就農者である。それによって、新規就農者の数は4,5万人存在するのだろう。しかし、現実には農業者の減少は止まらない。平均年齢も増加しているのが現状である。農業に存在する根本的な問題があると考えるべきだろう。

 二番目の問題は、耕作放棄地の増加。農業者の総数が減るから耕作面積が減少するのは当然のように見えるが、この問題はかなり複雑な側面がある。一能か辺りの規模は増え続けている。止める人が多いので農地は集積されている。3,1㏊平均になっている。のぼたん農園が3,6㏊である。子供の頃1町歩1㏊農家は立派なものだったのだから、大きな変わり様だ。

 日本の農地の総面積は減り続けていて、令和4年耕地面積― 耕地面積は432万5,000haで、前年に比べ2万4,000ha減少 ―耕作放棄地も増加して行くが、あくまで農地に簡単に戻せる間が耕作放棄地である。数年を経過して、山林や雑種地に変わって行き、耕作放棄地でもなくなる。都市周辺では農地が公共事業用地や住宅にも変わっていく。石垣島ではゴルフリゾートになる。

 原因は地方の消滅が一番大きな要員だと思う。人が暮らせない状況になって農業だけがやり続けられるはずもない。中山間地や島嶼部では人の減少消滅が進んでいる。地方再生、創生が政府の大きな方針であるが、成果はまるで上がらない。その背景には少子化の問題が大きい。

 異次元の少子化対策が成功する可能性があるならば、話は違ってくるが残念ながら可能性はない。人が減って行く中で、東京一極集中である。政令都市ですら人口減少が進んでいる。当然、暮らしのインフラがそろいにくい地域は人が減少する。

 政府も地方全体を創成することを諦めて、地方の色分けを始めている。その結果中山間地や、農村地区の大半の場所がインフラ整備を断念することになっている。病院や学校の統廃合が進んでいる。止むえないことかも知れないが、都会的生活をしながら、農業経営をしたいと言う人には無理な状況が生まれているのだ。

 子供の教育とか、教育環境とか、副業の就職先とか、どんどん厳しい状況が生まれている。こうした中で、農地だけは維持すると言うことが出来ないだろう。地方が再生されるのかどうか。農地の維持はそこにかかっているはずだ。政府の本音には、農地の維持など無いはずだ。

 そして三番目が一番深刻な問題で、日本では農家経営が出来なくなっている。農地を大規模化して、企業農業にして、ロボット化して大型機械を入れて、AT農業化する。あらゆる現代農業を実現したとしても、農業経営が難しいと言うことになっている。
 
 小規模農家が経営できないと言うことでは無いのだ。大規模農家にしても農業経営が難しくなっている。資本主義では経営できないものは淘汰される。一時補助金で生き延びたところ、結局の所世界での競争に勝てない。農業は資本主義の枠から外さなければダメなものだ。

 その理由は農業の目的の最重要は食料生産である。食料は国の安全保障の最も重要なものなのだ。食料がないがしろにされている国では、安定した国家運営は出来ない。人心の安定は食糧が確保されて始まる。日本の不安定化の一番の原因は、国の本に農業が置かれていないからだ。

 農業は資本主義の競争から離れた別枠にしなければならない。日本の食糧を確保するためには国内の農業を守るための施策を採らなければならない。二つあると考えている。経営を中心に考えないでも良い小農を生かす道だ。農業以外に副収入をもちながら行う農業。

 一方で大規模農業である。大規模化出来る農地はできる限り集約して行く。そのためには私有権の制限も必要であろう。相続税の物納を農地で行うことを認め、一定有利なものにする。1000㏊規模の有機農家がどんどん現われるような状況を作り出すことだ。

 小さい農業が条件振り地域でも可能なようにしなければならない。機械の貸し出しなど行政の責任で確保する。機械の購入費の援助ではなく、貸し出しの整備を行うべきだ。農地についても、国が希望者に貸し出すようにすべきだ。農地を相続税に充てられるようにして、国の所有を増やす。農地の国有地化を行う。
 耕作放棄をしている農地には、所有していられないくらいの税をかける。まだまだ安すぎる。そして税金の代わりに物納で受け入れることもする。そうしてできる限り農地の国有化を進める。そして農地は貸し出す。営農可能な農地であれば、時代を国が取る。そうで無い農地は無償で貸し出す。
 小農を育てる。市民で農業をしたいという人には、国は農地を無償で貸し出す。農業外収入のある人に、農業をやってもらい。自給のための農業を推進する。一人100坪まではやりたい人には無償で国有農地を貸し出す。出来れば10人ぐらいで集まり、共同農場を運営する。
 もちろん機械は国の責任で貸し出す。製粉施設、乾燥脱穀施設、貯蔵施設なども国が準備をする。そうした農業インルラを整備して、国民の1割の人が自給農業を行う国を目指す。そうすれば耕作放棄地はなくなる。食糧の安定供給も自ずと整う。

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